点滴ソルデムと電解質輸液の使い分け

点滴ソルデムと電解質輸液の基礎

ソルデムの分類と特徴
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低張電解質輸液の定義

ソルデムは生理食塩水、電解質、ブドウ糖を含む低張電解質輸液です。電解質濃度が生理食塩液より低く設定されていますが、ブドウ糖の浸透圧調整により、体液と同じ浸透圧(等張液)に分類されます。成人の体重の約60%が水分で構成される中で、ナトリウム、カリウムなどの電解質は細胞機能を維持するために必須です。

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浸透圧と低張液の違い

低張電解質輸液は低張液と誤解されやすいですが、実際の浸透圧は体液とほぼ同じです。この理由は、低張なナトリウム濃度の部分をブドウ糖で補正しているからです。つまり、ソルデムは浸透圧的には等張でありながら、電解質濃度は低張という独特の特性を持ちます。

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ソルデムの7つの製品ラインアップ

ソルデム1輸液(開始液)、ソルデム2輸液(脱水補給液)、ソルデム3輸液(維持液)、ソルデム3A輸液(維持液・低電解質)、ソルデム3AG輸液(高ブドウ糖維持液)、ソルデム3PG輸液(高ブドウ糖・リン酸配合)、ソルデム6輸液(術後回復液)が揃い、疾患や症状の原因に応じて使い分けられます。

ソルデムの組成と電解質濃度の詳細

各製品の電解質組成は臨床判断の基礎となります。ソルデム1輸液は1袋200mL中にブドウ糖5.2g、塩化ナトリウム0.828g、L-乳酸ナトリウム0.896gを含み、Na⁺18mEq、Cl⁻14mEq、L-Lactate⁻4mEqで合計20.8kcalです。一方、ソルデム3A輸液(500mL)はブドウ糖21.5g、塩化ナトリウム0.45g、塩化カリウム0.745gを含み、Na⁺17.5mEq、K⁺10mEq、Cl⁻17.5mEq、L-Lactate⁻10mEqで86kcalです。

ソルデム3輸液(500mL)の場合、1日に必要な水分量(約2000mL)を投与すると、主要電解質(Na⁺、Cl⁻、K⁺)の1日必要量がほぼ補給できます。維持液としての位置づけは、絶飲食状態の患者に対して、最低限の水分と電解質を供給することにあります。重要な点として、ソルデム3Aは3輸液に比べて糖濃度が高くナトリウムとクロール濃度が低いため、低ナトリウム血症のリスク低減が期待できます。

ソルデム各種の臨床応用と使い分けの原則

ソルデム1輸液(開始液)は脱水症状や症状の原因が不明な緊急時に最初に使用されます。カリウムを含まないため、尿の排泄がない患者でも安全に投与でき、手術前後の初期段階での水分・電解質補給に適しています。ソルデム2輸液(脱水補給液)はカリウムを含み、電解質バランスが崩れた低張性脱水(ナトリウム欠乏型脱水)の補正に使用されます。

ソルデム3輸液(維持液)は水分・電解質のバランス維持を目的とし、意識がない場合や経口摂取が困難な患者に使用されます。ソルデム3A輸液はより低いナトリウム・クロール濃度で低ナトリウム血症リスクを軽減し、多くの症例で1日2~3本の投与が実際の臨床では充分です。特に高齢者では水分過剰のリスクがあるため、抗菌薬投与時の水分量を合算した上での調整が必要です。ソルデム3AG輸液はブドウ糖含有量がソルデム3輸液より多く、エネルギー補給効果も兼ねています。

ソルデム3PG輸液はブドウ糖とリン酸を配合し、水分・電解質補給だけでなくエネルギーとリン補給を同時に行える利点があります。ただし、高リン血症や低カルシウム血症、副甲状腺機能低下症のある患者には禁忌です。ソルデム6輸液(術後回復液・4号液)は術後で腎機能が低下している状況やカリウム処理能力が落ちている患者向けで、カリウムを含まずナトリウムも少量となっています。

ソルデム使用時の重要な注意点と禁忌疾患

ソルデム系輸液の使用禁忌を理解することは、医療安全において最優先事項です。高乳酸血症の患者にはソルデム1からソルデム3PGまで投与してはいけません。乳酸ナトリウムを含むため、既存の乳酸蓄積状態を悪化させるリスクがあるからです。高カリウム血症の患者に対しては、ソルデム2、3、3A、3AG、3PGは禁忌です。乏尿、アジソン病、重症熱傷、高窒素血症のある患者も高カリウム血症を引き起こす可能性から使用できません。

ソルデム3PG投与時には特に高リン血症・低カルシウム血症・副甲状腺機能低下症の確認が重要で、これらの疾患がある場合は電解質異常が悪化する可能性があります。大量または急速な点滴投与により、脳浮腫肺水腫、末梢浮腫が発生するリスクがあり、投与速度の管理が重要です。成人では通常1時間当たり300~500mL、小児は1時間当たり50~100mLの速度設定が標準です。

維持液管理における低ナトリウム血症リスク

ソルデムを含む維持液の継続投与により低ナトリウム血症が発生するリスクが指摘されています。維持液を長期投与すると必然的に電解質異常のリスクが生じ、特に低ナトリウム血症のリスクが高まります。小児の報告では、ソルデム3Aよりもナトリウム濃度が高いhalf saline(77mEq/L)であっても、低ナトリウム血症のリスクがあると指摘されており、成人でも同様の注意が必要です。

急激なナトリウム補正は浸透圧性脱髄症候群などの神経系合併症を招くため、低ナトリウム血症が診断された場合でも最初の24時間での過度な補正は避けるべきです。維持液の離脱判断も重要で、絶飲食状態の解除、経口摂取の再開、腎機能の回復に伴い、段階的に維持液の本数を減量することが標準的な管理方法です。誤嚥性肺炎で入院した高齢者など、抗菌薬投与による水分もカウントした場合、維持液は1本/日の投与に減量できることも多く、看護師の勤務体制最適化にも寄与します。

ソルデムの副作用と安全性管理

ソルデムの副作用はまれですが、投与速度と投与量に依存する合併症が報告されています。共通する副作用は大量または急速投与時の脳浮腫肺水腫、末梢浮腫で、ソルデム2、3、3A、3AGでは水中毒と高カリウム血症、ソルデム3PGでは血管痛や血栓静脈炎が起こるおそれがあります。特に新生児・1歳未満の小児にソルデム2を1時間100mL以上の速度で投与すると高カリウム血症のリスクが高まります。

ソルデムに含まれるブドウ糖によってアシドーシス(乳酸アシドーシス)が発生する懸念が議論されることがありますが、ソルデムの含有カロリー(最大200kcal/500mL)はビタミンB1欠乏によるアシドーシスを引き起こすほどではありません。むしろ高カロリー輸液(TPN)ほどではないため、ソルデムの適正使用下ではアシドーシスリスクは低いでしょう。投与中は電解質値(特にナトリウム、カリウム)の定期的なモニタリング、尿量と水分出納の厳密な記録が必須です。

ソルデムと経口補水液の治療使い分けの実践

経口摂取が可能な患者に対しては、ソルデムなどの点滴投与ではなく経口補水療法が推奨されます。経口補水液は市販製品が複数あり、大塚製薬のオーエスワンのようなWHO推奨組成(Na⁺50mEq/L、K⁺20mEq/L、ブドウ糖1.8%)の製品から、ネスレアクアソリタなど様々な電解質組成が提供されています。脱水症、感染症による下痢・嘔吐、熱中症などでは経口補水液での初期対応を考慮し、それでも改善しない場合や嘔吐が強い場合に点滴へ段階的に移行するアプローチが効率的です。

経口補水液は意識がしっかりしており飲用可能な状態であれば、無理なく少量ずつ服用でき、一般的な飲料よりナトリウムやカリウムなどの電解質濃度が高いため過剰摂取に注意が必要です。糖尿病高血圧などの基礎疾患や腎機能低下がある患者は、かかりつけ医の指示を確認した上で使用することが重要です。意識がはっきりしない、ペットボトルのキャップが自分で開けられない、飲み物をうまく飲めないなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。

参考リンク: ソルデムの基本的な使い方と各製品の成分詳細、禁忌の確認

薬局の窓口:ソルデムはどんな時に使われるか、似た効果のある市販品解説

参考リンク: ソルデム3A輸液の臨床管理と維持液離脱について

一歩進んだ輸液の考え方:ソルデム3Aの適正投与量と電解質異常リスク

参考リンク: 医療用医薬品としてのソルデム各製品の正式な成分・用量情報

医療用医薬品データベース:ソルデムの公式製品情報

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