東北メディカル・メガバンクの研究と健康調査の最新動向

東北メディカル・メガバンクについて

東北メディカル・メガバンクの概要
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ゲノム研究

日本人全ゲノム解析と参照パネル構築

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コホート調査

15万人規模の長期健康調査

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バイオバンク

生体試料と健康情報の統合管理

東北メディカル・メガバンクの研究プロジェクト概要

東北メディカル・メガバンク計画(TMM計画)は、東日本大震災後の復興支援と、次世代型医療の創出を目指して2012年に開始された大規模プロジェクトです。東北大学と岩手医科大学が中心となり、宮城県と岩手県の住民を対象に、健康調査やゲノム解析、バイオバンクの構築を進めています。

このプロジェクトの特徴は、以下の3点に集約されます:

• 大規模コホート調査:15万人規模の地域住民と三世代家族を対象とした長期的な健康調査
• 全ゲノム解析:日本人の遺伝的特徴を明らかにする大規模ゲノム解析
• バイオバンク構築:生体試料と健康情報を統合した複合バイオバンクの運営

これらの取り組みにより、個別化予防・医療の実現や、新たな診断・治療法の開発を目指しています。

東北メディカル・メガバンク計画の全体像や目的について詳しく知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。
東北メディカル・メガバンク計画について Our project

東北メディカル・メガバンクのゲノム解析と日本人基準ゲノム

TMM計画の重要な取り組みの一つが、日本人の全ゲノム解析です。2021年11月時点で、20万人分の全ゲノム解析が完了しており、これは世界最大規模の一般住民ゲノムコホートの一つとなっています。

この解析結果を基に、「日本人全ゲノムリファレンスパネル」が構築されました。このパネルは、日本人特有の遺伝的特徴を反映しており、疾患関連遺伝子の同定や、個人の疾患リスク予測などに活用されています。

特筆すべき点として、2021年12月には14KJPNと呼ばれる拡張版リファレンスパネルが公開されました。これには構造多型データベースも含まれており、より詳細な遺伝的変異の解析が可能になっています。

ゲノム解析の詳細や、リファレンスパネルの活用方法については、以下のリンクで詳しく解説されています。
ゲノム・オミックス解析 – 東北メディカル・メガバンク機構

東北メディカル・メガバンクのコホート調査と健康情報

TMM計画では、「地域住民コホート調査」と「三世代コホート調査」という2つの大規模な健康調査を実施しています。これらの調査では、参加者の健康状態や生活習慣、環境要因などの情報を長期的に収集しています。

地域住民コホート調査では、宮城県の12万人以上の一般住民を対象に調査を行っています。一方、三世代コホート調査は、妊婦とその家族(子ども、両親、祖父母)を対象とし、世代を超えた健康情報の収集を行っています。

これらの調査の特徴として、以下の点が挙げられます:

• 詳細な健康診断データの収集
• 生活習慣や環境要因に関する質問票調査
• 定期的な追跡調査による経時的なデータ収集
• 医療機関の診療情報との連携

さらに、東日本大震災の影響を調査する観点から、被災状況と健康状態の関連性も分析されています。例えば、家屋被害の大きかった人々で、心理的苦痛や平均歩数、骨密度への長期的な影響が確認されています。

コホート調査の詳細や、これまでの調査結果については、以下のリンクで確認できます。
東北メディカル・メガバンク機構 長期健康調査(地域住民コホート調査・三世代コホート調査)

東北メディカル・メガバンクのバイオバンク構築と活用

TMM計画の重要な柱の一つが、バイオバンクの構築です。このバイオバンクは、コホート調査参加者から提供された生体試料(血液、尿、DNAなど)と、詳細な健康情報を統合して管理しています。

バイオバンクの特徴として、以下の点が挙げられます:

• 健常者(一般住民)を主な対象としていること
• 生体試料と医療情報、ゲノム配列情報等を統合していること
• 15万人規模の大規模なバイオバンクであること

このバイオバンクは、研究者や医療機関に試料・情報を提供することで、様々な医学研究や創薬研究を支援しています。例えば、特定の疾患に関連する遺伝子の探索や、新たなバイオマーカーの発見などに活用されています。

興味深い取り組みとして、2020年8月には三世代コホート調査の試料・情報分譲が開始されました。これは世界最大規模の家系付きコホートデータとして、遺伝と環境の相互作用を研究する上で貴重なリソースとなっています。

バイオバンクの詳細や、試料・情報の分譲方法については、以下のリンクで確認できます。
ゲノム・オミックス解析 – 東北メディカル・メガバンク機構

東北メディカル・メガバンクの遺伝情報回付システム

TMM計画の特筆すべき取り組みの一つが、参加者への遺伝情報回付システムです。これは、コホート調査で得られた個人の遺伝情報を、希望する参加者に対して適切に伝える仕組みです。

遺伝情報回付の特徴として、以下の点が挙げられます:

• 疾患発症リスクなど、健康に重要な遺伝情報を対象としていること
• 予防や治療などの有効な対策がある情報に限定していること
• 専門家による慎重な検討を経て実施されていること
• 参加者の自由意思を尊重し、希望者のみに実施していること

2023年現在、5万人を対象とした遺伝情報回付が実施されており、これは日本最大規模の取り組みとなっています。

この取り組みは、個人の遺伝情報を活用した予防医療や個別化医療の実現に向けた重要なステップとなっています。同時に、遺伝情報の取り扱いに関する倫理的・社会的課題にも先駆的に取り組んでいます。

遺伝情報回付システムの詳細や、実施状況については、以下のリンクで確認できます。
コホート調査における遺伝情報回付 – 東北メディカル・メガバンク機構

東北メディカル・メガバンク計画は、日本の医学研究と医療の未来を切り開く重要なプロジェクトです。大規模なゲノム解析、長期的な健康調査、統合的なバイオバンク構築、そして先進的な遺伝情報回付システムの実施など、多角的なアプローチで次世代型医療の実現に向けて着実に歩みを進めています。

今後も、このプロジェクトから得られる知見や成果が、日本の医療システムの発展や、個々人の健康増進に大きく貢献することが期待されています。