テガフール・ウラシル配合剤の作用機序と適応
ホリナート併用時は食後1時間でも副作用リスクが上がります。
テガフール・ウラシル配合剤の薬理作用と特徴
テガフール・ウラシル配合剤(商品名:ユーエフティ)は、代謝拮抗剤に分類される経口抗がん剤です。この薬剤は、テガフールとウラシルという2つの有効成分を配合することで、がん細胞に対して効果的に作用する設計になっています。
テガフールは、体内に入ると肝臓で代謝されてフルオロウラシル(5-FU)という活性型の抗がん物質に変換されます。このプロドラッグとしての特性により、経口投与でも安定した血中濃度を維持できる利点があります。5-FUはDNAやRNAの合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
ウラシルの役割は極めて重要です。このウラシルは、5-FUが体内で分解されるのを防ぐ働きがあります。具体的には、ウラシルがジヒドロピリミジン脱水素酵素という分解酵素と競合することで、5-FUの分解を抑制し、効果を長時間持続させます。
つまり、2成分の配合が基本です。
この配合により、正常組織に比べて腫瘍内の5-FU濃度を特異的に高めることができ、選択的な抗腫瘍効果を示すというbiochemical modulationの理論に基づいて開発されました。がん組織では正常組織よりも高い5-FU濃度が得られるため、治療効果が向上します。
大鵬薬品工業の製品情報ページには、作用機序の詳細な図解と臨床データが掲載されています。
テガフール・ウラシル配合剤の適応がん種と投与方法
テガフール・ウラシル配合剤は、通常療法とホリナート併用療法の2つの治療法があり、それぞれ適応が異なります。
通常療法では、頭頸部がん、胃がん、結腸・直腸がん、肝臓がん、胆のう・胆管がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮頸がんの11種類のがんに対して適応があります。これほど幅広い適応を持つ経口抗がん剤は限られており、外来化学療法の重要な選択肢となっています。
投与量は、通常1日量としてテガフール300〜600mg相当量を1日2〜3回に分割して経口投与します。子宮頸がんに対しては1日量600mgが標準です。製剤にはカプセル剤(T100)と顆粒剤(T100、T150、T200)があり、患者さんの嚥下機能や好みに応じて選択できます。
ホリナート併用療法は、結腸・直腸がんに対する治療法です。この療法では、テガフール300〜600mg相当量(体表面積300mg/m²を基準)を1日3回、約8時間ごとに投与し、同時にホリナート75mgを併用します。体表面積1.17m²未満なら300mg/日、1.17〜1.49m²なら400mg/日、1.50〜1.83m²なら500mg/日、1.83m²を超える場合は600mg/日が目安となります。
投与スケジュールは28日間連日投与し、その後7日間休薬するという1クール35日のサイクルを繰り返します。休薬期間が設定されているのは、骨髄機能の回復を待つためです。
食事の影響について、ホリナート併用療法では特に重要な注意点があります。食事の前後1時間を避けて服用する必要があります。食後に服用すると、ウラシルの吸収が変化し、副作用のリスクが上昇する可能性があるためです。
テガフール・ウラシル配合剤の主要な副作用と頻度
テガフール・ウラシル配合剤による治療では、さまざまな副作用が出現する可能性があります。医療従事者として、これらを早期に発見し適切に対処することが患者さんの安全確保につながります。
骨髄抑制は重要な副作用の一つです。白血球減少が3.1%、血小板減少が1.1%、貧血が0.8%の頻度で報告されています。これらは投与開始から1週間〜2ヶ月頃に出現することが多く、定期的な血液検査によるモニタリングが必須です。白血球が3000/mm³を下回る場合や血小板が75000/mm³未満の場合は、減量または休薬を検討します。
消化器系の副作用も高頻度に認められます。下痢、口内炎、食欲不振、悪心・嘔吐などが代表的です。特にホリナート併用療法では消化器症状が強く出やすく、激しい下痢から脱水症状に至るケースもあります。Grade2以上の下痢が出現した場合は、直ちに投与を中止し、補液などの対応が必要です。
肝機能障害にも注意が必要です。劇症肝炎を含む重篤な肝障害が報告されており、投与開始から2ヶ月間は月1回以上の肝機能検査が推奨されています。AST、ALTの上昇だけでなく、プロトロンビン時間延長、アルブミン低下などにも注意を払います。
その他の副作用として、色素沈着、脱毛、倦怠感、発疹などが報告されています。これらは多くの場合軽度ですが、患者さんのQOLに影響を与えることがあるため、丁寧な説明と対症療法が求められます。
副作用発現率は通常療法とホリナート併用療法で異なり、併用療法では95.5%と高い発現率が報告されています。
併用時は毒性が増強されるということですね。
テガフール・ウラシル配合剤のホリナート併用療法における警告事項
ホリナート・テガフール・ウラシル療法は、テガフール・ウラシル配合剤の細胞毒性を増強する治療法であり、添付文書に警告として記載される重要な注意事項があります。
最も重大なのは、本療法に関連したと考えられる死亡例が認められているという事実です。このため、緊急時に十分な措置ができる医療施設で、がん化学療法に十分な経験を持つ医師のもとでのみ実施すべきとされています。治療開始前には患者さんの全身状態、臓器機能、併存疾患を慎重に評価し、適応を慎重に判断する必要があります。
定期的な臨床検査の実施が厳格に定められています。少なくとも1クールに1回以上、特に投与開始から2クールまでは各クール開始前と当該クール中に1回以上、肝機能検査と血液検査を行います。これは、致命的な経過をたどる可能性のある重篤な肝障害や骨髄抑制を早期に発見するためです。
激しい下痢への対応も警告事項に含まれています。激しい腹痛や下痢が出現した場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。脱水症状が認められた場合は補液などの対応を迅速に行います。患者さんには、下痢の症状が出たらすぐに連絡するよう徹底して指導することが重要です。
肝障害の前兆となる症状にも注意を払います。食欲不振を伴う倦怠感などが出現した際は、肝障害の可能性を疑います。黄疸(眼球黄染)が認められた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行うことが求められます。
禁忌事項として、重篤な骨髄抑制、重篤な下痢、重篤な感染症を合併している患者さんには投与できません。また、妊婦または妊娠している可能性のある女性も禁忌です。動物実験で催奇形作用が報告されており、奇形を有する児を出産した報告もあるためです。
テガフール・ウラシル配合剤とTS-1の違いと使い分け
同じテガフールを主成分とする経口抗がん剤として、テガフール・ウラシル配合剤(UFT)とテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1)がありますが、これらは成分構成と作用機序が異なります。
成分の違いを見ると、UFTはテガフールとウラシルの2成分配合ですが、TS-1はテガフール、ギメラシル、オテラシルカリウムの3成分をモル比1:0.4:1で配合しています。ギメラシルは5-FUの分解酵素であるジヒドロピリミジン脱水素酵素を強力に阻害し、オテラシルカリウムは消化管での5-FUの活性化を選択的に抑制します。
この成分の違いにより、薬物動態と副作用プロファイルに差が生じます。TS-1はギメラシルの作用により5-FUの血中濃度がより高く維持されるため、抗腫瘍効果が強化されています。同時に、オテラシルカリウムの作用で消化管粘膜への毒性が軽減される設計となっています。
適応がん種も異なり、TS-1は胃がん、結腸・直腸がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、手術不能または再発乳がん、膵がん、胆道がんに適応があります。UFTは11種類のがんに適応がある一方、TS-1は主に消化器系と呼吸器系のがんを中心とした適応となっています。
投与スケジュールにも違いがあります。TS-1は体表面積に基づいて投与量を決定し、朝夕食後の1日2回、28日間連日投与後14日間休薬という42日のサイクルです。UFT通常療法は1日2〜3回投与で休薬期間の設定がない場合もありますが、ホリナート併用療法では28日投与7日休薬となります。
重要な注意点として、UFTとTS-1の併用は絶対禁忌です。併用すると早期に重篤な血液障害や消化管障害が発現する危険性があります。TS-1投与中止後、少なくとも7日間はUFTを投与できません。投与切り替え時には十分なwash-out期間を確保することが必須です。
薬価の面では、UFT配合カプセルT100は102.8円/カプセル、顆粒T100は128.6円/包です。TS-1にもジェネリック医薬品が存在し、医療経済的な観点からの選択肢も広がっています。
臨床現場での使い分けとしては、患者さんの全身状態、腎機能、消化器症状の有無、適応がん種などを総合的に判断します。一般的に、消化器症状が懸念される場合や腎機能が低下している場合は、慎重な投与量調整が必要です。
KEGGデータベースには、テガフール・ウラシル配合剤の詳細な医薬品情報と相互作用情報が掲載されており、処方時の確認に有用です。
患者さんへの服薬指導では、UFTとTS-1の違いを理解してもらい、特に他院で処方された薬剤との重複に注意するよう説明します。お薬手帳の活用と、複数の医療機関を受診する際の情報共有の重要性を強調することで、安全な薬物治療の継続につながります。
医療従事者として、これらの違いを正確に把握し、適切な薬剤選択と投与管理を行うことが、患者さんの治療成績向上と安全性確保に直結します。