トリグリセライドを下げるには
トリグリセライドの正常値と診断基準
トリグリセライド(中性脂肪)の正常な基準値は空腹時30〜149mg/dLです 。150mg/dL以上(非空腹時175mg/dL以上)では「高トリグリセライド血症」と診断され、動脈硬化のリスクが高まります 。
検査時の注意点として、前日夜から翌朝まで食事を控え、空腹状態で測定することが重要です 。食事により中性脂肪値は大幅に変動するため、正確な診断には絶食条件が必要となります 。
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トリグリセライドが高値を示すと、脂質異常症、脂肪肝、動脈硬化症、甲状腺機能低下症などの疾患が疑われます 。一方、極端に低値の場合は低栄養や甲状腺機能亢進症の可能性があります 。
トリグリセライド値を下げる効果的な食事療法
トリグリセライド値改善において最も重要なのは糖質制限です 。肝臓では余分な糖質からトリグリセライドが合成されるため、炭水化物の摂取量を適正にすることが効果的です 。
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具体的には、ご飯・パン・麺類などの主食に加え、果物類や菓子類の糖質を意識的に減らすことが推奨されます 。特に糖質中心の食生活を送っている方は注意が必要です 。
適正エネルギー摂取も重要で、目標体重×エネルギー係数(25〜35kcal/kg)で計算できます 。例えば身長160cmの場合、目標体重56kg×30〜35=1680〜1960kcalが目安となります 。
節酒・禁酒はトリグリセライド改善に極めて有効です 。アルコールに含まれる糖質が中性脂肪増加の原因となるため、可能な限り制限することが推奨されます 。
参考)https://gokou-hp.com/wp-content/themes/webrec/assets/images/department/nutrition/dyslipidemia.pdf
トリグリセライド改善における有酸素運動の効果
トリグリセライド値を下げるには有酸素運動が最も効果的です 。「息が弾むが会話はできる程度」の中強度運動を週150分以上継続することで、中性脂肪が平均13〜15mg/dL低下することが報告されています 。
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推奨される有酸素運動には以下があります :
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- ウォーキング(早歩き)
- ジョギング
- 自転車
- 踏み台昇降
- 水泳
運動初心者は1日5分から開始し、徐々に20〜30分まで延長することが現実的です 。毎日継続することで基礎代謝向上と脂肪燃焼効果が期待できます 。
統計データでは、1日の目標歩数を達成していない人は、達成している人と比較して中性脂肪異常値の割合が1.59倍高いことが判明しています 。日常的に歩数を増やし、座位時間を減らすことも効果的です 。
トリグリセライド値改善に有効な魚類とEPA・DHA
青魚に豊富に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、トリグリセライド値低下に極めて有効です 。特にEPAは中性脂肪値を下げる効果がDHAより高いことが知られています 。
EPAの作用機序は以下の通りです :
- 脂質の脂肪産生を抑制
- 脂肪酸の分解を促進
- 血管内の中性脂肪分解効果を高める
トリグリセライド低下に効果的な魚類。
- サバ、イワシ、サンマなどの青魚
- マグロ(特に脂ののった部位)
- ブリなどの脂肪含有量の多い魚
オキアミ油由来のオメガ3製剤は、重度高トリグリセライド血症患者において26.0%の数値低下を示し、高い安全性と忍容性を持つことが臨床試験で確認されています 。
トリグリセライドが高い場合の薬物療法選択肢
食事療法と運動療法で改善が見られない場合、以下の薬物療法が検討されます 。
参考)脂質異常症の治療薬とは?種類・効果・副作用を解説 – 医療法…
フィブラート系製剤は高トリグリセライド血症の第一選択薬です 。体内の脂質代謝を活性化し、中性脂肪の合成を阻害する作用があります 。しかし、糖尿病薬やワーファリンとの併用時は注意が必要です 。
ペマフィブラート(パルモディア®)は世界初の選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)として、従来のフィブラート系薬より副作用が少なく、優れた安全性を示します 。食後高脂血症の改善や炎症マーカーの低下などの付加効果も認められています 。
参考)MMWIN みんなのみやぎネット/最新臨床情報TOPICS
ニコチン酸誘導体製剤は中性脂肪の合成を抑制し、HDLコレステロール値の増加も期待できます 。ビタミンB1の一種で副作用が出にくく、初期の顔のほてりは1〜2週間で改善します 。
EPA製剤(イコサペント酸エチル)は魚油成分と同様の多価不飽和脂肪酸を含み、中性脂肪を効果的に低下させます 。ただし、抗凝固薬との併用時は出血リスクに注意が必要です 。
トリグリセライド値改善における食物繊維の意外な効果
食物繊維の摂取は、トリグリセライド値改善において見逃されがちな重要な要素です 。食物繊維と同時に糖分や脂質を摂取すると、これらの吸収が阻害され、中性脂肪の上昇が抑制されます 。
日本人の食物繊維摂取量は推奨量を大幅に下回っているため、意識的な摂取が必要です 。野菜、海藻、きのこ類を積極的に食事に取り入れることで、糖質や脂質の吸収を穏やかにし、食後の中性脂肪上昇を防ぐことができます 。
特に食事の最初に野菜を摂取する「ベジファースト」は、血糖値とトリグリセライド値の急激な上昇を防ぐ効果があります。この食事順序の工夫により、同じ食事内容でも代謝への影響を大幅に改善できる可能性があります。
現代の食生活では加工食品の摂取が増え、天然の食物繊維摂取が減少している傾向にあります。海藻類、根菜類、豆類などの伝統的な食材を見直し、日常的に摂取することがトリグリセライド管理において重要な戦略となります。