透析用導電率計と透析液と濃度と温度補償

透析用導電率計と透析液

透析用導電率計:現場で押さえる要点
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導電率=濃度の「代理指標」

透析液の電解質バランスを直接測りきれない場面で、導電率が濃度監視の軸になります。

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温度補償の理解が精度を左右

導電率は温度で変化するため、補償条件(例:25℃換算)がズレると誤判定が起こり得ます。

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校正・汚れ・気泡が「静かな原因」

アラームに出にくい要因(電極汚れ、気泡、セル定数ズレ)を定期点検で潰すのが安全管理の近道です。

透析用導電率計の原理と電気伝導率セル

透析用導電率計の理解は、まず「導電率=溶液が電気を通しやすい度合い」であり、溶液の電気抵抗の逆数として扱われる点から始まります。

測定は、被検液中に電気伝導率セル(通電用電極を持つセル)を浸して電流を流し、抵抗から導電率へ換算するという構造で、直流では分極が起きて真の抵抗が測れなくなるため交流で測定されます。

また、セルには「セル定数」があり、理論計算だけでは電極面積や距離のばらつきが避けられないため、導電率が既知の標準液を測ってセル定数を決める(=実測で合わせ込む)考え方が基本です。

臨床現場の感覚では「機械が勝手に導電率を出してくれる」になりがちですが、実際は“センサ+セル定数+温度補償+流体条件”がセットで初めて意味のある値になります。

参考)https://www.jaima.or.jp/resource/jp/basic/pdf/basic_25.pdf

ここが曖昧だと、同じ透析液を測っているのに「装置の表示は正常、外部導電率計は微妙にズレる」など、原因が追いにくいズレが起こりやすくなります。

透析用導電率計と温度補償と25℃

透析液を含む水溶液の導電率は温度の影響を強く受け、水温が上がると導電率値は大きくなるため、一定温度で測るのが理想とされています。

しかし実際の運用では温度一定が難しいため、導電率を25℃での値に換算する「温度補償(25℃換算)」が用いられ、温度係数を使った換算式で導電率を補正します。

この温度係数はイオン成分や濃度で異なるので、本来は試料に合わせた係数が望ましい一方、簡易的に塩化カリウム希薄溶液の2.0%/℃を使う運用が多い、という現実もあります。

透析の安全管理で意外に盲点になるのは、「装置側の導電率表示」と「外部導電率計」の温度補償条件が一致していないケースです。

たとえば双方が“温度補償あり”でも、基準温度(25℃換算か、実測温度表示か)や係数の前提が違うと、現場では「どちらが正しいのか分からないズレ」に見えます。

導電率値そのものだけでなく、(1) 温度表示、(2) 補償の有無、(3) 25℃換算の設定、(4) 校正温度の条件、を一緒に記録するだけで、トラブルシュートの速度が上がります。

透析用導電率計と透析液濃度と±3%

透析装置の技術基準では、透析液の組成確認として「透析液濃度を設定し、濃度が安定後に供給透析液濃度を測定する」試験が示され、その例として「温度補償法(25℃)により導電率を測定する方法」が明記されています。

そして判定基準として、透析液濃度の精度は±3%以内であることが求められています。

この記載は、導電率が「透析液濃度(=混合・希釈の結果が適正か)」を評価する代理指標として、制度的にも位置付けられていることを意味します。

現場で重要なのは、導電率が“ナトリウムだけ”を見ているわけではなく、溶液中のイオンの総和的な性質を反映するため、同じ導電率でもイオン組成の組み合わせが完全に同一とは限らない点です。

つまり導電率は強力な監視指標ですが、「導電率が合っている=すべての成分が正しい」と短絡しないことが安全側の考え方になります。

透析液原液(A液/B液)や希釈水の条件が変わったときは、導電率値の合否だけでなく、変化の方向(高い/低い)と発生タイミング(立ち上がり/安定後/消毒後)をセットで見て、原因を切り分けるのが実務的です。

参考)https://patents.google.com/patent/WO2011052348A1/ja

透析用導電率計の校正とセル定数と標準液

電気伝導率セルを交換したときは、セル定数を変更する必要があるとされ、セル定数は導電率が既知の標準液(例:塩化カリウム溶液)を測定して決める、というのが基礎です。

この「セル定数」という考え方は、透析室の点検で“センサを交換したのに値が微妙に違う”問題を説明できる、かなり実用的なキーワードです。

また、導電率の測定方式には交流2電極方式・交流4電極方式・電磁誘導方式があり、4電極は分極や汚れに強い、電磁誘導は汚れや分極の影響が少ないが低導電率や少量測定に不向き、といった特徴差があります。

ここで現場の“意外な落とし穴”は、校正作業そのものよりも、校正後の運用条件(温度、気泡、流量、洗浄後の濡れ性)で再現性が崩れることです。

たとえば浸漬型セルには気泡の影響を受けにくい構造(気泡抜きの工夫)がある一方、状態によっては気泡が残って読みが不安定になるため、「測定値が揺れる=濃度が揺れている」と決めつけない観察が必要です。

さらに連続測定では流通型セルが使われることがあり、流体条件が変わると(特に気泡や流れの乱れがあると)読みの安定性に影響する、という理解も役立ちます。

校正・点検の記録は、数値だけでなく、次のように“条件”を短く残すと監査・引き継ぎで強くなります。

  • 使用した標準液(種類、ロット、温度)
  • セル/センサ交換の有無、交換部品の識別情報
  • 温度補償の設定(25℃換算の有無)
  • 測定時の状態(気泡の有無、流量、洗浄直後か)

参考:人工腎臓装置の技術基準(透析液組成・温度補償・精度±3%の根拠)

厚生労働省PDF(人工腎臓装置承認基準の技術基準:透析液濃度を導電率(温度補償法25℃)で測る例、精度±3%)