高hdl血症と治療と原因とCETP欠損症

高hdl血症 治療

高hdl血症の診療で最初に押さえる要点
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結論:HDL値「単独」で判断しない

高HDLは必ずしも保護的とは限らず、原因(遺伝・飲酒・薬剤・肝胆道など)と、LDL-C/non-HDL-C・喫煙・糖尿病など全体の動脈硬化リスクで治療方針を組み立てます。

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まずやる:二次性の除外

問診(飲酒量・サプリ/薬剤)+採血(肝胆道系、甲状腺など)で、二次性高HDLを拾い上げます。原因が取れれば「治療」は生活・薬剤調整で完結することが多いです。

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治療の主役:LDL-C/non-HDL-C管理

極端な高HDLでは動脈硬化評価を検討し、所見があればLDL-C/non-HDL-C、血圧、血糖、喫煙をより厳格に管理します。

高hdl血症 治療の考え方:LDLとnon-HDLを優先

 

高hdl血症は、一般的に「症状がない」ことが多く、HDL値だけを理由に薬で下げるという発想は基本になりにくい領域です。極端な高HDLが必ずしも動脈硬化を抑えるとは限らず、HDLの機能異常(質の問題)や遺伝的背景が絡む可能性があるため、まずは“動脈硬化性疾患リスク全体”で評価する姿勢が重要です(HDL高値でも動脈硬化が増える可能性がある旨の記載)。

実務上の「治療の主役」は、LDL-Cやnon-HDL-C、血圧、糖代謝、喫煙などの可介入リスクです。日本動脈硬化学会の公開Q&Aでも、HDL-Cが極めて高値の患者では非侵襲的検査による動脈硬化評価を検討し、所見がある場合にLDL-C/non-HDL-Cや糖尿病高血圧・喫煙の管理をよりしっかり行う必要がある、と整理されています。

参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_20938

ここで見落としやすいのが、検査値の「見た目の良さ」に引っ張られることです。例えば総コレステロールが高いがHDLが高いから安心、と短絡しがちですが、随時採血やTG高値ではFriedewald式が使えないなど評価上の落とし穴があります(non-HDL-Cの活用や注意点の記載)。

医療従事者向けの言い方にすると、狙いは「HDL-C低下」ではなく、「残余リスクを含む包括的リスク低減」です。高HDLの背景に“機能しないHDL”が潜む場合、見かけのHDL-Cは高いのに逆転送系が回っていないことがあり得るため、値ではなく臨床像で判断します(HDLの量より質=機能が重要という記載)。

高hdl血症 治療と原因:CETP欠損症と飲酒と薬剤

高hdl血症を見たら、まず「二次性(後天性)」と「原発性(遺伝性)」を切り分けます。二次性として典型的なのは飲酒で、慢性大量飲酒がCETP蛋白活性を低下させ、高HDL-C血症を呈しうることがまとめられています。薬剤も重要で、検査会社の解説ではステロイドホルモン、インスリン、フィブラート系、ニコチン酸、エストロゲン製剤、スタチンなどがHDL-C上昇に関与し得る、と列挙されています。

原発性の代表がCETP欠損症で、難病情報センターではCETPが欠損するとHDLが著増し、LDLの質的異常を来す、と説明されています。さらに同ページでは、ホモ接合体でHDL-C 150–250 mg/dL、ヘテロ接合体で50–150 mg/dLを呈し得る、という数値感も提示されています。

参考)コレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症(平成21年度…

「意外なポイント」として押さえておきたいのは、CETP欠損症は“治療法がない”と明記されている点です(特異的治療法は今のところない)。つまり、原因がCETP欠損症であっても、対応は(1)他リスクの管理、(2)必要なら動脈硬化の評価、(3)家族歴や遺伝形式を踏まえた説明、に収束します。

また、CETP活性低下はHDLが増えるだけでなくHDLが大粒子化する、という機序も整理されています。この「粒子の性状変化」が、いわゆる“HDLは高いほど良い”という単純な図式を崩す背景になります(CETP活性低下→HDL増加と大粒子化の記載)。

参考)高HDLコレステロール血症(高HDL血症)とは?原因・リスク…

臨床では、問診で「飲酒量(量×頻度×期間)」と「薬剤・ホルモン剤・サプリ」をまず固め、採血異常(肝胆道系、甲状腺など)や併存疾患の情報をセットで判断します。二次性が疑わしい場合、原因の是正(節酒、薬剤見直し)が最短の“治療”になることが多い、というのが実務的な落としどころです。

参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/143.html

高hdl血症 治療の検査:直接法とFriedewald式と注意点

高hdl血症の診療で地味に重要なのが「検査法と計算式の限界」を理解しておくことです。脂質評価ではLDL-CをFriedewald式で計算する運用が長く使われてきましたが、随時検体やTG高値(例:TG≧400 mg/dL)では式が使えない、と日本動脈硬化学会のQ&Aに明確に書かれています。この状況でLDL-Cだけに頼ると、リスク評価が歪みます。

そのため、食後採血やTG高値ではnon-HDL-C(TC−HDL-C)を用いる、という整理がされています。高HDLではTCも上がりやすく、non-HDL-Cを計算すると「動脈硬化惹起性の総量」が見えやすくなるため、健診フォローでも実装しやすい手です(non-HDL-Cの位置づけの記載)。

さらに、極端な高HDLでは「LDL直接法がうまく使えない場合がある」点も注意が必要です。動脈硬化学会のQ&Aでは、直接法は空腹時でも随時でも測定できるが、著明な高HDL-C(例:>120 mg/dL)ではLDLの組成も異常となるため直接法が使用できない場合がある、と具体例として挙げられています。この場合、「計算式を使うのがよい」とも記載されており、検査値の読み替えが必要です。

検査値の“読み替え”は患者説明にも直結します。例えば「LDLが測れない=異常」ではなく、「測定法の前提が崩れている可能性があるので、条件を整えて再評価する」という説明の方が合意形成しやすいです。高HDLで再検を組むなら、空腹時採血に寄せ、TGや肝機能、必要に応じて甲状腺機能も一緒に取る、が実務的です(随時と空腹時の扱い、non-HDL-Cの説明)。

高hdl血症 治療の精査:動脈硬化評価と非侵襲的検査

高hdl血症で「精査が必要か」を決める軸は、HDLの高さそのものより、①極端な高値か、②家族歴/遺伝性を疑うか、③他リスクが集積しているか、④既に動脈硬化性疾患が疑われる症状・所見があるか、です。日本動脈硬化学会の公開Q&Aでは、極端な高HDL-Cでは冠動脈疾患も死亡も増加することが報告されている、としたうえで、非侵襲的検査を用いた動脈硬化評価を検討するとしています。

非侵襲的検査としては頸動脈エコーや心臓CTなどが例示され、動脈硬化所見があればLDL-C/non-HDL-Cや糖尿病、高血圧、喫煙の管理をより厳格に行う必要がある、と具体的に書かれています。つまり「高HDLだから様子見」ではなく、「高HDLをきっかけに動脈硬化の有無を点検し、あれば標準的な二次予防に近い管理へ寄せる」という流れになります。

ここでの“意外性”は、HDLを上げること自体が目的化していた時代の名残が、現場の説明に残っている点です。近年は、HDL-Cの量だけではリスクを説明しきれず、HDLの機能(コレステロール引き抜き能など)が重要、という理解が明確になっています。高HDLの患者に「善玉だから安心」とだけ伝えるのは、逆にアドヒアランス(禁煙・降圧・血糖・LDL管理)を落とすリスクがあるため、説明設計が“治療”の一部になります。

高hdl血症 治療の独自視点:説明と生活指導の失敗パターン

高hdl血症は「治療不要」と片付けられやすい一方で、患者の行動変容を阻害しやすい、という意味でコミュニケーション上の難所です。MSDマニュアル(一般向け)でも高HDLコレステロール高値について“治療の必要はありません”と明記されており、患者がネット検索でこの表現に触れる確率は高いです。ただし、これは“HDLを下げる治療を基本的に要しない”という意味であって、動脈硬化リスク管理まで不要という意味にはなりません(極端な高HDLでのリスク指摘や管理の必要性)。

現場で起きがちな失敗パターンは次の3つです。

  • 🧠「善玉だからOK」と言い切り、LDL-C/non-HDL-Cや喫煙・血圧の話が薄くなる(HDL高値でも動脈硬化が増える可能性の指摘)。​
  • 🍺 飲酒の影響を“適量なら健康”の一般論で終わらせ、慢性大量飲酒がCETP活性を低下させ高HDLの原因になり得る点を確認しない(飲酒によるCETP活性低下の記載)。​
  • 🧪 検査の条件(随時/空腹時)やLDL測定法の限界に触れず、患者が「数値が良い/悪い」だけで理解してしまう(Friedewald式の限界や直接法の注意点)。​

独自視点として提案すると、高HDLの説明は「価値の付け替え」をすると通りやすいです。すなわち、①HDLは“量”だけでなく“質”がある、②高すぎるHDLは原因がある場合がある、③必要なら動脈硬化を画像で確認し、④治療はHDLを下げるより、LDL/non-HDLや生活習慣の是正でイベントを減らす、という順序で説明します(HDLの機能が重要、極端な高HDLで評価検討の記載)。

このとき、患者の納得感を上げる一文として「過ぎたるは及ばざるがごとし」という表現は使いやすいです。実際、学術的な解説でも“著明な高HDLは慎重に観察し、必要に応じて動脈硬化性疾患の存在について精査する”というニュアンスでまとめられています。

(参考:高HDLの臨床的意義、原因(CETP欠損症・飲酒・薬剤)、数値の目安がまとまっている)

シー・アール・シー|高HDLコレステロールの臨床的意義を教えてください。

(参考:CETP欠損症の概要、HDL-Cの範囲、治療法(特異的治療法なし)が一次情報として読める)

コレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症(平成21年度…

(参考:極端な高HDLでの動脈硬化評価、LDL直接法の注意点、non-HDLの扱いなど実務的Q&Aが網羅的)

https://www.j-athero.org/jp/publications/si_qanda/

診断と治療ABC 高LDL-C血症・低HDL-C血症 2015年 01 月号 [雑誌]: 最新医学 増刊