筋原性眼瞼下垂症 原因 診断 治療
筋原性眼瞼下垂症 原因疾患と病態生理
筋原性眼瞼下垂症は、眼瞼挙筋や前頭筋など「まぶたを挙上する骨格筋」そのものの機能低下によって生じる眼瞼下垂であり、神経原性や腱膜性とは根本機序が異なります。
日常診療では「筋原性眼瞼下垂症」という病名を単独で付けるよりも、背景にある筋疾患名(進行性外眼筋麻痺、眼咽頭型筋ジストロフィーなど)を併記して評価することが重要です。
代表的な原因としては、進行性外眼筋麻痺(chronic progressive external ophthalmoplegia: CPEO)、眼咽頭型筋ジストロフィー、ミトコンドリア脳筋症、炎症性ミオパチー、薬剤性ミオパチーなどの全身性筋疾患が挙げられます。
これらの疾患では、眼瞼挙筋だけでなく外眼筋や四肢近位筋、嚥下筋なども障害されることが多く、眼瞼下垂が「筋疾患の入口症状」として単独で出現することで、見逃しや診断遅延につながることがあります。
先天性筋原性眼瞼下垂症の一部は、遺伝性筋疾患や先天性外眼筋線維症に包含され、出生・乳児期から高度の下垂を呈することがあります。
参考)先天性外眼筋線維症による眼瞼下垂症の1例 (形成外科 65巻…
後天性では、中高年以降に緩徐進行性の眼瞼下垂と易疲労感で発症し、加齢性・腱膜性と誤認されるケースも少なくないため、臨床像と家族歴の丁寧な聴取が不可欠です。
参考)眼瞼下垂の「詳しい原因」と「手術のやさしい解説」|日本医科大…
筋原性眼瞼下垂症 臨床症状と身体診察のポイント
筋原性眼瞼下垂症では、瞼裂狭小化、MRD(margin reflex distance)低下、前頭筋代償による皺額、下顎挙上位などの典型的な外表所見に加え、眼球運動制限や複視の有無を必ず確認する必要があります。
進行性外眼筋麻痺では、上下左右いずれの方向への眼球運動も徐々に制限され、頭位を動かして対象物を追従する「頭部代償」が目立つようになります。
診察場面では、以下のような簡便なチェックリストが有用です。
- 眼瞼挙筋機能(levator function)の定量評価(前額固定して上下視させる)。
参考)眼瞼下垂 症状|東京 みやび形成外科 【公式】 保険適用 片…
- 眼球運動の全方向チェックと複視の自覚の有無。
- 前頭筋の過活動、下顎挙上位、頸部伸展の有無。
参考)眼瞼下垂 – 東北公済病院(こうさいびょういん) 仙台市総合…
- 四肢近位筋力、嚥下障害、構音障害、呼吸苦などの全身症状。
意外と見落とされやすい所見として、筋原性眼瞼下垂症では「日内変動が乏しい」点が挙げられます。
重症筋無力症では夕方に下垂が悪化することが多いのに対し、ミオパチーによる眼瞼下垂は比較的終日一定の程度で持続し、アイスパックテストや抗コリンエステラーゼ負荷でも改善に乏しいことが診断のヒントになります。
視機能面では、強い下垂により上方視野が障害されるほか、乳幼児では弱視や斜視を合併しやすいため、眼科的フォローアップと視能訓練士との連携も重要となります。
医療従事者向けには、単に「見づらそうかどうか」だけでなく、視野検査・写真記録・動画記録などで経時的変化を客観的に残すことが治療介入のタイミングを判断するうえで役立ちます。
筋原性眼瞼下垂症 鑑別診断と検査戦略
筋原性眼瞼下垂症の診断では、まず腱膜性眼瞼下垂、神経原性眼瞼下垂、重症筋無力症との鑑別が必須です。
腱膜性ではコンタクトレンズ長期装用や加齢、外傷などの既往が多く、挙筋機能は比較的保たれ、眼球運動制限はみられないことが多いのに対し、筋原性では挙筋機能低下と外眼筋障害が併存しやすい点が鑑別のポイントです。
神経原性眼瞼下垂(動眼神経麻痺、ホルネル症候群など)は、瞳孔異常や眼位異常、眼球運動方向の偏りなどを伴いやすく、頭痛・眼痛などの随伴症状も手がかりとなります。
重症筋無力症では、日内変動、易疲労性、他筋群の筋力低下、テンシロン試験や抗AChR抗体陽性などが特徴であり、筋原性眼瞼下垂症と紛らわしい場合には、EMGや反復刺激試験を組み合わせて評価します。
検査としては、以下のようなステップを意識すると整理しやすくなります。
- 基本評価:視力・視野、眼位、眼球運動、挙筋機能、写真記録。
- 血液検査:CK、LDH、ミオグロビン、甲状腺機能、自己抗体(軽いスクリーニング)。
- 神経生理学的検査:針筋電図、神経伝導検査、必要に応じて反復刺激試験。
- 画像検査:頭部MRIで脳幹病変や動眼神経病変の除外、眼窩MRIで外眼筋の萎縮や線維化の評価。
- 筋生検・遺伝学的検査:病型が不明な先天性ミオパチーやミトコンドリア病が疑われる場合に検討。
あまり知られていない点として、先天性外眼筋線維症や一部のミトコンドリア病では、眼窩MRIで外眼筋や眼瞼挙筋の選択的菲薄化・脂肪変性が見られ、それ自体が診断の強い根拠となることがあります。
また、同一家系内で「ものが見にくいが年齢のせい」と放置されている軽度眼瞼下垂者が潜在的に存在することがあり、家族歴聴取と家族スクリーニングが、遺伝性ミオパチー診断の糸口となりえます。
筋原性眼瞼下垂症 治療方針と手術適応
筋原性眼瞼下垂症の治療では、まず原疾患が治療可能かどうかを評価し、内科的治療と形成外科的治療の役割分担を明確にすることが大切です。
炎症性ミオパチーや薬剤性ミオパチーなど、一部の疾患ではステロイド・免疫抑制薬の導入や原因薬剤中止により眼瞼下垂が改善しうるため、安易に手術に進まず、原因検索と全身評価を優先します。
一方で、非可逆的な筋線維変性や線維化が主体となる進行性外眼筋麻痺や先天性外眼筋線維症などでは、原疾患の根治が困難であり、残存視機能とQOL向上を目的とした形成外科的介入が重要な選択肢となります。
手術適応は、日常生活での視野障害、頸部・肩こりなどの二次的症状、職業上の支障、安全運転への影響、小児では弱視や発達への影響などを総合的に評価して判断します。
形成外科領域では、挙筋機能の残存程度に応じて術式が選択されます。
- 挙筋機能中等度以上:挙筋前転術、挙筋短縮術など、残存筋力を最大限活用する術式。
- 挙筋機能高度低下:前頭筋吊り上げ術(大腿筋膜やシリコンロッドによるスリング)を選択し、前頭筋による代償挙上を利用。
- 片眼高度下垂で対側が良好な場合:Heringの法則を踏まえた両側手術の検討も重要。
筋原性の場合、病勢が進行性であることが多いため、「今ちょうどよい挙上量」では数年後に再び機能低下し、再手術が必要になる可能性があります。
そのため、術前には疾患の進行速度や予後を担当内科と共有し、患者と家族に再手術の必要性や長期的な経過観察の必要性を丁寧に説明しておくことが望まれます。
参考)眼瞼下垂
筋原性眼瞼下垂症 多職種連携と長期フォローの実際(独自視点)
筋原性眼瞼下垂症は眼科・形成外科だけでなく、神経内科、リハビリテーション科、耳鼻咽喉科、呼吸器内科など複数診療科にまたがる全身疾患の局所表現型であることが少なくありません。
そのため、単に「まぶたを上げる」だけでなく、嚥下機能評価、呼吸機能評価、睡眠時呼吸障害のスクリーニング、リハビリ指導などを含む多職種連携が、長期的な患者アウトカムに大きく影響します。
実臨床では、以下のような多職種連携モデルが有用です。
- 神経内科:原疾患の診断・薬物療法・全身管理、遺伝カウンセリングの窓口。
- 形成外科/眼形成外科:眼瞼下垂の手術戦略立案と術後フォロー、再手術のタイミング評価。
- 眼科・視能訓練士:視力・視野の評価、小児の弱視・斜視管理、プリズム処方の検討。
- リハビリテーション科:頸部・肩周囲筋への負担軽減、姿勢指導、ADL支援。
- 栄養士・言語聴覚士:嚥下障害を伴う眼咽頭筋ジストロフィーなどでの誤嚥予防と栄養評価。
意外なポイントとして、眼瞼手術により視野が広がることで、患者が活動量を増やし、その結果として全身筋力低下や呼吸機能低下が顕在化するケースも報告されています。
このような場合、術前から「活動量が増えることで新たに見えてくる問題」があることを患者と共有し、術後早期からリハビリ介入や呼吸リハビリ、在宅環境調整をセットで検討することが、筋原性眼瞼下垂症の包括的なマネジメントには不可欠です。
筋原性眼瞼下垂症に関する原因と治療、術式選択の詳細な解説の参考になります。
筋原性眼瞼下垂症を含む眼瞼下垂の病型分類と挙筋前転術などの手術解説の参考になります。
日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科 眼瞼下垂の詳しい原因と手術解説
先天性外眼筋線維症による眼瞼下垂症例の画像所見と前頭筋吊り上げ術の実際に関する医学的な詳細が確認できます。
医書.jp 先天性外眼筋線維症による眼瞼下垂症の1例

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