胆のう癌とは症状から治療まで医療従事者向け解説

胆のう癌とは症状から治療まで

胆のう癌の基本概念
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定義と特徴

胆嚢に発生する悪性腫瘍で、初期症状に乏しく進行が速い

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疫学的特徴

60-70歳代に好発し、女性に多く見られる消化器癌

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予後の特徴

早期発見が困難で進行例では5年生存率が低い

胆のう癌の基本的定義と特徴

胆のう癌とは、肝臓から分泌された胆汁を蓄える袋状の臓器である胆嚢に発生する悪性腫瘍です。胆汁が通る管(胆管)に発症する胆管がんや、十二指腸付近に位置する開口に発症する乳頭部がんと合わせて「胆道がん」と総称される場合が多くあります。胆のう癌は、周辺に肝臓・胆管・十二指腸・膵臓・大腸などの生命維持に重要な臓器が存在するため、消化器がんの中でも治療が困難とされています。

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胆道の周りには重要な血管や神経、リンパ節が豊富にあり、がん細胞が周囲の組織に広がりやすい特徴があります。初期症状が出にくいことも含め、胆道がんと分かったときにはがんがすでにかなり進行しているケースも多く見られます。また、胆のう癌は初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、早期発見が難しいがんの一つです。

参考)胆道がん(胆管がん・胆のうがん)

疫学的には、年齢とともに発症率は上がり、患者は70歳代と80歳代が最も多く、性別では胆のうがんは女性に多いのが特徴です。🔬 胆のう癌は比較的まれな疾患ですが、その予後の厳しさから医療従事者にとって重要な疾患の一つとなっています。

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胆のう癌の主要な原因と危険因子

胆のう癌の発症には複数の危険因子が関与しており、完全な原因解明はできていません。最も重要な危険因子の一つが胆石症の併存で、胆のうがんの症例の50~75%に胆石を合併することが分かっています。結石による慢性的な炎症や胆汁成分の変化ががんを誘発すると考えられています。

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体脂肪の増加、すなわち肥満が胆嚢癌の危険因子とされており、肥満は直接的に、あるいは胆石の形成を介して間接的に胆嚢癌の危険因子になっています。その他の危険因子として、膵・胆管合流異常、大きさが10mm以上のポリープ、年齢や性別、民族性、家族歴、細菌感染、喫煙、化学物質、多産などが報告されてきました。

参考)胆嚢癌の疫学とリスクファクター

特に膵・胆管合流異常は先天的な異常で、膵管と胆管は十二指腸の手前で合流しますが、合流の仕方が生まれつき異常な状態です。💡 興味深いことに、無症状の胆石症の方では発がん率が極めて低いことも判っており、実際に胆石が発がんに関与しているかの証拠は乏しいという側面もあります。

参考)胆のう・胆管の病気(胆石・胆のう炎・ポリープなど)

胆のう癌の症状と黄疸の出現機序

胆のう癌の初期段階では無症状であることの方が多く、進行して胆管にひろがることにより黄疸を起こしたり、十二指腸や大腸にひろがって腹痛や嘔吐を起こしたりすることがあります。最も典型的な症状として、みぞおちや右上腹部の痛み、体重減少、食欲不振、腹部膨満、腹部腫瘤などがありますが、どれも胆のう癌に特有の症状ではありません。

参考)胆のう癌(がん)

黄疸は胆のう癌の重要な症状の一つで、胆管の内部ががんによって狭窄したりつまったりして、黄色の色素であるビリルビンを含む胆汁が血液の中に流れ込むことにより起こります。黄疸の徴候として、白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる、尿の色が赤茶色になる、便の色が灰白色(白色便)になる、皮膚がかゆくなるなどの症状があります。

参考)https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/learn/results16/

進行に伴い、隣接する十二指腸や大腸へひろがると嘔気・嘔吐も現れます。また、胆のう癌が進行すると様々な症状が出現し、食欲低下、悪心嘔吐、体重減少、倦怠感などの症状が出現することがあります。⚠️ これらの症状が長く続く場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

胆のう癌の検査と腫瘍マーカー

胆のう癌の診断には、定期検診での腹部エコー検査が有用で、健康診断や人間ドックの検査項目には胆嚢癌の発見に有用な腹部エコー検査が含まれているため、定期的に受診することが重要です。画像診断として、腹部超音波検査CT検査、MRI検査などが行われ、これに加えて超音波内視鏡検査などの内視鏡を使った検査があります。
血液検査では、血中に含まれる胆汁色素のビリルビンや、胆道・肝臓の機能を示す酵素のALPとγ-GTP、腫瘍マーカー(CA19-9、CEA)の数値を測定します。胆嚢がんの腫瘍マーカーとしてはCEA、CA19-9があり、特にCA19-9は胆嚢がんを見つけるうえで大切な検査です。

参考)胆嚢がんの腫瘍マーカーは何がありますか? |胆嚢がん

CA19-9の上昇は胆嚢がんの患者の69%にみられると報告されており、CEAの上昇する胆嚢がんもありますが、その割合は18%とCA19-9ほど多くの割合で上昇がみられる腫瘍マーカーではありません。しかし、初期は血液検査で異常が出ないケースも多く、すべての胆嚢がんの患者で腫瘍マーカーの上昇がみられるわけではないため、血液検査に加えて、超音波検査のような画像検査も大切です。🔬 腫瘍マーカーの値だけでは判断できず、他の検査結果と併せて総合的に解釈されることが重要です。

参考)胆嚢がんの腫瘍マーカーを教えてください。 |胆道がん

胆のう癌の治療法と予後の実際

胆のう癌の治療の基本は手術療法で、がんを取り除くには手術が最も有効と考えられています。早期がんでは胆嚢を切除するだけで済むことがありますが、進行がんでは、がんの広がりに応じて肝切除、膵頭十二指腸切除、大腸切除などが追加されます。ステージⅠであれば胆嚢のみを摘出する単純胆嚢摘出術が標準で、腹腔鏡下で行えるため、術後の痛みが少なく、入院期間の短縮や早期の回復が可能です。

参考)胆嚢がん(消化器科外科)

手術ができない場合には、抗がん剤治療が行われます。様々な理由で手術を選択できないケースでは、抗がん剤による化学療法の道を選択しますが、胆のうがんに特異的な抗がん剤治療は確立されていません。手術適応のないⅣ期の症例に対して全身状態を考慮した上で化学療法を行います。

参考)胆道がん(胆管がん・胆のうがん)の治療と予防|オリンパス お…

予後については、早期胆嚢癌は切除されれば予後は良好で、Stage Iの5年生存率はおおむね90%を超えます。Stage IIでも切除後の5年生存率は60%程度ですが、Stage III以降の治療成績はきわめて不良であり、5年生存は稀です。

参考)胆嚢癌 – Wikipedia