テルブタリン作用機序から副作用まで医療従事者向け解説

テルブタリン作用機序と臨床応用

β2選択性でも心臓への影響は完全には避けられません。

この記事の3つのポイント
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β2受容体刺激によるcAMP増加メカニズム

テルブタリンはβ2受容体に結合してアデニルシクラーゼを活性化し、細胞内cAMPを増やすことで気管支平滑筋を弛緩させます

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重大な副作用としての低カリウム血症

キサンチン誘導体やステロイドとの併用で血清カリウム値低下が増強され、不整脈リスクが高まります

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適応外使用に関する重要な警告

海外で切迫早産治療に使用した際に母体の重篤な循環器系副作用や死亡例が報告されています

テルブタリンのβ2受容体刺激から気管支拡張までの分子機序

テルブタリン硫酸塩は選択的β2アドレナリン受容体刺激薬として、気管支喘息慢性閉塞性肺疾患COPD)の治療で広く使用されています。この薬剤の作用を理解するには、細胞レベルでの情報伝達経路を把握することが不可欠です。

気管支平滑筋細胞膜上に存在するβ2受容体にテルブタリンが結合すると、受容体と共役しているGsタンパク質が活性化されます。

つまり信号の増幅装置が動き出すということですね。

この活性化されたGsタンパク質は、細胞膜に存在する酵素アデニルシクラーゼ(アデニル酸シクラーゼ)を刺激します。

アデニルシクラーゼが活性化されると、細胞内のアデノシン三リン酸ATP)が環状アデノシン一リン酸(cAMP)に変換されます。このcAMPは細胞内のセカンドメッセンジャー(二次伝達物質)として機能し、プロテインキナーゼA(PKA)を活性化させるのです。活性化されたPKAは、筋小胞体からのカルシウムイオン放出を抑制し、細胞内カルシウム濃度を低下させます。

カルシウム濃度が低下すると、平滑筋の収縮に必要なミオシン軽鎖キナーゼの活性が抑えられます。結果として気管支平滑筋は弛緩し、気道が拡張するわけです。

この一連のカスケード反応により、テルブタリンは投与後2~4時間で血中濃度がピークに達し、気管支拡張作用を発揮します。他のβ2刺激薬であるイソプロテレノールやオルシプレナリンと比較して、テルブタリンは作用持続時間が長いことが動物実験で確認されています。

ブリカニール添付文書(KEGG MEDICUS)

このリンクにはテルブタリンの詳細な薬理作用と臨床試験データが記載されており、作用機序の理解を深める参考資料として有用です。

テルブタリンのβ2選択性と心臓への作用の実態

テルブタリンはβ2受容体選択的刺激薬として分類されていますが、この「選択性」という言葉には注意が必要です。

実際には完全な選択性ではありません。

気管支平滑筋に多く存在するβ2受容体に対して優先的に作用する一方で、心筋に存在するβ1受容体にも弱いながら作用してしまいます。動物実験においてテルブタリンは気管支平滑筋に対する弛緩作用の方が強く、心筋に影響を与えない量でも気管支拡張が認められることが確認されています。しかし臨床の現場では、動悸や頻脈といった心血管系の副作用が5%未満の頻度で報告されているのです。

β受容体に対する選択性は完全ではないため、心臓興奮に由来する副作用が全く起こらないわけではないことが各種インタビューフォームに明記されています。特に高用量を使用した場合や過度に使用を続けた場合には、不整脈や場合によっては心停止を起こすリスクがあると警告されています。

添付文書には「過度に使用を続けた場合、不整脈、場合によっては心停止を起こすおそれがある」との記載があります。このことは医療従事者として患者指導の際に必ず伝えるべき重要事項です。

また心疾患のある患者、高血圧のある患者、甲状腺機能亢進症の患者では症状を悪化させる可能性があるため、慎重な投与が求められます。これらの患者さんでは心血管系への影響がより顕著に現れやすいですね。

他のβ2刺激薬と併用する場合、特にカテコールアミン製剤(アドレナリン、イソプロテレノール等)との併用では不整脈や心停止のリスクが増大します。救急の場面などで複数の気管支拡張薬を使用する際には、薬剤の作用機序を考慮した慎重な判断が必要です。

テルブタリンによる低カリウム血症と併用薬リスク

テルブタリンの重大な副作用として添付文書に明記されているのが、重篤な血清カリウム値の低下です。この副作用は単独使用でも発生しますが、特定の薬剤との併用で著しく増強されるため注意が必要です。

β2受容体刺激により細胞内へのカリウム取り込みが促進されることで、血清カリウム値が低下します。低カリウム血症が進行すると、心臓の電気的興奮に異常をきたし、不整脈を引き起こすリスクが高まるのです。

併用注意薬として特に重要なのが以下の3つのカテゴリーです。まずキサンチン誘導体(テオフィリン、アミノフィリン水和物、ジプロフィリン等)との併用では、cAMP量が増加し血清カリウム値低下が増強されます。次にステロイド剤(ベタメタゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム等)は尿細管でのカリウム排泄を促進する作用があります。そしてカリウム排泄型利尿剤(フロセミド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド等)も同様のメカニズムでカリウム喪失を助長します。

これらの薬剤は気管支喘息の治療において頻繁に併用される組み合わせです。

重症喘息患者では特に注意が必要とされています。喘息発作時にはテオフィリン製剤の点滴投与とβ2刺激薬の吸入を同時に行うことがあり、さらにステロイド剤も併用されるケースが多いためです。このような状況下では血清カリウム値のモニタリングが推奨されます。

低酸素血症の患者でも血清カリウム値をモニターすることが望ましいとされています。低酸素状態では血清カリウム値の低下により心リズムに及ぼす作用が増強されることがあるためです。喘息発作で低酸素状態にある患者さんは特にリスクが高いということですね。

臨床症状としては筋力低下、テタニー、多飲・多尿などが現れ、重症例では全身の筋脱力や麻痺性イレウス、生命を脅かす不整脈に至ることもあります。血清カリウム値が3.0mEq/L未満になると入院治療が必要とされ、2.5mEq/L未満では生命に関わる重篤な状態です。

テルブタリンの用法用量と他のβ2刺激薬との比較

テルブタリン硫酸塩(商品名ブリカニール)の標準的な用法用量は、成人では1回2錠(テルブタリン硫酸塩として4mg)を1日3回経口投与します。6歳以上の小児では1回1錠(2mg)、5歳以下の幼児では1回1/2錠(1mg)を同じく1日3回投与するのが基本です。

皮下注射製剤も存在し、成人では1回1管(0.2mg)、6歳以上の小児では1/2管(0.1mg)、5歳以下の幼児では1/4管(0.05mg)を皮下注射します。シロップ製剤では幼小児に対して1日量として0.45mL/kg(テルブタリン硫酸塩として0.225mg/kg)を3回に分けて経口投与します。

テルブタリンは短時間作用型β2刺激薬(SABA)に分類されますが、他のSABAと比較するといくつかの特徴があります。代表的なSABAとしてはサルブタモール(商品名ベネトリン)やプロカテロール(商品名メプチン)があり、これらは主に吸入薬として使用されます。

テルブタリンの特徴は経口剤と皮下注射剤が主体である点です。日本では吸入剤は販売されていませんが、海外では喘息の発作治療薬(リリーバー)として吸入剤も使用されています。経口投与では血中濃度のピークが2~4時間後と、吸入薬に比べて効果発現がやや遅いのが特徴です。

吸入β2刺激薬であるサルブタモールやプロカテロールは、吸入後数分で効果が現れ、発作時の速やかな症状緩和に適しています。一方テルブタリンの経口剤は効果発現まで時間がかかるものの、作用持続時間がイソプロテレノールやオルシプレナリンより長いという利点があります。

現在の喘息治療ガイドラインでは、発作治療には速効性の吸入SABAが第一選択とされています。テルブタリンの経口剤は補助的な位置づけとなっており、吸入薬が使用できない患者や、軽度の症状に対する定期的な気管支拡張維持を目的に使用されることが多いです。

喘息発作時の対応を考える場合、即効性を求めるなら吸入SABAを選択するのが原則です。ただし吸入手技が困難な高齢者や小児、吸入デバイスが使えない状況では、テルブタリンの経口剤や皮下注射剤が有用な選択肢となります。

テルブタリンの適応外使用リスクと最新の安全性情報

テルブタリンには添付文書に明記された重要な警告があります。それは適応外使用である切迫早産治療に関するものです。日本では気管支拡張剤としてのみ承認されていますが、β2受容体刺激作用により子宮平滑筋も弛緩させることから、一部で子宮収縮抑制目的に使用されてきた歴史があります。

しかし添付文書の「その他の注意」欄には、「適応外であるが、海外において切迫早産の治療に使用した際に、母体において重篤な循環器系の副作用や死亡が認められたとの報告がある」と明記されています。

これは極めて重大な安全性情報です。

米国FDAは、母体に重篤な心臓障害や死亡をもたらす可能性があることから、テルブタリンを切迫早産治療の目的で48~72時間を超えて使用すべきではないと警告を発しています。日本においても、本剤の切迫早産治療については国内及び米国では適応外であることが強調されているのです。

この問題は単なる理論的リスクではありません。実際に循環器系の重篤な副作用や死亡例が報告されている以上、医療従事者として厳格に適応を守る必要があります。

日本で切迫早産の治療に保険適用があるのは、塩酸リトドリン(ウテメリン)と硫酸マグネシウム(マグセント)です。テルブタリンをこの目的で使用することは、有効性が証明されていないだけでなく、母体の生命に関わるリスクがあるため避けるべきです。

また妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。特に妊娠3ヵ月以内には投与しないことが望ましいとされており、気管支喘息治療の場合でも妊娠中の使用には慎重な判断が求められます。

授乳婦についても、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することとされています。海外の臨床薬理試験では、テルブタリン硫酸塩を経口投与した授乳婦の母乳中にテルブタリンが検出されたとの報告があります。

患者さんから妊娠の可能性について相談を受けた際には、これらの情報を正確に伝え、産婦人科医との連携のもとで治療方針を決定することが重要です。安全性情報を把握しておくことで、適切な服薬指導と患者保護につながります。

福岡県薬剤師会 – テルブタリンの切迫早産使用に関する質疑応答

このページではテルブタリンの切迫早産における使用に関する専門的な見解が述べられており、薬剤師としての対応を考える上で参考になります。

高齢者では一般に生理機能が低下しているため、減量するなど注意が必要とされています。特に心血管系や腎機能の低下している高齢患者では、副作用のリスクが高まる可能性があるため、慎重な投与と観察が求められますね。