透析用血液ポンプと血液回路
透析用血液ポンプのローラーポンプと血流量
透析用血液ポンプは、血液回路チューブをローラーで「しごく」ことで、設定した血流量を安定してダイアライザーへ送り出す中核部品です。
臨床の説明資料でも、透析ではシャント(バスキュラーアクセス)から血液を体外へ出し、その量をローラーポンプでコントロールすることが明確に示されています。
この「量を一定にする」性質は便利な反面、回路側の異常(脱血不良・狭窄・穿刺針先端の当たりなど)を、ポンプが“無理に引っ張って”表面化させることがあります。
現場での見え方を、あえて一言でまとめると次の通りです。
・血液ポンプは「流れを作る」より「流れを一定にする」装置で、回路の詰まり・陰圧の過大・気泡混入などの兆候を増幅しやすい。ogura-cl+1
・血流量の設定は治療効率に関わるため上げたくなるが、アクセス状態・回路状態の上限を超えると脱血不良を誘発しやすい。toseki+1
透析用血液ポンプの上流と下流と陰圧と陽圧
透析(特にCRRT解説資料など)では、血液ポンプの上流側は「引かれる」圧で陰圧、下流側は「押される」圧で陽圧になりやすい、という整理がされています。
この構造理解は、アラームの意味付けを速くし、原因切り分け(アクセス・回路・ダイアライザー・返血側)をブレにくくします。
同じ“流量低下”でも、上流側の陰圧が深くなるタイプ(脱血不良)と、下流側の陽圧が上がるタイプ(回路屈曲・ダイアライザー側の抵抗増)では、対処の優先順位が変わります。
実務のポイント(教育にも使いやすい観察軸)
・上流(陰圧側)の異常:動脈回路の気泡、ポンプ手前のうねり、ピローのへこみ等が手掛かりになり得る。
参考)脱血不良!?透析中のトラブル対処法と原因を知っておこう
・下流(陽圧側)の異常:返血側の屈曲・クランプ、ダイアライザー以降の抵抗増を疑いやすい(まず物理的閉塞の確認)。
参考)https://chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1799.pdf
透析用血液ポンプと脱血不良と気泡とピロー
透析中の脱血不良では、動脈回路や血液ポンプ周辺に気泡が発生したり、血液ポンプから透析器までの回路が「ヒクヒク」うねる所見がみられる、という現場目線の解説があります。
同じ解説内で、穿刺針先端が血管壁に当たる、血管の蛇行・瘤・狭窄などの条件で脱血不良が起こりやすいこと、対応として穿刺針位置の調整や再穿刺が挙げられています。
また、脱血不良の観察指標として「ピロー(膨らみ)」に言及され、膨らみが保たれていることが設定通りの脱血ができているサインになり得る一方、へこみは脱血不良の疑いになる、と整理されています。
脱血不良を“血液ポンプの故障”と誤認しないためのチェック(入れ子にせず列挙)
・穿刺部位と肢位:針先が壁当たりしていないか、腕の位置で陰圧が悪化していないか。
・回路観察:動脈回路の気泡、ポンプ近傍の振動・うねり、ピローの形状変化。
・設定:血流量設定がアクセス能力を超えていないか(再循環や脱血不良の引き金になり得る)。
透析用血液ポンプのポンプセグメントと標準化基準
透析用血液回路の標準化基準では、ポンプセグメント部の寸法を「外径12mm、内径8mm」を標準仕様とする、という記載があります。
同趣旨の報告書でも、市販装置との整合性(互換性)を踏まえて外径12mm・内径8mmとした理由が説明されています。
ここが揃うと、施設内で装置が複数メーカーにまたがる場合でも、教育・セット手順・流量再現性のばらつきを減らしやすくなり、結果としてヒューマンエラーの温床を減らす方向に働きます。
意外に見落とされがちな“標準化の臨床的な効き方”
・ポンプセグメント寸法がブレると、同じ回転数・同じ設定でも実流量やチューブのつぶれ方(ストレス)が変わり得るため、「設定どおりのつもり」がズレる余地が残ります。pmda+1
・標準化は購買・在庫の簡素化にも効き、取り違え(似た回路の誤使用)のリスクを下げる設計要素にもなります。ja-ces+1
この部分の一次情報(標準仕様の根拠が読める)
透析用血液回路の標準化基準(ポンプセグメント外径12mm・内径8mmなど)
https://ja-ces.or.jp/ja-ces/03publish/pdf/touseki_hyoujunka_kijun1.00.pdf
透析用血液ポンプのチューブ摩耗とスポレーション(独自視点)
透析現場の血液ポンプは基本的にディスポ回路を用いる前提が多い一方で、「蠕動(ローラー)方式=チューブが消耗部品」という原理は共通で、チューブの摩耗が性能低下(流量不正確・所定圧到達不可)や漏れリスクにつながる、という一般論があります。
さらに、摩耗したチューブはスポレーション(チューブ片の発生)や最悪の場合の送液媒体汚染につながる可能性がある、という指摘もあります。
透析用血液ポンプにそのまま当てはめるなら、「回路は使い捨てだから大丈夫」と思考停止せず、ポンプヘッド側の清拭・点検(チューブ片が残る環境要因の排除)まで含めて“回路交換で終わらない”視点を持つことが、インシデントの芽を減らす方向に働きます。
現場に落とす具体策(意味のある運用に限定)
・回路交換時:ポンプヘッド周辺に異物(チューブ片様の残渣)がないか、照明を当てて目視する習慣を作る。
参考)https://www.thomaspumps.com/ja/knowledge-hub/pumps-maintenance/peristaltic-pump-tubes/
・「流量が合わない」訴え:アクセスだけでなく、チューブの変形・滑り・装着不良も候補に入れ、再現性のある切り分け手順にする。
・教育資料:スポレーションという言葉を知らないスタッフが多い領域なので、「異物=フィルタだけの話ではない」とセットで伝えると理解が早い。
チューブ摩耗・スポレーションの概念整理(蠕動ポンプ一般だが、ローラー方式の盲点を掘れる)
https://www.thomaspumps.com/ja/knowledge-hub/pumps-maintenance/peristaltic-pump-tubes/