多発性筋炎・皮膚筋炎の症状と診断

多発性筋炎・皮膚筋炎の症状

多発性筋炎・皮膚筋炎の主な症状
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筋力低下

近位筋の左右対称性の筋力低下が特徴的で、階段昇降や立ち上がり動作が困難になります

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特徴的な皮疹

ヘリオトロープ疹やゴットロン丘疹など、診断の重要な手がかりとなる皮膚症状が現れます

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間質性肺炎

約30〜40%の患者で合併し、咳や息切れなどの呼吸器症状を引き起こします

多発性筋炎の初期筋力低下症状

多発性筋炎・皮膚筋炎の初期には、太ももや二の腕、肩、首など身体に近い部分の筋肉(近位筋)に左右対称の筋力低下が緩徐に進行します。この筋力低下は徐々に現れるため、発症時期を特定できないことが多いんです。

参考)皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/4079″ target=”_blank”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/4079amp;#8211; 難病情…


太ももの筋力が低下すると、階段を昇るのが困難になったり、しゃがんだ姿勢から立ち上がりにくくなったりします。また、腕や肩の筋力低下により、洗濯物を干す動作や髪を結ぶ動作、高い所の物を取る動作が困難になるんですよ。

参考)多発性筋炎・皮膚筋炎(polymyositis / derm…


首の筋力が低下すると、頭を枕から持ち上げにくくなったり、寝返りが打ちにくくなったりする症状が現れます。さらに進行すると、喉の筋力低下により嚥下障害が起こり、物を飲み込みにくくなったり、むせやすくなったりすることもあります。

参考)皮膚筋炎・多発性筋炎|東大病院アレルギーリウマチ内科

多発性筋炎・皮膚筋炎の特徴的な皮膚症状

皮膚筋炎では、ヘリオトロープ疹とゴットロン丘疹という2つの特徴的な皮膚症状が診断の重要な手がかりになります。​
ヘリオトロープ疹は、上まぶたが赤く腫れぼったくなる皮疹で、紫紅色を呈することが特徴とされていますが、日本人では紫色になることはほとんどありません。この名称は、紫色の花を付けるヘリオトロープという植物に由来しているんですよ。

参考)多発性筋炎・皮膚筋炎 の症状や原因は?


ゴットロン丘疹は、手指の関節背側(手の甲側)の表面ががさがさとして盛り上がった紅色の丘疹です。特に手指の第二関節や手指の付け根の関節の伸側に現れます。手指以外にも、肘や膝、足首などの関節の伸側面に生じた紅斑はゴットロン徴候と総称されています。​
その他の皮膚症状として、前胸部にV字状に出現する「V徴候」、首から肩の後ろにかけて現れる「ショール徴候」、大腿の側面に出現する「ホルスター徴候」などがあり、これらは日光が当たる部分や物理的に擦れる部分に起きやすい特徴があります。皮疹はかゆみを伴うことが多く、初めはかゆみだけで始まる方もいらっしゃいます。​

多発性筋炎・皮膚筋炎の間質性肺炎合併症状

多発性筋炎・皮膚筋炎の約30〜40%の患者さんに間質性肺炎が合併し、注意が必要な合併症の一つです。間質性肺炎は通常の細菌性肺炎とは異なり、自己免疫が肺を攻撃することで起こります。​
間質性肺炎の症状としては、喉の痛みや痰などがないのに頑固に咳が出たり、運動時の息切れや呼吸困難などが現れます。特に筋炎症状が乏しいのに皮膚症状が強い皮膚筋炎、いわゆる無筋症性皮膚筋炎では、約50%の症例に急速進行性間質性肺炎を伴い、致死的となることが多いんです。

参考)http://www.med.niigata-u.ac.jp/nephrol/pdf/achievement/research_achievement/2013/09_sousetsu/2013-010.pdf


抗MDA5抗体陽性の患者さんでは、急速に進行する間質性肺炎が特徴的で、早期の積極的な治療が必要とされています。診断には胸部レントゲン検査や胸部CT検査が用いられ、肺活量の検査で肺機能を評価します。

参考)https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/pmdm/

多発性筋炎・皮膚筋炎の診断基準と検査

多発性筋炎・皮膚筋炎の診断には、1975年に発表されたBohanとPeterの診断基準、米国および欧州リウマチ学会の分類基準、厚生労働省の改訂診断基準が参考にされています。診断で重視されるのは、皮膚症状の有無、筋肉症状の有無、自己抗体の有無の3点です。

参考)炎症性筋疾患のポイント—多発性筋炎・皮膚筋炎を中心に— – …


血液検査では、筋肉の障害を示す筋原性酵素(クレアチンキナーゼやアルドラーゼ)の上昇が確認されます。また、筋炎特異的自己抗体として、抗ARS抗体、抗Mi-2抗体、抗TIF1γ抗体、抗MDA5抗体などが測定され、それぞれの抗体によって臨床症状が異なることが知られているんですよ。

参考)疾患から診療科を探す(当院で診療可能な疾患か否かは、事前にお…


抗ARS抗体では間質性肺炎や皮膚症状、関節炎、レイノー現象、発熱が特徴的です。抗TIF1γ抗体やNXP-2抗体陽性の患者さんでは、悪性腫瘍の合併が多いことが知られており、診断時には上部消化管内視鏡や便潜血検査、婦人科や乳腺腫瘍の検索が適宜行われます。

参考)多発性筋炎・皮膚筋炎(PM・DM)


筋電図検査では、微量な電気を筋肉に流してその反応を測定し、筋力低下の原因が神経ではなく筋肉にあることを確認します。筋生検では、皮膚を切開して取り出した筋肉の一部を顕微鏡で観察し、炎症を起こすリンパ球などの細胞が筋肉内に多数見られることを確認するんです。​

多発性筋炎・皮膚筋炎診断時の注意すべき鑑別点

多発性筋炎・皮膚筋炎の診断において、他の疾患との鑑別が重要になります。同じ家族の構成員に筋力低下がある場合には、まず筋ジストロフィーのような遺伝性の病気を疑う必要があるんです。​
皮膚症状については、ヘリオトロープ疹が顔の紅い皮疹として目立ちますが、鼻唇溝や頭皮などにも紅斑が現れ、脂漏部位であることから脂漏性皮膚炎と誤った診断を受けていることもあります。正確な診断のためには、特徴的な皮膚症状の分布パターンを理解することが大切ですよ。

参考)多発性筋炎・皮膚筋炎 関連疾患 一般社団法人日本血液製剤協会


皮膚筋炎の約6%の症例では、ヘリオトロープ疹もゴットロン徴候もいずれも認めないケースが存在しています。このような症例では、他の皮膚所見や筋症状、血液検査所見を総合的に評価する必要があります。

参考)コラム


また、典型的な皮膚症状があるものの筋肉の炎症がないか軽症のケースもあり、これは無筋症性皮膚筋炎と呼ばれます。無筋症性皮膚筋炎は間質性肺炎を合併することが多く、特に注意が必要な病型なんです。

参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%AD%8B%E7%82%8E/contents/201111-001-XY


参考として、難病情報センターの公式情報が詳しい解説を提供しています。皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50) – 難病情報センター
医療従事者向けの専門的な診断基準については、慶應義塾大学病院の情報も参考になります。多発性筋炎・皮膚筋炎 – KOMPAS