多発性筋炎リハビリテーションガイドライン

多発性筋炎リハビリテーションガイドライン

多発性筋炎リハビリテーション概要
🏥

基本病態の理解

自己免疫性炎症性疾患による筋力低下と機能障害

📋

治療開始基準

血清CK値の低下確認後の段階的リハビリ導入

💪

運動療法の実践

有酸素運動と低負荷筋力トレーニングの組み合わせ

多発性筋炎の病期とリハビリ開始時期

多発性筋炎のリハビリテーションでは、病期に応じた適切なタイミングでの介入が重要です 。急性期においては、筋肉の炎症が激しいため、過度な運動や筋力トレーニングは筋障害を悪化させる可能性があります 。そのため、リハビリ開始の判断基準として血清CK(クレアチンキナーゼ)値の変化が重視されています 。

参考)皮膚筋炎・多発性筋炎のリハビリテーション医学・医療

リハビリテーション開始の具体的な基準は、ステロイド投薬後に血清CK値が低下・正常値近くになったタイミングとされています 。血清CK値は筋肉の細胞が壊れる際に血中に漏れ出る酵素で、この値の低下は筋肉の炎症が収まってきたことを示すバイオマーカーとして機能します 。治療薬維持期には長期間のリハビリテーション治療が必要となることがあり、筋力回復には1年以上を要する症例も報告されています 。

参考)多発性筋炎のリハビリに禁忌はある?ガイドラインに沿った運動療…

多発性筋炎における運動療法の基本原則

多発性筋炎のリハビリテーションにおける運動療法は、有酸素運動と筋力トレーニングの2つの要素から構成されます 。有酸素運動としては、主にウォーキングが推奨されており、急性期の安静により低下した歩行能力の回復を目的とします 。運動強度の目安は「疲れない程度」で、1日15分〜30分程度のウォーキングを週3回ほど、息が上がらない程度のペースで実施することが推奨されています 。
筋力トレーニングについては、多発性筋炎患者では負荷の高い運動は筋肉の炎症を引き起こす恐れがあるため、低負荷での運動が基本となります 。補助具を利用したトレーニングや自重を活用した軽度の筋力トレーニングが推奨されており、過度な負荷をかけない配慮が重要です 。多発性筋炎診療ガイドライン2020年暫定版では、リハビリテーションの最適な負荷については明確な基準がまだ確立されていないとしながらも、治療開始早期からのリハビリテーション実施が推奨されています 。

参考)http://www.aid.umin.jp/wp-aid/wp-content/uploads/2024/03/PMDMGL2020.pdf

多発性筋炎リハビリの治療効果評価と継続期間

多発性筋炎のリハビリテーション効果の評価には、血清CK値と筋力の両方が重要な指標として活用されています 。血清CK値は筋炎の病勢を反映する客観的な検査値として、治療効果のモニタリングに有用とされています 。一方、徒手筋力テスト(MMT)による筋力評価は、実際の機能改善を直接評価できる指標として重視されています 。
治療継続期間については、筋力の回復には1年以上を要することがあり、治療薬維持期に長期間のリハビリテーション治療が必要となる症例も存在します 。国際筋炎評価臨床研究グループ(IMACS)の改善基準では、筋力、筋逸脱酵素、医師による全般評価、患者による全般評価、身体機能、筋外症状評価の6項目中3項目以上に20%以上の改善が見られることが治療効果の判定基準とされています 。特に筋力については最も重視される項目であり、筋力悪化が認められる場合は改善とみなされないという厳格な基準が設けられています 。

多発性筋炎ステロイドミオパチーとの鑑別診断

多発性筋炎の治療中に問題となるのが、ステロイドミオパチーとの鑑別診断です 。長期間の副腎皮質ステロイド投与後に、CK値が正常または同程度の値を示しながら筋力低下が進行する場合にステロイドミオパチーが疑われます 。ステロイドミオパチーの発症リスクは、一般的にプレドニゾロン相当で40-60mg/日の投与により2週間で生じ、1ヶ月の投与では一定の程度の筋力低下を認めることが報告されています 。
鑑別診断における重要な検査所見として、筋電図(EMG)があります。ステロイドミオパチーでは筋原性変化を認める一方、安静時放電は認めないため、筋炎の再燃との鑑別に有用です 。また、24時間尿中クレアチン排泄の増加や、筋生検でのtype 2線維の選択的萎縮も診断の参考になります 。骨格筋MRIの脂肪抑制T2強調画像で変化を認める場合には筋炎の再燃を疑いますが、過度の運動負荷によっても同様の所見が生じるため、十分な安静後の評価が必要です 。

多発性筋炎リハビリの最新エビデンスと今後の展望

近年の研究では、多発性筋炎患者に対する高強度筋力トレーニングが筋力低下を改善し、炎症や酸化ストレスを軽減する可能性が報告されています 。従来は筋肉の炎症増悪を懸念して運動トレーニングが敬遠されてきましたが、適切な運動療法は抗炎症効果と抗酸化効果をもたらすことが示唆されています 。しかし、その分子機序や至適運動強度については科学的根拠が不足しており、臨床での積極的な運動療法実施には慎重な検討が必要です 。

参考)KAKEN href=”https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20J01754/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20J01754/amp;mdash; 研究課題をさがす

多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025年版が発刊され、若年性を含む内容に拡充されるなど、最新のエビデンスに基づいた診療指針の更新が進んでいます 。理学療法の分野では、これまでの歴史的変遷を踏まえ、個別化された運動プログラムの重要性が強調されています 。今後は、患者の病期、重症度、合併症に応じたより詳細なリハビリテーションプロトコルの確立が期待されています 。間質性肺炎や心筋障害などの筋外合併症に対するリハビリテーションアプローチについても、さらなる研究の蓄積が必要とされています 。

参考)m3電子書籍

多発性筋炎の運動抗炎症メカニズム解明研究

KAKEN href=”https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20J01754/”>https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20J01754/amp;mdash; 研究課題をさがす

多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2020年暫定版

http://www.aid.umin.jp/wp-aid/wp-content/uploads/2024/03/PMDMGL2020.pdf

多発性筋炎リハビリ解説記事

多発性筋炎のリハビリに禁忌はある?ガイドラインに沿った運動療…