前立腺肥大症は、加齢に伴って前立腺が肥大化し、尿道を圧迫することで様々な排尿障害を引き起こす疾患です。
病態生理
前立腺肥大症の正確な発症メカニズムは完全には解明されていませんが、主に以下の要因が関与していると考えられています:
- 加齢に伴うホルモン環境の変化(特にテストステロンとジヒドロテストステロン)
- 慢性炎症
- 免疫応答の亢進
疫学
- 50歳以上の男性に多く見られ、年齢とともに発症率が上昇します。
- 70歳以上の男性の約70%以上が前立腺肥大症を有するとされています。
リスク因子
- 加齢
- 遺伝的要因
- 生活習慣病(肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病)
- 食生活(高コレステロール食)
症状
主な症状には以下のようなものがあります:
- 残尿感
- 排尿後滴下
- 昼間頻尿
- 尿意切迫感
- 尿線途絶
- 尿勢低下
- 腹圧排尿
診断
診断には以下の検査が用いられます:
- 自覚症状の評価(国際前立腺症状スコア:IPSS)
- 直腸内指診
- 尿検査
- 尿流測定
- 残尿測定
- 前立腺超音波検査
- 血清PSA(前立腺特異抗原)測定
治療
治療方針は症状の程度や患者の状態に応じて決定されます:
- 経過観察:軽症例
- 薬物療法:
- α1受容体遮断薬
- 5α還元酵素阻害薬
- PDE5阻害薬
- 抗コリン薬(過活動膀胱合併例)
3. 手術療法:
- 経尿道的前立腺切除術(TURP)
- レーザー治療(HoLEP、PVP、CVPなど)
- 前立腺動脈塞栓術
合併症
進行すると以下のような合併症のリスクが高まります:
- 尿閉
- 血尿
- 膀胱結石
- 尿路感染症
- 腎後性腎不全
前立腺肥大症は、高齢男性の生活の質に大きな影響を与える疾患であり、適切な診断と治療が重要です。症状の程度や患者の全身状態を考慮し、個々の症例に応じた最適な治療方針を選択することが求められます。