蛋白漏出性胃腸症ガイドラインと診断治療検査栄養

蛋白漏出性胃腸症ガイドライン

蛋白漏出性胃腸症の要点(臨床で迷う所だけ)
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まず「低アルブミン血症」の原因分解

肝合成低下・腎喪失(ネフローゼ等)・摂取不足/吸収不良を外して、消化管からの蛋白喪失を「証明」するのが基本です(除外診断+証明)。

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診断はα1アンチトリプシンクリアランスが軸

便中α1アンチトリプシン(A1AT)を用いた評価が広く使われ、病態評価にも役立ちます。胃病変では酸でA1ATが変性し得る点に注意します。

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漏出部位は蛋白漏出シンチグラフィで可視化

99mTc標識アルブミン等のシンチグラフィは「どこから漏れているか」の当たりを付け、内視鏡/生検の戦略を立てやすくします。

蛋白漏出性胃腸症のガイドライン的アプローチ:原因疾患と分類

 

蛋白漏出性胃腸症(protein-losing gastroenteropathy/enteropathy)は、血漿蛋白(特にアルブミン)が消化管腔へ異常に漏出し、肝合成能を上回ることで低蛋白血症・低アルブミン血症を来す「症候群」として理解するのが実務的です。

臨床では「原発性(腸リンパ管拡張症、Ménétrier病)」と「続発性(炎症性腸疾患悪性腫瘍膠原病、心疾患など)」の枠組みで整理すると、初期対応(栄養か、免疫抑制か、うっ血解除か、切除か)が決めやすくなります。

原因の機序は大きく4つ(①腸リンパ系の異常、②毛細血管透過性亢進、③粘膜上皮障害、④局所線溶亢進)にまとめられ、現場では「どれが主か」を見立てることで、検査選択と治療が直結します。

参考)https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d050328/

例として、腸リンパ管拡張症ではリンパ球減少や脂溶性ビタミン低下を伴うことがあり、粘膜障害主体のIBDでは炎症活動性と蛋白漏出が相関し得ます。

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=255

また、意外に見落としやすいのが「うっ血(右心不全、収縮性心外膜炎など)」によるリンパうっ滞型で、胸腹が目立つ一方で消化器症状が軽いこともあります。

「低アルブミン血症=栄養不足」と短絡し、補充だけで押し切ると、原因治療が遅れて再燃(腹水・浮腫の反復、易感染)になりやすい点はチームで共有しておく価値があります。

蛋白漏出性胃腸症の診断:α1アンチトリプシンクリアランスと検査の組み立て

診断の大原則は、低蛋白血症があり、摂取不良・吸収不良・肝合成低下・尿中喪失などを否定したうえで、「消化管からの蛋白漏出を証明」することです。

その中心に位置づくのが便中α1アンチトリプシンクリアランス(A1AT clearance)で、同検査の普及により原疾患のスペクトラムが広がった、という歴史的背景もあります。

ただしA1ATは強酸性下(pH 3以下)で変性するため、胃からの漏出が疑わしい場面では注意が必要で、酸分泌抑制薬(H2受容体拮抗薬など)併用で胃病変の評価を工夫する報告がある点が実務のコツです。

「下痢がないから消化管喪失は否定的」と判断しないことも重要で、蛋白漏出性胃腸症では下痢が軽度または欠如する例がある一方、浮腫・胸腹水が前景に出ることがあります。

検査の組み立てとしては、まず血液でアルブミン、総蛋白、脂質(ネフローゼと異なり高コレステロール血症を伴わないことがある)、リンパ球数、免疫グロブリン、Ca(低Ca血症〜テタニー)などを押さえ、病型の方向付けをします。

同時に原因疾患の拾い上げ(自己抗体、IgE/好酸球、心エコー、造影CT、上下部内視鏡など)を並行し、「漏出の証明」と「原因の特定」を同じ時間軸で進めるのが、ガイドライン的な運用として安全です。

蛋白漏出性胃腸症の画像:蛋白漏出シンチグラフィと内視鏡所見

蛋白漏出シンチグラフィは、標識アルブミンの漏出を画像で追うことで、漏出の有無だけでなく「漏出部位」を推定できる点が強みです。

古典的にアイソトープ標識物質(131I、51Crなど)による評価が言及されてきましたが、安全性等の理由で一般的利用が難しくなり、A1AT法や99mTc標識アルブミン等の画像検査が重要になってきた、という流れを押さえると説明が通りやすいです。

内視鏡では、腸リンパ管拡張症で白色絨毛・白斑・乳び様付着などが手掛かりになり、病理で粘膜内/粘膜下のリンパ管拡張を確認します。

参考)https://www.jsge.or.jp/wp-content/uploads/2024/09/121-9A.pdf

Ménétrier病(巨大皺襞性胃炎の枠で語られることもある)では巨大皺襞と低蛋白血症が問題となり、確定のためにstrip biopsyなどで粘膜全層採取が有用とされる点が「意外に知られていない実務ポイント」です。

また、症例報告ベースですが、H. pylori関連のMénétrier病で除菌後に低アルブミン血症が比較的早期に改善した経過が示されており、「原因が取れるタイプの蛋白漏出性胃腸症」を疑う視点として役立ちます。

参考)https://nsmc.hosp.go.jp/Journal/2018-8/SMCJ2018-8_casereport05.pdf

漏出部位が胃か小腸かで、A1ATだけに寄せるよりも、シンチで当たりを付けて内視鏡・生検を最短距離にする方が、患者負担も医療資源も減らしやすいです。

参考)https://jsnm.org/wp_jsnm/wp-content/themes/theme_jsnm/doc/kaku_bk/1990/002712/001/1361-1368.pdf

蛋白漏出性胃腸症の治療:ステロイド・利尿薬・アルブミン補充と原因治療

治療の原則は「原因疾患の治療+対症療法(浮腫、胸腹水、栄養障害)」で、原因確定が重要だと整理されます。

原因が炎症性腸疾患ならステロイドや免疫抑制、自己免疫疾患(SLE等)でもステロイドが軸になり得る一方、うっ血性心不全/収縮性心外膜炎なら循環動態の是正が優先され、同じ「蛋白漏出性胃腸症」でも初手が変わります。

対症療法としては、低蛋白血症・浮腫に対するアルブミン製剤や利尿薬が挙げられ、重症例では栄養投与(経腸、必要なら完全静脈栄養)も選択肢になります。

外科治療は、病変が限局する腫瘍・ポリポーシス・絨毛腺腫などで切除が奏功し得る点が重要で、内科治療の「延長」で考えるより、早期に適応を検討した方が良い場面があります。

合併症として、免疫グロブリンやリンパ球の喪失による続発性免疫不全、脂溶性ビタミン低下、低Ca血症などがあり、感染や骨代謝の観点でフォロー項目をテンプレ化しておくと抜けが減ります。

さらに文献では、抗凝固因子(アンチトロンビンIIIなど)低下に関連すると推測される血栓症・脳梗塞での死亡例に触れられており、浮腫・胸腹水だけでなく血栓リスク評価も意識したいところです。

蛋白漏出性胃腸症の栄養:中鎖脂肪酸(MCT)と低脂肪食の実装(独自視点)

リンパ系異常が疑われる蛋白漏出性胃腸症(代表:腸リンパ管拡張症)では、低脂肪・高蛋白食を基本にしつつ、中鎖脂肪酸(MCT)を用いる栄養設計が推奨されます。

中鎖脂肪酸はリンパ系負担を減らす方向で説明されることが多く、成分栄養剤やMCT含有の栄養剤が有効とされるのは「病態に即した合理性」があります。

ここからが現場の“独自視点”ですが、MCT導入を「脂質を増やす」施策として扱うより、「長鎖脂肪酸(LCT)を減らしながら総エネルギーを落とさない」設計として扱うと、指示がブレにくくなります。

参考)腸リンパ管拡張症 – 01. 消化管疾患 – MSDマニュア…

例えば同じ脂質量でも、患者の食行動は「油を控える=カロリーも落ちる」になりやすいため、栄養士と一緒に“置き換え”の具体例(料理での油の扱い、間食、栄養補助食品の選び方)まで落とし込むと、再入院(浮腫の反復)を減らしやすいです。

参考)腸リンパ管拡張症 概要 – 小児慢性特定疾病情報センター

また、リンパ球減少や脂溶性ビタミン低下が絡むタイプでは、食事だけ整えても「感染しやすい」「創傷治癒が悪い」「骨・筋肉が落ちる」など別の出口で問題が出ることがあります。

そのため、栄養介入のKPIを「アルブミン値」単独にせず、便性状、体重、浮腫、胸腹水、リンパ球数、脂溶性ビタミンやCaなどをセットで追うと、治療の手応えをチームで共有しやすくなります。

(参考:日本語の権威性リンク/白色絨毛型の内視鏡所見・食事療法(MCT補充)などの実務がまとまる)

日本消化器病学会:腸リンパ管拡張症(白色絨毛型)PDF

(参考:診断の基本(α1アンチトリプシンクリアランス、蛋白漏出シンチグラフィ、原因疾患検索)が簡潔に整理)

メディカルノート:蛋白漏出性胃腸症

(参考:総説として病因分類・診断(α1AT)・治療(栄養、薬物、外科)・“H. pyloriとMénétrier病”の示唆まで読める)

日内会誌(1996):吸収不良症候群と蛋白漏出性胃腸症(PDF)

a-313※3 新外科学大系(全30巻) 第23巻B 小腸・結腸の外科2 1991年3月25日第1刷発行 中山書店 虫垂炎 蛋白漏出性胃腸症 非癌性結腸腫瘍