特定薬剤管理指導加算3とメーカー変更の何回まで

特定薬剤管理指導加算3 メーカー変更 何回まで

この記事でわかること
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「何回まで?」の結論と考え方

特定薬剤管理指導加算3(ロ)の「最初に処方された1回」の意味を、メーカー変更(銘柄変更)に当てはめて整理します。

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算定可・不可の境界例

交互変更、同一銘柄への“戻し”、供給不安の程度、疑義照会の扱いなど、レセプトで揉めやすい場面を具体化します。

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薬歴・摘要欄の実務

説明内容の要点、摘要欄に何を書くか(確保できなかった薬剤名等)を、監査目線で抜け漏れなくまとめます。

特定薬剤管理指導加算3のメーカー変更と何回までの結論

 

特定薬剤管理指導加算3(ロ)は、「患者1人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定」とされ、医薬品の選択に係る説明(選定療養)や、供給不安定に伴う銘柄変更時の説明を評価する枠組みです。

一方で、現場が悩む「メーカー変更は何回まで?」は、単純に“月に1回まで”や“同一成分で1回だけ”といった機械的上限では整理しにくく、ポイントは「その患者にとって、その銘柄(あるいは当該医薬品としての扱い)を“最初に処方された”といえるか」と「薬剤師が重点的な説明・指導を要すると判断できるか」です。

厚労省資料上、特定薬剤管理指導加算3(ロ)に該当する例として「供給が安定していないため、前回調剤された銘柄の必要な数量が確保できず、別銘柄へ変更して調剤する必要がある患者への説明」を明確に挙げています。

ここから実務的に導ける結論は、次の考え方です。

特定薬剤管理指導加算3のメーカー変更の算定要件と最初の1回

特定薬剤管理指導加算3(ロ)は、服薬管理指導料等で行う通常の管理・指導に加えて、調剤前に医薬品選択に係る情報の説明・指導を行う場合に評価されます。

厚労省の中医協資料では、算定要件の骨子として「重点的な服薬指導が必要と認め、必要な説明及び指導を行ったときに、当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定」と整理されています。

同資料では、(ロ)に該当する具体場面として、選定療養の対象となる先発品を選択しようとする患者への説明、そして供給不安定で前回銘柄の必要量が確保できず別銘柄へ変更して交付する必要がある患者への説明が明示されています。

ここで重要なのが「最初に処方された1回」の粒度です。

  • “成分(一般名)で最初の1回”と捉えるのか。
  • “銘柄(メーカー)で最初の1回”と捉えるのか。
  • “選定療養の説明”と“供給不安による変更説明”を同一の「当該医薬品」の初回と捉えるのか。

通知・資料の文言だけでは、現場の全ケースを一意に決めきれないため、実務では「レセプト・薬歴で説明の必然性を示せるか」「摘要欄要件を満たせるか」「同一患者・同一薬剤で説明が形式化していないか」が監査耐性の分かれ目です。

参考)【2025年改定】特定薬剤管理指導加算3完全ガイド!要件や算…

特に、厚労省資料では、加算3(ロ)が選定療養開始で薬局負担が増えたことを踏まえて評価見直し(5点→10点)が議論され、患者説明に時間を要するケースや疑義照会増加等の困難事例も示されています。

特定薬剤管理指導加算3のメーカー変更で算定可・不可の境界

メーカー変更(銘柄変更)が絡むと、同じ「供給不安」でも状況が揺れます。ここでは、上位情報で頻出する論点を、判断フローに落とします。

■算定が強くなりやすい場面(説明の必然性が立つ)

■算定が弱くなりやすい場面(「初回」の説明が薄い)

  • すでに同一患者が同一銘柄を過去に受け取っており、今回“戻っただけ”で、説明が実質的に新規性を欠く(「二度目の同一銘柄」は算定不可とする整理が紹介される)。​
  • 供給不安ではなく、単なる薬局都合(在庫都合で確保できるのに変更)に見えるケースは、算定根拠が脆くなります(資料が示すのは「必要数量が確保できない」状況)。​
  • 事前に医師と申し合わせた代替運用で、患者説明が“調剤前の選択支援”というより“ルーチン”になっている場合、根拠が薄いとする見解が出ています。​

■「交互変更」はどう考える?(現場で揉めるやつ)

供給が不安定なとき、A社→B社→A社→B社のように交互に変わることがあります。これを「変更のたび全部OK」とする運用紹介もあり、実務判断が割れます。

一方で「過去に使ったことのある銘柄に戻る場合は算定不可」と整理する考え方も紹介されており、監査耐性を優先するなら“同一銘柄への戻しは慎重”が無難です。

結局は、当該患者の薬歴上「その銘柄での説明が初回なのか」「今回も重点的説明が必要なのか」を、供給状況と患者リスク(取り違え・負担増・不安)で説明できるかに収れんします。

特定薬剤管理指導加算3のメーカー変更と薬歴・摘要欄の書き方

加算3(ロ)で監査・返戻を避けるには、「説明した」では弱く、説明の要点が“供給不安と変更による影響”に沿っていることが重要です。

m3のQ&Aでは、供給不安で銘柄変更する際に説明すべき項目として、入荷状況、銘柄間の違い、疑義照会の要否、負担金の変化などを挙げています。

また厚労省資料上、供給不安を踏まえ説明を行った場合、レセプト摘要欄に「調剤に必要な数量が確保できなかった薬剤名」を記載する運用が示されています。

実務でそのまま使える“書き方の型”を提示します(薬局内で統一すると強いです)。

■薬歴(SOAPでも自由記載でも可)に残す要点例

  • 供給状況:前回銘柄○○が必要数量確保できず(入荷未定/出荷調整/割当など)。​
  • 変更内容:同成分・同含量の△△(メーカー)へ銘柄変更、用法用量は同一。
  • 患者説明:外観・シート表示の差、服用方法は同じ、効果は同等(医師指示に基づく)等を説明。
  • 安全面:取り違え防止(色・形・名称)、残薬混在の回避策(袋分け、古い薬の管理)を指導。
  • 費用:患者負担が変わる可能性、選定療養該当の有無(該当する場合は特別の料金)を説明。​
  • 同意:患者の理解・同意を確認(不安点、質問と回答)。

■摘要欄の考え方(供給不安の変更時)

  • 「確保できなかった薬剤名(前回銘柄)」を明確にする、という指示が示されています。​
  • 監査目線では、どれが欠品で、何に変更したかが追えると説明が立ちます(サイトでも摘要欄に供給理由や変更銘柄名の記載が重要と解説されています)。​

特定薬剤管理指導加算3のメーカー変更を減らす独自視点:患者体験の設計

ここは検索上位が“算定可否”に寄りがちな一方、現場改善の伸びしろが大きい領域です。厚労省資料でも、選定療養の説明で「説明に時間がかかり業務に支障」「疑義照会増加」「暴言などのハラスメント」等が対応困難事例として示されており、説明設計の品質が薬局防衛に直結します。

メーカー変更の回数が増えるほど、患者側は「薬がコロコロ変わる」こと自体をリスクと感じ、アドヒアランス低下や自己判断中止の引き金になります(特に高齢者・多剤併用で顕在化しやすいです)。

つまり「何回まで算定できるか」だけでなく、「そもそも変更が増える環境で、患者の誤薬と不信をどう抑えるか」が、長期的には薬学的アウトカムにも、クレーム抑制にも効きます。

現場で効く具体策(小さく始められる順)

  • ✅ 服薬カレンダーや一包化ラルに「今回のメーカー名(銘柄)」を明記して、次回来局時に照合しやすくする。
  • ✅ 「前回と違う理由」を定型文で1行に圧縮(例:出荷調整のため同成分別銘柄へ)し、患者へも薬歴へも同じ言葉で残す(ブレをなくす)。
  • ✅ “戻し”が起きた場合は、患者が混乱しやすいので、残薬回収・分別・袋分けのどれをやったかまでセットで記録する(説明の実体が出ます)。
  • ✅ 忙しい時間帯ほど説明が短くなりがちなので、「必ず言う3点(理由・見た目・費用)」だけは外さないミニチェックを運用する(監査・クレーム双方に効く)。​

意外に見落とされがちなのが、「患者が薬局に期待している価値は“薬の確保”そのものにもある」という点です。厚労省資料の患者自由回答にも、メーカー変更理由の説明が安心につながる旨が示されており、“確保できる薬局”の姿勢は信頼のコアになり得ます。

参考:制度背景(特定薬剤管理指導加算3ロの要件・見直し案、供給不安による銘柄変更の位置づけ、摘要欄の考え方がまとまっている)

厚生労働省:調剤について(その1)参考資料(中医協資料PDF)

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