ターナー症候群はいつわかるか
ターナー症候群の診断時期は個人によって大きく異なります。大規模な研究によると、診断年齢の中央値は約6歳で、約54%の患者が小児期に診断されています。出生前または乳児期に診断されるケースは約16~37%、思春期に診断されるケースは約20%とされています。
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症状の程度には個人差が大きく、明らかな身体的特徴や成長の遅れがない場合、思春期や成人期まで診断されない可能性もあります。モザイク型と呼ばれるタイプでは、正常な染色体を持つ細胞と異常な染色体を持つ細胞が混在しており、症状が軽度で診断が遅れることがあります。
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特に興味深い事実として、ターナー症候群は後天的に発症することはなく、生まれつきの染色体異常ですが、出生時には目立った特徴がないケースも多く存在します。そのため、3歳児健診や小学校の健診で初めて低身長が指摘され、精密検査の結果としてターナー症候群が判明するケースが最も多いとされています。
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ターナー症候群の出生前診断
出生前診断でターナー症候群が判明することもありますが、多くの場合は生後しばらく経ってから疑われます。妊婦健診のエコー検査で「通常より手足が短い」「胎児水腫」などの異常が指摘され、詳しい検査が行われることがあります。
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新型出生前診断(NIPT)を実施している一部の医療機関では、ターナー症候群も検査対象に含まれています。これは非確定検査で「ターナー症候群の可能性があるかどうか」が分かります。本当にターナー症候群かどうかを調べるためには、羊水検査などの確定診断が必要です。
羊水検査は妊娠15~16週頃に行われ、羊水を採取して胎児の遺伝子異常を調べる検査です。検査を受ける前には、臨床遺伝専門医から遺伝カウンセリングを受け、相談することができます。
注意点として、胎児がターナー症候群でも出生前検査では見つからない場合があります。これはモザイク型の場合であり、染色体の変化が検出されにくいためです。また、出生前診断でターナー症候群だと判明しても、生まれた後の症状の程度は予測できません。
ターナー症候群の新生児期の特徴
新生児期には、特徴的な身体所見からターナー症候群が疑われることがあります。生まれた直後は手足のむくみ(リンパ浮腫)や翼状頸(首と肩の間に広い皮膚がついている状態)など、見た目でターナー症候群が疑われるケースがあります。
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The lymphatic phenotype in Turner Syndrome(PubMed)
ターナー症候群患者のリンパ浮腫の特徴を分析した研究では、60%以上の患者で先天性リンパ浮腫が認められ、これが重要な診断指標となっています。
リンパ浮腫は手の甲や足の甲が腫れる症状で、リンパ液がたまりむくんだ状態です。乳幼児期には手足の甲にリンパの浮腫みが現れることがあり、数週間から数ヶ月続くこともありますが、多くの場合は自然と治まるため特別な治療は必要ありません。
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翼状頸は首筋に翼のような余分な皮膚がついており、首が太く見えるのが特徴です。約20%で心臓や大血管の異常(大動脈縮窄や大動脈弁の異常)が見られ、約30%で腎臓の異常(馬蹄腎など)が見られることがあります。
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これらの特徴が見られない場合は、身長が低いことや思春期が遅いこと、不妊などの症状からターナー症候群が発覚することも少なくありません。新生児期に明らかな症状がない場合、診断が遅れることも珍しくないのです。
ターナー症候群の小児期の診断
小児期には低身長が診断のきっかけとなることが最も多く、3歳児健診や小学校における健診で発見されるケースが多いとされています。ターナー症候群の子どもは、出生時に正常下限程度の身長であっても、小児期に正常女性の成長曲線から次第に離れていきます。
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3~5歳頃から同年代と比べて身長の伸びに差が出てくることがあり、これが最初の発見の契機となります。思春期以降の成長スパートが見られず、平均最終身長はターナー症候群でない女性より約20cm低くなります。無治療の場合、成人では平均138cm程度になるとされています。
ターナー症候群の子どもの多くが中耳炎を発症し、放置すると難聴のリスクがあるため、早めに耳鼻科を受診することが推奨されています。このような合併症の存在も、診断の手がかりとなることがあります。
低身長以外にも、特徴的な身体所見として盾状胸、外反肘、典型的な顔貌などが見られることがあります。これらの症状が複数認められた場合、ターナー症候群を疑い染色体検査を行うことになります。
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ターナー症候群の思春期以降の発見
思春期になっても二次性徴が見られない場合、ターナー症候群が疑われます。原発性無月経(初経が来ない)や二次性徴の欠如が主な症状です。ターナー症候群の女児の90%では卵巣が結合組織に置き換わり、卵子の発育が見られず、結果として不妊症になります。
一般に、成長しても月経が見られず、思春期に生じるはずの乳房、腟、子宮、陰唇の変化が見られません。青年期に入っても低身長のままで、月経が来ず思春期の遅れが見られて初めて、この症候群が疑われる場合もあります。
成人期になって不妊症の原因精査で初めてターナー症候群が発見されるケースもあります。特にモザイク型の場合、症状が軽度で思春期や成人期まで診断されない可能性があります。
思春期以降に診断される場合でも、適切なホルモン補充療法により二次性徴を誘導し、生活の質を向上させることが可能です。早期発見・早期治療が重要ですが、診断が遅れた場合でも治療の選択肢は残されています。
ターナー症候群の染色体検査と確定診断
ターナー症候群の可能性が疑われた場合、採血をして染色体検査を行います。2本のX染色体のうち1本が完全にあるいは一部が欠けていたら、ターナー症候群の診断が確定します。
診断には血液細胞の染色体検査を行い、異常な染色体を持つ細胞と正常な細胞が混在する状態(モザイク)を正確に評価するために、20個以上の細胞の染色体分析を行います。通常は末梢血リンパ球を用いて核型分析(Gバンド法)が行われます。
より詳しい検査方法として、FISH法(蛍光in situハイブリダイゼーション法)では特定の染色体領域を高感度で検出し、低頻度モザイクの同定に有用です。マイクロアレイ染色体検査では微細な欠失や重複を検出可能で、非典型例の診断補助に使用されます。
血液を用いた染色体検査で異常が見つからなかった場合、モザイク・ターナー症候群である可能性を考え、皮膚の細胞や性腺細胞など別の組織を用いた染色体検査が行われる場合もあります。染色体検査の精度は100%ではなく、場合によってはWCP解析などのより詳しい遺伝子検査が行われます。
病気自体の診断とともに、低身長では成長ホルモン分泌刺激試験、心疾患や腎奇形では超音波検査、性腺機能低下症では女性ホルモン(性腺刺激ホルモン)の検査なども行われます。心臓の異常がないか調べるため、心エコー検査や心臓のMRI検査を行うとともに、心臓の異常に対するスクリーニングを定期的に継続します。