低血圧の症状とめまい・だるさの原因

低血圧の症状

この記事でわかること
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低血圧の主な症状

めまい、立ちくらみ、朝起き不良、頭痛、倦怠感など具体的な症状

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低血圧の種類と診断基準

本態性、起立性、二次性低血圧の違いと血圧基準値

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改善方法と対策

食事・運動・生活習慣で実践できる具体的な改善策

低血圧で起こる主な症状

低血圧の人が訴える症状として最も多いのは、立ちくらみとめまいです。その他、朝起き不良、頭痛・頭重感、倦怠感・疲労感、肩こり、動悸、胸痛・胸部圧迫感、失神発作、悪心などが起こります。血圧が下がりすぎた場合、最初に機能不全を示す臓器は通常、脳です。脳が体の最も高い位置にあり、脳に血液を供給するには重力に逆らわなければならないため、低血圧の人のほとんどがめまいやふらつきを感じ、特に立っているときに症状が現れやすく、失神することもあります。

参考)4.低血圧


低血圧では、頭痛、めまい、全身倦怠感、不眠、寝起きの不調、食欲不振、下痢、便秘、腹痛、動悸、息切れ、不整脈、発汗、冷えなどの症状を起こすことがあります。特に朝食を抜く傾向がある方は注意が必要で、身体のだるさや体力不足、慢性的な疲労感などは低血圧でよく見られる症状です。気温や季節の変化によっても悪化する場合があり、十分な休養を取ることや、適度な運動を行うことで症状を和らげることが可能です。

参考)https://www.kenkou-club.or.jp/kenko_yogo/t_06.jsp

低血圧の脳と心臓への影響

低血圧が原因で脳への血流が不足すると、頭痛やめまい、立ちくらみが起きる場合があります。急な立ち上がりは、下半身の静脈に大量の血液が集まることで心臓に戻る血液の量が減少し、血圧が低下する可能性があります。失神して床に倒れると、脳と心臓が同じ高さにくるため、血液が重力に逆らわずに脳に流れることで、脳への血流量が増えて脳の損傷が未然に防がれます。しかし、血圧があまりに低くなると、脳の損傷を防ぎきれなくなります。

参考)低血圧 – 06. 心臓と血管の病気 – MSDマニュアル家…


研究によると、慢性的な低血圧は注意力や記憶力の領域において認知機能の低下と関連していることが明らかになっています。脳波研究では、低血圧に関連する精神能力の低下が皮質活動の減少にも反映されていることが実証されています。低血圧ではたまに、心筋に血液が十分に供給されないことによる息切れや胸痛(狭心症)が起こることもあります。血圧が極めて低くなったまま元に戻らないと、すべての臓器が機能不全に陥る状態であるショックに至ります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1858602/

低血圧の種類と診断基準

低血圧には、原因や発症メカニズムによっていくつかの種類があります。原因不明の低血圧を「本態性(ほんたいせい)低血圧」あるいは「一次性低血圧」といいます。体質的なものが多く、本人の生活に支障がなければ病気とはいえません。本態性低血圧は、寝た状態(臥位)、立った状態(立位)といった体位に関係なく、常に低血圧を示して症状のあるものです。

参考)本当は怖い低血圧 – 千代田国際クリニック


起立性低血圧は、寝た状態では正常な血圧(収縮期血圧=上の血圧)が、立った状態になると20mmHg以上低下するものです。1996年の合意定義によると、起立性低血圧は、立位から3分以内に収縮期血圧が少なくとも20mmHg以上、または拡張期血圧が少なくとも10mmHg以上低下した場合に診断されます。原因不詳の特発性起立性低血圧と、何か特定の原因があって二次的に起立性低血圧を発症する症候性起立性低血圧があります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2600002/


低血圧の診断基準として、国際的に決められている基準はありませんが、一般に成人では収縮期血圧100mmHg未満が低血圧とされます。WHO(世界保健機関)による世界基準では、「最高血圧が100mmHg以下、最低血圧が60mmHg以下」を低血圧と定義しています。このような低血圧症は一般に、男性より女性の方に多く、女性の血圧は高齢に達するまでは男性より低くなっています。

参考)低血圧

低血圧の原因となる疾患

低血圧の原因は多岐にわたり、急性低血圧と慢性低血圧に分類されます。急性低血圧の分類には、ショック症候群、急性のアレルギー症状、アルコールによるもの、人工透析によるものなどがあります。慢性低血圧の分類には、体質性低血圧(低血圧があっても日常生活に支障がない)と病的低血圧(日常生活に支障のある低血圧)があります。​
二次性低血圧は、特定の疾患や薬剤が原因で血圧が低下する状態を指します。心拍出量の減少をもたらす原因として、不整脈、心筋障害あるいは機能不全(心臓発作やウイルス感染症などによる)、心臓弁障害などがあります。血管の拡張をもたらす原因として、アルコール、アミトリプチリンなどの抗うつ薬などがあります。

参考)低血圧 ~様々な原因と症状~


内分泌疾患も低血圧の原因となることがあります。内分泌疾患による立ちくらみは、ホルモンバランスの乱れが自律神経や血圧調節機能に影響を与えることで発生します。単純な起立性低血圧とは異なり、疲労感、体重変化などを伴うことがあります。グルココルチコイドの欠乏は低血圧の一因であり、アジソン病などではインスリン感受性の著明な亢進および炭水化物、脂肪、タンパク質の代謝障害をもたらします。

参考)アジソン病 – 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 – MSDマ…

低血圧の改善方法

低血圧の改善には、食事、運動、生活習慣の見直しが重要です。食事の改善として、たんぱく質と適度な塩分、そして十分な水分(1日1.8L目安)を摂ることが推奨されます。食後の不調を防ぐための食事の摂り方として、ゆっくりよく噛んで食べて消化の負担を軽くすること、一度に食べ過ぎないように1回の食事量を減らし回数を増やすことなどが有効です。栄養バランスの良い食事を摂ることで、低血圧の症状を和らげることができます。

参考)血圧が低い原因や治療方法について解説|渋谷・大手町・みなとみ…


運動による改善として、ウォーキングやふくらはぎを鍛える運動で血流を促進することが効果的です。低血圧の方は、筋肉量が少なく、血液を心臓に送り返す「筋ポンプ作用」が弱い傾向にあります。特に「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉を鍛えることは、全身の血流改善に直結します。具体的な運動として、全身の血流を促進する最も手軽な有酸素運動であるウォーキング、ふくらはぎの筋ポンプ作用をダイレクトに刺激するかかと上げ下げ運動、下半身全体の筋肉を効率よく鍛えるスクワットなどがあります。激しい運動は必要なく、日常生活に軽い血流改善のための運動法を取り入れるだけでも身体は変わっていきます。

参考)低血圧を改善する8つの方法!食事・運動・生活習慣で根本解決│…


生活習慣の改善として、規則正しい生活と「ゆっくり動作」で自律神経を整え、急な血圧変動を防ぐことが大切です。水分はとっていても、塩分を控えすぎている、朝食を抜きがちでエネルギー不足、睡眠不足で自律神経のバランスが乱れている、クーラーで体が冷えすぎて血流が悪化しているなどの生活習慣が低血圧を悪化させる要因となります。めまいや頭痛、動悸など、さまざまな症状がある人は、まずその原因を調べる必要があります。

参考)http://www.ushitani.com/health/2014/pdf/2014_08.pdf

低血圧で医療機関を受診すべきサイン

低血圧の症状がなければ、治療の必要はありませんが、以下のような症状がある場合は医療機関を受診すべきです。毎朝、立ち上がるとフラつく・めまいがある、食事や水分を摂っても不調が続く、午前中が特にしんどく日常生活に支障がある、動悸や冷や汗、吐き気を伴うといった症状がある場合、自律神経の調整がうまくいっていない可能性や、別の疾患が隠れていることもあります。

参考)朝からフラフラする…“夏の低血圧”で不調が続く理由|静岡ひか…


起立性低血圧症で何らかの症状を有する患者(立位にて収縮期血圧15mmHg以上の低下がある場合)に対しては、ミドドリン(メトリジン)による治療が行われることがあります。失神前にふらつきやめまいを感じる人もいて、また吐き気、発汗、かすみ目または視野狭窄、唇や指先のピリピリ感、胸痛、動悸が起こる人もいます。セルフケアを続けても症状が改善しない場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合は、決して一人で抱え込まず、早めに医療機関に相談しましょう。

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=2


低血圧は単なる「体質」だと諦めてしまいがちですが、その原因とタイプを正しく理解し、ご自身に合った対策を継続することで、症状は着実に改善していく可能性があります。何よりも大切なのは、焦らず、今日からできることをひとつずつ生活に取り入れていくことです。​
低血圧による認知機能と脳血流への影響に関する研究

慢性的な低血圧が注意力や記憶力などの認知機能に与える影響について、脳波研究や脳血流測定を用いた科学的な検証結果が詳しく解説されています。

起立性低血圧の診断基準と評価方法

起立性低血圧の国際的な診断基準(収縮期血圧20mmHg以上の低下、拡張期血圧10mmHg以上の低下)と、診断における課題や今後の方向性について専門的な議論がまとめられています。