トリグリセリドとコレステロールの違い

トリグリセリドとコレステロールの違い

血液中脂質の基本情報
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化学構造の違い

トリグリセリドは脂肪酸とグリセロールから構成、コレステロールはステロイド骨格を持つ脂質

生理機能の違い

トリグリセリドはエネルギー貯蔵、コレステロールは細胞膜とホルモンの材料

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代謝経路の違い

異なる合成・代謝経路を通り、血中でのリポ蛋白としての運搬形態も相違

トリグリセリドの基本構造と機能

トリグリセリド(中性脂肪)は、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した単純脂質です 。トリアシルグリセロール(TAG)とも呼ばれ、体内における主要なエネルギー貯蔵物質として機能しています 。
参考)[5] トリグリセリド[triglyceride]
トリグリセリドは肝臓をはじめとするほとんどの組織で合成されます 。合成経路では、グリセロール3-リン酸に2分子のアシルCoA(脂肪酸の活性型)が結合し、生成したホスファチジン酸から1,2-ジアシルグリセロールができ、さらにもう1分子のアシルCoAが入ってトリグリセリドとなります。

コレステロールの基本構造と機能

コレステロールは、ステロイド骨格を持つ脂質で、細胞膜を構成する重要な成分です 。人体に欠かせない物質として、細胞膜や脳と神経の細胞に必須の成分であるほか、脂肪と脂溶性ビタミンの吸収を助ける胆汁にも不可欠です 。
体内のコレステロールの約70~80%は肝臓などで糖や脂肪を使って作られ、残りの20~30%のみが食事から摂取されています 。コレステロールには、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と善玉コレステロール(HDLコレステロール)の2種類があります。
参考)中性脂肪とコレステロールの違いとは?基準値も知って対策しよう…

  • 細胞膜の構成: 細胞膜の構造維持と機能発現に必要な成分として作用します
  • ホルモン合成の原料: エストロゲンテストステロン、コルチゾールなどの様々なホルモンやビタミンDの材料となります
  • 胆汁酸の材料: 肝臓で作られる胆汁の成分として、脂肪の消化・吸収を助けます

トリグリセリドとコレステロールのリポ蛋白による輸送

トリグリセリドとコレステロールは、そのままでは水(血液)に溶けないため、リポ蛋白という水に溶ける物質に包まれて血液中を移動します 。リポ蛋白は比重によって分類され、それぞれ異なる脂質組成と機能を持ちます。
カイロミクロン(CM):構成成分の80~90%がトリグリセリドで、食事からの脂質を小腸から筋肉や脂肪組織に運搬します 。リンパ管・胸管から大循環に入り、リポ蛋白リパーゼ(LPL)によりトリグリセリドが加水分解された後、カイロミクロンレムナントとして肝臓に取り込まれます。
VLDL(超低比重リポ蛋白):トリグリセリドが約55%、コレステロールが20%の割合を占める粒子で、肝臓で合成されます 。肝臓から末梢組織にトリグリセリドとコレステロールを輸送する役割を担っています。
LDL(低比重リポ蛋白):リポ蛋白の中で最もコレステロールを多く含み、構成成分の約60%がコレステロールです 。肝臓で作られたコレステロールを全身の組織に運ぶ働きがあります。
HDL(高比重リポ蛋白):蛋白質が約40~55%を占め、コレステロールが35%、中性脂肪が15%程度含まれています 。余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す役割を果たしています。
参考)LDL、HDLの意味

トリグリセリドとコレステロールの動脈硬化への影響

トリグリセリドとコレステロールの動脈硬化への影響には、それぞれ異なるメカニズムと相互作用があります 。コレステロールの方が動脈硬化疾患により直接的な影響を与えるため、両方が高い場合はコレステロールを優先して管理する方針が取られています 。
参考)脂質異常症、脂肪肝
LDLコレステロールによる動脈硬化:LDLコレステロールが必要以上に増えると血管壁に入り込み、酸化されて免疫細胞のマクロファージが酸化LDLを取り込みます 。酸化LDLを取り込んだマクロファージはプラークを形成し、血栓となって動脈硬化を進行させます。
参考)動脈硬化に関わるコレステロールについて(悪玉コレステロール・…
HDLコレステロールの保護作用:HDLコレステロールは血管内の余分なコレステロールを回収し、動脈硬化を抑制する働きがあります 。血液中のHDLが多いほど動脈硬化の危険性が低くなるため、善玉と呼ばれています 。
参考)脂質異常を改善する生活術|けんぽだよりWeb
中性脂肪の間接的影響:血液中の中性脂肪が増えると、善玉コレステロール(HDL)が減少し、悪玉コレステロール(LDL)を増加させることになります 。また、中性脂肪が高い状態では、血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなり、動脈硬化が進行しやすくなります 。
参考)https://www.shinnihonseiyaku.co.jp/s/column/healthcare/2412-lower-neutral-fat/
動脈硬化指数(LH比):LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値で算出される指標で、LDLコレステロール値が正常でもHDLコレステロール値が低いと動脈硬化性疾患のリスクが高まります 。
参考)動脈硬化指数(LH比) href=”https://research.kobayashi.co.jp/glossary/arteriosclerosis.html” target=”_blank” rel=”noopener”>https://research.kobayashi.co.jp/glossary/arteriosclerosis.htmlamp;#8211; 小林製薬 中央研究所

トリグリセリドとコレステロールの基準値と健康リスク

トリグリセリドとコレステロールの基準値と健康リスクについては、2022年版の動脈硬化性疾患予防ガイドラインで新たな基準が設定されています 。特に中性脂肪については、空腹時150mg/dL以上、随時175mg/dL以上を高トリグリセライド血症として定義されています。
参考)動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版

中性脂肪の基準値と健康リスク

コレステロールの基準値と管理目標

  • LDLコレステロール: 一次予防では120~180mg/dL未満(リスクに応じて設定)、二次予防では100mg/dL未満
  • HDLコレステロール: 40mg/dL以上(男性)、50mg/dL以上(女性)
  • 総コレステロール: 220mg/dL未満

疾患リスクの評価:中性脂肪値が基準値より高い場合、「脂質異常症」「糖尿病」「ネフローゼ症候群」「膵炎」「甲状腺機能低下症」などの疾患の可能性も考慮する必要があります 。また、痩せているのに中性脂肪値が高い場合は、食事から摂取した脂肪が血液中に留まりやすい体質である可能性があります。