透析用軟水装置と透析液水質基準と管理

透析用軟水装置と管理基準

透析用軟水装置の要点
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役割

硬度成分(Ca・Mg)を抑え、後段のRO膜・配管のスケール障害を防ぐ前処理。

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日常管理

透析施行日に軟水装置出口水の硬度を測定し記録、塩タンクの状態も確認。

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見落とし

硬度リークはスケールだけでなく、消毒・洗浄・水質測定の異常の「連鎖」を作り得る。

透析用軟水装置の原理と硬度成分

透析用軟水装置(軟水装置)は、原水中の硬度成分(主にCa2+、Mg2+などの二価陽イオン)を、陽イオン交換樹脂でNa+に置換して除去する前処理ユニットです。

この工程の目的は「飲用としての“軟水化”」よりも、後段の逆浸透(RO)装置の膜性能を長期に維持する点にあります。

硬度成分が残ったままROへ入ると、膜表面で析出してスケール化しやすく、透過水量低下や阻止性能低下の引き金になります(臨床側では“いつの間にか水が足りない”“伝導度が下がらない”として現れがちです)。

また、意外に誤解されやすいのが「軟水装置がある=化学汚染全般に強い」という認識です。軟水装置が狙って落とすのは主に硬度であり、総塩素や硝酸塩など別系統の管理が必要な項目は、活性炭装置やRO、日常の測定・監視で担保されます。

参考)https://www.ja-ces.or.jp/10topics/guideline_Ver107.pdf

つまり、透析用軟水装置は水処理の主役ではなく、“ROを守るための防波堤”として設計・管理するのが安全です。

透析用軟水装置の管理と記録

2016年版透析液水質基準の解説では、透析用水作製装置の各ユニット管理基準が示され、軟水装置は「硬度分のリーク」を日常的に確認する前処理として位置づけられています。

具体的には、透析施行日に軟水装置出口水の硬度を指示薬などで測定して記録し、軟水樹脂再生用の塩を定期補充し、塩タンク内に不溶解状態で塩が残っていること(=再生に必要な塩が枯渇していない)を確認します。

樹脂交換時期はメーカー推奨に従いつつ、目安として2年程度が示され、交換後は樹脂が正常に機能していることを確認する流れです。

現場での落とし穴は「硬度測定を“やったことにする”」運用です。指示薬の呈色は簡便ですが、色調判定の個人差、照明条件、試料採取の手順(採取前の十分な通水)で結果が揺れます。

記録は監査対応のためだけではなく、トレンド(最近色が薄い/濃い、再生頻度が上がった、塩の減りが早い)を拾うための安全装置です。

透析用軟水装置と水質基準

透析用水は、原水を濾過・イオン交換・吸着・逆浸透などで処理し、ISO 13959に準拠した化学的汚染基準(22項目)未満に管理する、という考え方が透析液清浄化ガイドラインにも示されています。

この22項目には、カルシウム2 mg/L、マグネシウム4 mg/Lなど硬度に関わる項目が含まれており、軟水装置は“基準に近づけるため”というより“後段のROが基準を安定して満たすための前提条件”として効いてきます。

一方で2016年版透析液水質基準では、ISO 13959の22項目の考え方を踏まえつつ、管理すべき化学汚染物質の枠組みや、原水・透析用水の測定と装置管理の重要性が整理されています。

あまり知られていない論点として、ROで阻止しにくい物質が存在することが明記され、例として硝酸・亜硝酸塩が挙げられています。

つまり、透析用軟水装置が真面目に働いていても、原水側の化学汚染が変動すれば(季節・条件・災害時など)、透析用水の安全性は別軸で揺らぎ得るため、施設として水質公表値の確認や必要な測定が欠かせません。

透析用軟水装置と残留塩素と活性炭装置

透析用水作製装置では、活性炭ろ過装置が遊離塩素・クロラミン(結合塩素)・有機物を除去し、RO膜の劣化防止にも重要とされます。

2016年版透析液水質基準の解説では、塩素濃度測定は総残留塩素(遊離塩素+クロラミン)で行うことが推奨され、総塩素0.1 mg/L未満を確認すること、測定頻度の考え方などが示されています。

クロラミンは溶血例との関連が報告されてきた経緯があり、災害時・緊急時には供給水源の塩素濃度が上がる可能性があるため、安定時から活性炭装置等の管理を徹底する必要がある、と整理されています。

ここで軟水装置の話に戻すと、前処理全体は「どれか1つが良ければ良い」ではありません。軟水装置が硬度を漏らす→スケールでRO性能が落ちる→電気伝導率や透過水量が不安定→消毒・洗浄の設計が崩れる、という連鎖が起こると、結果として“塩素は活性炭で見ているはず”“水質検査は年1回やっているはず”という運用でも、透析用水の安定供給が崩れます。

硬度リークは単発の故障ではなく、施設全体の水処理安全設計に波及する「前兆」と見なすと、点検の優先順位が変わります。

透析用軟水装置の独自視点:塩タンクとトラブル

透析液清浄化ガイドラインでは、塩タンク内で食塩の空洞が発生し、見た目には塩が“ある”のに、実際には濃厚食塩水が樹脂に供給されず再生不良になるトラブルに注意し、毎日点検することが明記されています。

この「空洞(ブリッジング)」は、装置アラームより先に“硬度指示薬の色が揺れる”“再生したのに硬度が落ちない”として表面化し、気づかないまま運転を続けるとリークが常態化します。

対策の要点は、塩の補充量そのものより、塩タンク内の状態(不溶解の塩が残っている、濃厚食塩水が作れている)をルーチンに組み込むことです。

さらに一歩踏み込むなら、「軟水装置の不調=軟水装置だけの問題」と切り離さず、同日にROの透過水伝導度や水量の傾向、活性炭出口の総塩素、そして透析液側の汚染管理(ET・生菌)の推移を同一シートで俯瞰すると、原因の切り分けが早くなります。

透析用水作製装置は多メーカー機器の組み合わせになりやすく、最終的なシステム管理は施設側に委ねられる、という指摘があるため、施設内で“見える化”する工夫が安全に直結します。

透析液清浄化ガイドライン(軟水装置・活性炭・RO・測定頻度の根拠)

https://www.ja-ces.or.jp/10topics/guideline_Ver107.pdf

2016年版透析液水質基準(化学的汚染基準・総塩素・装置管理基準の解説)

https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/33-1/33-1_113.pdf