透析用フィルタとTMP
透析用フィルタのダイアライザと中空糸と積層型
透析用フィルタは臨床現場ではダイアライザ(透析器)を指すことが多く、血液を体外循環で透析器へ通し、拡散・濾過の原理で尿毒素や電解質バランス、水分を調整します。
構造は大きく中空糸(ホローファイバー)型と積層型があり、市場の多くは中空糸型で、筒内に固定された約1万本規模のストロー状中空糸の内側に血液、外側に透析液が流れる設計です。
この「血液と透析液の流路が膜で隔てられる」点が透析用フィルタの本質で、膜を挟んだ濃度勾配(拡散)と圧力勾配(濾過)が、除去できる溶質のサイズや除水の安定性を規定します。
透析用フィルタを語るとき、臨床工学的には「どの溶質を、どの程度、どの機序で抜くか」を装置条件とセットで考える必要があります。
例えば、同じ膜面積でも血液流量・透析液流量・除水量設定・抗凝固・透析液清浄度の条件が変われば、膜表面で起こるタンパク付着や境膜抵抗が変化し、結果としてTMPが動きます。
参考)https://www.ja-ces.or.jp/10topics/guideline_ver105.pdf
“フィルタを替える”という行為は、単に製品名を替えるのではなく、膜特性を治療設計に組み込む意思決定だと捉えると、選定ミス(過剰なアルブミン漏出、早期凝固、除水不安定)を減らせます。touseki-ikai+1
透析用フィルタのTMPと膜間圧力差とUFR
TMP(膜間圧力差)は、半透膜を介して生じる圧力差で、実務上は「血液側入口・出口圧の平均」と「透析液側圧の平均」の差などで表されます。
承認基準の技術基準ではTMPの定義が明記され、さらに透析器本体の表示として“最大TMP”の表示が求められています。
つまりTMPは単なるモニタ値ではなく、機器仕様と臨床運用が交差する安全パラメータであり、上限の概念(max)が規格として設計に織り込まれています。
ここで重要なのは、TMPが「除水(UF)を生み出す圧」そのものというより、回路・膜・血液の状態が作り出した“結果”の数値だという点です。
参考)TMPとアルブミン漏出量の関係について|透析に向き合う🏥臨床…
同じ除水速度でも、膜のファウリング(タンパク・脂質・血球成分の付着)や中空糸内の凝固傾向、透析液側の流路抵抗が増えると、必要圧としてTMPが上がります。
そしてTMPが高くなる状況は、膜の「分画のシャープさ」とは別軸で、アルブミン漏出や溶質除去の偏り(想定より対流成分が増える/減る)を招き得るため、値の変化“方向”と“速度”を読むことが大切です。
透析用フィルタの性能指標としては、UFR(限外濾過率、膜の透水性)やクリアランスがJIS T 3250で評価され、承認基準もこれを引用しています。
UFRが高いフィルタは、同じ除水目標をより低い圧で達成しやすい一方、運用条件次第では対流成分が増え、タンパク透過(アルブミン)と背中合わせになる局面があります。
“TMPが上がる=危険”と単純化せず、「なぜ上がったか」を回路側(静脈圧、動脈圧、アクセス、抗凝固)と膜側(素材、構造、目詰まり)で切り分けるのが、現場で再現性のある対応になります。
参考)https://touseki-ikai.or.jp/touseki/wp-content/uploads/2024/05/2019_11_kumamoto_35_1.pdf
透析用フィルタの膜素材とPSとPESとPMMAとCTA
透析用フィルタ(ダイアライザ)は膜素材の選択肢が多く、合成高分子系(PS、PES、PEPA、EVAL、PMMA、AN69など)とセルロース系(CTAなど)に大別されます。
メーカー解説では、PS膜・PES膜・PEPA膜・CTA膜はシャープな分画特性、EVAL膜・PMMA膜・AN69膜はブロードな分画特性として説明されることがあります。
この“シャープ/ブロード”は、同じβ2-MGや中分子の除去を狙う場合でも、アルブミン漏出の出方や、吸着で除去する成分がどれくらい寄与するか、という臨床像に差を出します。
膜構造の観点では、セルロース系が比較的均一な対称膜とみなされる一方、PS膜やPES膜などは非対称構造(支持層+緻密(活性)層の二重構造)を示すことが知られています。
非対称構造では、支持層が機械的強度を担い、表面付近の緻密層が透水性・溶質透過性などの物質移動を規定すると説明されています。iryou-kenkou-morichan+1
この“活性層が薄い”という設計思想は、除去効率の高さに寄与する一方、運用面では膜表面の状態(タンパク付着、凝固傾向)の影響がTMPのトレンドとして立ち上がりやすい、という見方もできます。iryou-kenkou-morichan+1
PMMA膜は吸着特性を特徴とする文脈で語られることが多く、吸着が「何をどれだけ取るか」を左右します。toray-medical+1
さらに、メーカー資料では、透析中の血液凝固の要因の一つとして“膜表面に吸着したタンパク質の構造変化を血小板が認識して付着・活性化する可能性”が示されており、膜素材の表面化学が抗血栓性と結びつくことが示唆されています。
意外と見落とされがちですが、透析用フィルタの選定は「除去性能」だけでなく「凝固しにくさ(結果としてTMPが上がりにくい運転のしやすさ)」にも影響するため、血液回路のトラブルが多い患者では“素材×抗凝固×血液条件”をセットで再評価すると改善することがあります。toray-medical+1
透析用フィルタの機能分類2013とI型とII型とS型
日本透析医学会の「血液浄化器(中空糸型)の機能分類2013」では、血液透析器は従来のI型・II型に加えてS型が新設され、各透析器はいずれかの型として使用される考え方が示されています。
また、診療報酬改定に反映された考え方の解説では、I型・II型の区分に加えて蛋白非透過/低透過型(a型)と蛋白透過型(b型)への細分類が説明され、S型は生体適合性、吸着、抗炎症性・抗酸化性など「特別な機能」をもつ血液浄化器を指すとされています。
つまり透析用フィルタ選定は、単に“高性能膜=良い”ではなく、「蛋白(アルブミン)をどこまで許容して中分子を狙うか」「吸着を臨床課題にどう当てるか」という設計思想の選択になります。
この分類をTMP運用に結び付けると、次のような実務的メリットがあります。
- 透析用フィルタの狙い(拡散中心か、対流・吸着を積極的に使うか)をチーム内で共有しやすい。
参考)https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/31-2/31-2_273.pdf
- a型/b型の考え方を持つことで、TMP上昇時に“アルブミン漏出の増加リスク”も同時に意識できる。touseki-ikai+1
- S型の「特別な機能」を、炎症傾向や掻痒、栄養状態など“患者課題”に紐づけて検討しやすい。
一方で注意点もあります。分類は便利なラベルですが、最終的な治療像は装置条件(血液流量、除水設定)と透析液清浄度、アクセス条件で変わります。ja-ces+1
たとえば透析液清浄化ガイドラインでは、採取部位の推奨や、薬液タンク洗浄・次亜塩素酸残留チェックなど、運用管理の具体が提示されています。
透析用フィルタの性能を引き出すには、膜だけを議論するのではなく、清浄化・洗浄消毒・モニタリング(TMP含む)を同じテーブルに載せるのが近道です。
透析用フィルタの独自視点:TMPとアルブミン漏出と「トレンド監査」
TMPが高いほど水移動が起こりやすい一方で、TMP上昇が膜構造に影響し、通常は透過しないアルブミンが漏れやすくなる可能性がある、という解説があります。
また、高透水性膜(high-flux膜)やHDFのように対流成分を積極的に使う治療では、TMP管理が特に重要になり得る、という整理もされています。
この2点を踏まえると、透析用フィルタ管理の“盲点”は、単発のTMP値よりも「立ち上がり方(トレンド)」を監査する仕組みが弱いことです。
独自視点として提案したいのが、透析記録の中に「TMPトレンド監査」という軽いチェック項目を置くことです。
- 透析開始〜30分のTMP上昇が急なら、回路・アクセス(脱血不良、返血側抵抗)や抗凝固の不足、初期ファウリングを疑う。touseki-ikai+1
- 中盤以降にジワジワ上がるなら、膜表面へのタンパク付着やヘマトクリット上昇、除水設計(UFの攻めすぎ)を疑う。
- 値そのものより「同じ患者・同じ条件での再現性」を重視すると、フィルタ変更の効果判定がしやすい。
ここでのポイントは、監査の目的を「犯人探し」ではなく「治療設計の再現性を上げる」ことに置くことです。
透析用フィルタを替えても、透析液清浄度が揺れていたり、洗浄消毒の運用が乱れていると、膜表面の状態が日々変わり、TMPも安定しません。
逆に、清浄化と運転条件が揃っている施設では、TMPトレンドが“膜素材の差”をかなり正直に反映するため、I型/II型/S型やa型/b型の議論が、机上ではなく臨床の言葉になります。ja-ces+1
参考:TMPの定義・最大TMP表示など承認基準(制度・安全の根拠)
厚生労働省:血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準(TMP定義、最大TMPの表示、JIS T 3250引用)
参考:透析液清浄化の採取・洗浄消毒の実務(透析用フィルタ性能を支える運用)
日本臨床工学技士会:透析液清浄化ガイドライン(採取部位の推奨、洗浄消毒、残留塩素チェック等)
参考:機能分類2013の一次情報(I型/II型/S型の整理)
日本透析医学会:血液浄化器(中空糸型)の機能分類2013(I型/II型/S型)

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