トポイソメラーゼ阻害薬の一覧と基礎知識
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トポイソメラーゼ阻害薬の一覧と代表的な薬剤
トポイソメラーゼ阻害薬(英: Topoisomerase Inhibitors)は、DNA複製や転写を担う酵素〈トポイソメラーゼ〉の活性を阻害することで、がん細胞や細菌の増殖を抑制する薬剤群です。代表的なものとしては、イリノテカン、トポテカン(トポイソメラーゼⅠ阻害薬)、ドキソルビシン、エトポシド(トポイソメラーゼⅡ阻害薬)などがあげられます。
代表的なトポイソメラーゼ阻害薬一覧。
- イリノテカン(カンプト)
- トポテカン(ハイカムチン・トポテシン)
- ドキソルビシン(アドリアシン・ドキシル)
- ダウノルビシン(ダウノマイシン)
- エトポシド(ベプシド・ラステット)
- テラルビシン、エピルビシン、イダマイシン等多数
各薬剤の薬価や国内流通品一覧は
KEGG 医薬品情報
に詳しくまとまっています。
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トポイソメラーゼ阻害薬の分類と作用機序
トポイソメラーゼ阻害薬はⅠ型(トップ1)とⅡ型(トップ2)に分類されます。
Ⅰ型阻害薬はDNA一本鎖切断を阻害し、イリノテカンやトポテカンが該当します。
Ⅱ型阻害薬はDNA二本鎖切断を阻害し、ドキソルビシン、エトポシド、ダウノルビシンが代表。
分子レベルでは、DNA複製や転写時の超らせん解消、カテナン・DNA絡まりの解消、細胞周期進行時に不可欠な役割を果たします。阻害によりがん細胞や細菌の生存に致命的なダメージを与えます。細菌向けにはフルオロキノロン、ヒト・がん治療ではアントラサイクリン系やカンプトテシン誘導体が主流です。
詳細。
Wikipedia「トポイソメラーゼ阻害薬」
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トポイソメラーゼ阻害薬の用途・疾患別適応
- 固形がん:小細胞肺がん、大腸がん、卵巣がん、膵がんなど
- 血液腫瘍:急性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など
- 一部抗菌薬(主にフルオロキノロン系)
日本ではイリノテカンやトポテカンは“化学療法レジメン”で広く用いられ、ドキソルビシンなどアントラサイクリンも白血病治療の中心です。疾患ごとに使い分けが明確にされていますが、耐性や副作用管理が課題となっています。
がん治療ガイドラインの詳細は
日本がん治療学会ガイドライン。
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トポイソメラーゼ阻害薬の副作用・注意点
主な副作用としては
- 骨髄抑制(重篤な白血球減少・貧血・血小板減少)
- 消化器症状(悪心、嘔吐、下痢、特にイリノテカンで難治性下痢)
- 脱毛、倦怠感、発熱性好中球減少症
- 一部薬剤(アントラサイクリン系)は心毒性
副作用対策としては、休薬・減量、対症療法を駆使します。イリノテカンは特に下痢が深刻で、投与管理には経験と専門知識が必須です。
イリノテカンの副作用管理例等は
Kyorin論文
で詳述されています。
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トポイソメラーゼ阻害薬の未来:抗体薬物複合体や新規分子
最近では、抗体薬物複合体(ADC)への応用や、副作用軽減・耐性克服を目指した“非インターカレーター型”新規分子の開発(例:テトラヒドロキナゾリン誘導体やオキサビシクロオクタン類)も進展。これらはがん細胞のみを狙う選択的作用や低毒性、現行薬剤とは異なる作用点を持ちます。
サルコーマ治療やがんの最新治療法の候補として大きく注目されています。
新規作用薬、ADC、バイオ新薬の最新研究情報は
PubMed論文
参照。