- 僧帽弁閉鎖不全症の症状
- 僧帽弁閉鎖不全症の初期症状
- 僧帽弁閉鎖不全症の進行期症状
- 僧帽弁閉鎖不全症の重症期症状
- 僧帽弁閉鎖不全症の急性症状
- 僧帽弁閉鎖不全症の心房細動合併症状
- 僧帽弁閉鎖不全症の無症候性重症例
- 僧帽弁閉鎖不全症の診断における症状評価の注意点
- 僧帽弁閉鎖不全症における検査所見と症状の関連
- 僧帽弁閉鎖不全症の合併症による症状
- 僧帽弁閉鎖不全症における症状と治療タイミング
- 僧帽弁閉鎖不全症の重症度評価
- 僧帽弁閉鎖不全症の心エコー検査による評価
- 僧帽弁閉鎖不全症の心臓カテーテル検査
- 僧帽弁閉鎖不全症における左室機能評価
- 僧帽弁閉鎖不全症の肺高血圧評価
- 僧帽弁閉鎖不全症の原因別評価
- 僧帽弁閉鎖不全症における腱索断裂の評価
- 僧帽弁閉鎖不全症のフォローアップ戦略
- 僧帽弁閉鎖不全症における運動負荷試験
僧帽弁閉鎖不全症の症状
僧帽弁閉鎖不全症の症状は、発症初期と病勢が進行した段階で大きく異なることが知られています。初期段階では、血液の逆流による負担が左心房や左心室にかかっているものの、心臓のポンプ機能を維持しようとする代償機構が働くため、ほとんどの症例で自覚症状が出現しません。
この無症状期間が続くため、健康診断での心雑音聴取や偶然の心エコー検査によって初めて診断されるケースが多いんです。軽度から中等度の僧帽弁閉鎖不全症では、無症状で経過することが一般的とされています。
参考)僧帽弁閉鎖不全症とは|症状から治療、日常生活の注意点まで
僧帽弁閉鎖不全症の初期症状
初期段階の僧帽弁閉鎖不全症では、心臓が代償性に機能を維持するため、日常生活に支障をきたすような明確な症状がみられないことが特徴です。しかし、この時期でも聴診による心雑音は検出可能であり、症状がほとんどない段階から心雑音が聴取されることが診断の重要な手がかりとなります。
参考)僧帽弁閉鎖不全症の原因や治療方法について解説|僧帽弁閉鎖不全…
心雑音は左室収縮期に左心房へ血液が逆流する際に生じる乱流音として、収縮期全体を通して聴取される全収縮期雑音の形態を示すことが多いんです。このため、定期健診や他疾患での受診時に偶然発見されるケースが少なくありません。
参考)僧帽弁閉鎖不全症
代償機構としては、心臓が左心房への逆流血液量を補うために総拍出量を増加させ、前向きの有効拍出量を維持しようとします。このメカニズムにより、軽度から中等度の逆流では運動耐容能が保たれ、患者自身も異常に気づきにくい状態が続きます。
参考)僧帽弁閉鎖不全症(MR)
僧帽弁閉鎖不全症の進行期症状
病状が進行すると、心臓の代償機構に限界がきて、肺に血液が滞る肺うっ血や肺動脈の圧が高まる肺高血圧症が出現し、さまざまな症状が現れるようになります。最も初期に出現する進行期症状は労作時の息切れです。
階段や坂道を上る際に息が切れるという訴えが典型的で、進行するとさらに平坦な道を歩くだけでも息切れを感じるようになります。さらには、服を着替えるだけで息が切れるといった、より軽微な活動でも症状が誘発されるようになるんです。
この時期には動悸も出現しやすくなります。心房細動などの不整脈が合併すると、心臓がドキドキする、胸が苦しいといった動悸症状が顕著になり、胸部不快感や立ちくらみ、全身倦怠感といった症状も加わることがあります。
易疲労感や倦怠感も特徴的な症状として知られており、左室機能低下によって全身への血液供給が不十分になることで、疲れやすさを自覚するようになります。夜間に小水に起きる夜間頻尿も心不全の初期徴候として重要です。
僧帽弁閉鎖不全症の重症期症状
重症化すると、夜間発作性呼吸困難という特徴的な症状が出現します。これは就寝時に急に呼吸が苦しくなる状態で、肺うっ血が高度に進行したことを示す重要なサインです。
起坐呼吸も重症例の代表的症状であり、体を横にしただけで息苦しくなるため、いつも体を起こしていなければならない状態になります。この症状は肺うっ血が進んだときの特有の所見として臨床的に重視されています。
激しい咳込みが生じ、その際にピンク色の痰や血が混じったような痰が出ることもあります。これは肺水腫の徴候として緊急性が高い症状なんです。胸痛が出現することもあり、狭心症を疑って受診して初めて僧帽弁閉鎖不全症と診断されるケースも報告されています。
足のむくみも進行例でみられる重要な症状です。心不全による体液貯留を反映しており、下肢の浮腫として観察されます。尿量の低下も心拍出量低下に伴う腎血流減少によって生じます。
僧帽弁閉鎖不全症の急性症状
腱索断裂や乳頭筋断裂などによって急性に発症した重症僧帽弁閉鎖不全症では、慢性例とは異なる臨床経過をたどります。急性発症では左房の拡大による代償が働かないため、左房圧が急激に上昇し、重篤な肺うっ血や肺水腫を引き起こします。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/6852661d855bac202c495f57feefd4c7cf9c2d97
大部分の症例で強い息切れや呼吸困難が出現し、ショック状態に陥ることもあります。発生から1時間程度で起坐呼吸状態となった症例も報告されており、急性発症の僧帽弁閉鎖不全症は緊急性の高い病態として認識されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/39b71061c4251528b4eb6e035946dc2283d350b3
飲酒中に突然の呼吸困難で発症した症例など、典型的な急性発症例では、数時間以内に重篤な心不全症状が急速に進行するため、迅速な診断と治療介入が生命予後を左右します。
僧帽弁閉鎖不全症の心房細動合併症状
進行例ではしばしば心房細動が合併し、これによって動悸、胸部不快感、立ちくらみ、全身倦怠感などの症状が引き起こされます。心房細動の合併は単に症状を悪化させるだけでなく、脳梗塞のリスクを著しく高めることが知られています。
心房細動による症状には、不規則な脈の乱れによる動悸、だるさ、運動時の息切れの増悪などがあります。心房細動を合併すると、たとえ僧帽弁閉鎖不全症の症状が出ていない場合でも、脳梗塞という生命に関わる合併症のリスクがあるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
日本循環器学会のガイドラインによれば、心房細動の合併は僧帽弁閉鎖不全症患者の長期予後に重大な影響を与えることが示されています。そのため、動悸や脈の不整を自覚した場合には、たとえ他の症状が軽微であっても、早期の医学的評価が推奨されます。
参考:日本循環器学会「弁膜症治療のガイドライン」では、心房細動合併例の管理について詳細な指針が示されています。
僧帽弁閉鎖不全症の無症候性重症例
重要な臨床的課題として、重症の僧帽弁閉鎖不全症であっても自覚症状が乏しい、または全く無症状のまま進行する症例が存在することが挙げられます。特に血液の逆流が軽度である段階や、症状がゆっくりと慢性的に進行する場合には、患者自身が異常を自覚しないまま病状が重症化することがあるんです。
このような無症候性重症例では、患者が無意識のうちに症状が出るような活動を避けるようになり、日常生活の活動レベルが徐々に低下していても、それを症状として認識しないことがあります。特に高齢者ではこの傾向が顕著で、加齢による体力低下と誤認されやすいため注意が必要です。
無症候性でも心エコー検査によって重症度を客観的に評価できるため、定期的なフォローアップが極めて重要となります。重症な自覚症状が出現した後の経過は極めて悪く、放置した場合の余命は3年から5年という報告もあり、症状出現前の早期発見と適切な管理が予後改善の鍵となります。
僧帽弁閉鎖不全症の診断における症状評価の注意点
症状の評価においては、患者の主観的な訴えだけでなく、日常生活における活動レベルの変化を詳細に聴取することが診断精度を高めます。たとえば「以前は楽にできていた階段昇降が最近つらくなった」「少し歩くと休みたくなる」といった、相対的な活動能力の低下を確認することが重要なんです。
また、心不全の既往があり、それに対する治療を受けた状態で現在は無症状の場合でも、有症状と判断すべきとされています。これは一度症状が出現した事実が、すでに心臓への負担が限界に達していたことを示すためです。
症状の進行速度も重要な評価項目です。急性発症の場合には数時間から数日で重篤な症状が出現する一方、慢性例では数ヶ月から数年かけて緩徐に進行するため、患者自身が症状の変化に気づきにくいという特徴があります。
僧帽弁閉鎖不全症における検査所見と症状の関連
僧帽弁閉鎖不全症の症状は、心エコー検査による重症度評価や血液検査所見と必ずしも一致しないことがあります。軽度から中等度の逆流でも心房細動を合併すれば動悸症状が顕著になることがありますし、重症例でも代償機転が働いている間は無症状で経過することがあるんです。
そのため、症状のみで重症度を判断することは適切でなく、心エコー検査による客観的評価が不可欠です。逆に、症状が軽微であっても心エコー検査で重症と判定された場合には、今後症状が急速に悪化するリスクが高いため、綿密なフォローアップや早期の治療介入が検討されます。
参考)僧帽弁閉鎖不全症
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)などの血液バイオマーカーも、症状と心臓への負荷の程度を客観的に評価する上で有用な指標となります。BNP値の上昇は、たとえ自覚症状が軽微であっても心不全の進行を示唆する重要なサインとして解釈されます。
僧帽弁閉鎖不全症の合併症による症状
僧帽弁閉鎖不全症の最も重要な合併症は心不全です。血液の逆流によって心臓に余計な負担がかかり続けると、やがて心臓が負担に耐え切れなくなり、徐々に心機能が低下して心不全となります。心不全の悪化によって、息切れやむくみ、疲れやすさなどの症状が顕著になります。
肺高血圧も重要な合併症であり、長期間の左房圧上昇により肺動脈圧が上昇します。肺高血圧が進行すると右心不全の症状として下肢浮腫や腹部膨満、肝腫大などが出現することがあります。
感染性心内膜炎も僧帽弁閉鎖不全症患者に起こりやすい合併症として知られており、発熱や倦怠感、心雑音の変化などで気づかれることがあります。口腔内の清潔を保つことが感染性心内膜炎の予防に重要とされています。
参考:メディカルノート「僧帽弁閉鎖不全症の症状や合併症」には合併症の詳細な解説があります。
僧帽弁閉鎖不全症における症状と治療タイミング
症状の有無は治療方針の決定に大きく影響します。有症状の重症僧帽弁閉鎖不全症では、原則として手術治療の適応となります。一方、無症候性であっても心エコー検査で左室機能低下や左室拡大が認められる場合には、症状出現前に手術を検討することが推奨されています。
参考)僧帽弁形成術(僧帽弁閉鎖不全症の手術)|渡邊剛 公式サイト
症状が出現してから手術を行うよりも、無症状の段階で手術を行ったほうが術後の長期予後が良好であることが複数の研究で示されているんです。これは、症状が出現する時点ですでに不可逆的な心筋障害が進行している可能性があるためです。
参考)僧帽弁閉鎖不全症の原因、症状、診断、治療についての完全ガイド…
したがって、たとえ自覚症状がなくても、定期的な心エコー検査によるフォローアップを継続し、適切なタイミングで治療介入を行うことが、長期予後の改善につながります。患者自身も症状の変化に注意を払い、わずかな活動能力の低下でも医師に報告することが重要です。
僧帽弁閉鎖不全症の重症度評価
僧帽弁閉鎖不全症の重症度は、主に心エコー検査を用いて軽症、中等症、重症の3段階に分類されます。日本循環器学会のガイドラインでは、複数の定性的および定量的指標を組み合わせて総合的に評価することが推奨されています。
参考)https://www.asecho.org/wp-content/uploads/2025/04/Valvular-Regurgitation_Japanese.pdf
重症度評価の主要な指標には、有効逆流弁口面積(EROA)、逆流量、逆流率、縮流部幅、カラードプラ法によるジェット面積などがあります。一般的に、EROAが0.4 cm²以上、逆流量が60 mL以上、逆流率が50%以上の場合に重症と判定されます。
器質性僧帽弁閉鎖不全症と機能性僧帽弁閉鎖不全症では、重症度評価の基準が一部異なることが2014年のACC/AHAガイドラインで示されており、それぞれの病態に応じた適切な評価方法を選択する必要があるんです。
僧帽弁閉鎖不全症の心エコー検査による評価
心エコー検査は僧帽弁閉鎖不全症の診断と重症度評価に必須の検査法です。経胸壁心エコー検査(TTE)が第一選択となり、弁の構造、逆流の程度、左心房と左心室のサイズ、心機能を総合的に評価します。
参考)僧帽弁閉鎖不全症|いでハートクリニック【大阪府吹田市の循環器…
経胸壁心エコーで評価が不十分な場合や、より詳細な弁の形態評価が必要な場合には、経食道心エコー検査(TEE)が推奨されます。経食道心エコーは特に僧帽弁の後方からの観察に優れており、弁尖の逸脱や穿孔、腱索断裂などの詳細な評価が可能です。
参考)検査
カラードプラ法による逆流ジェットの評価は最も一般的な方法ですが、ジェットの方向や左房のサイズによって実際の重症度と乖離することがあるため注意が必要です。PISA法(近位部等流速表面法)やvolumetric法による定量評価を併用することで、より正確な重症度判定が可能になります。
僧帽弁閉鎖不全症の心臓カテーテル検査
心エコー検査での評価が困難な患者や、臨床症状と心エコー所見に乖離がある場合には、心臓カテーテル検査による重症度および血行動態評価が有用です。左室造影によって僧帽弁逆流の重症度を4段階で評価し、左室のサイズや壁運動、左室拡張末期圧を測定します。
肺動脈楔入圧のv波の高さも僧帽弁逆流の重症度を反映する指標の一つとして用いられます。また、手術適応を検討する際には、冠動脈造影検査を同時に行い、冠動脈疾患の有無を評価することが推奨されています。
ただし、心臓カテーテル検査は侵襲的な検査であるため、非侵襲的検査で十分な情報が得られる場合には必ずしも必要ではありません。適応を慎重に判断し、必要十分な情報を効率的に取得することが重要なんです。
僧帽弁閉鎖不全症における左室機能評価
左室サイズと左室駆出率(LVEF)は、僧帽弁閉鎖不全症の治療方針決定において極めて重要な指標です。左室収縮末期径(LVESD)が40 mm以上、またはLVEFが60%以下に低下している場合には、たとえ無症状であっても手術を検討する必要があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmu/39/2/39_2_87/_pdf
僧帽弁閉鎖不全症では左房への逆流によって左室の後負荷が減少するため、LVEFは見かけ上高く維持されます。そのため、LVEFが正常範囲の下限近くまで低下している場合には、すでに実質的な心筋障害が進行していると考えるべきです。
左室径の計測は僧帽弁弁尖レベルで行うことが推奨されており、修正シンプソン法による左室容積とLVEFの測定が標準的な方法とされています。日本人では体格が欧米人より小さいため、左室径の評価には体表面積による補正を考慮する必要がある場合もあります。
僧帽弁閉鎖不全症の肺高血圧評価
左心系弁膜症である僧帽弁閉鎖不全症では、左房圧の上昇から二次的に肺高血圧を合併することがあります。肺高血圧の有無と程度は症状や予後と密接に関連するため、心エコー検査による肺動脈収縮期圧の推定が重要です。
推定肺動脈収縮期圧は、三尖弁逆流の最大速度から簡易ベルヌーイ式で右室収縮期圧を求め、下大静脈径と呼吸性変動から推測される右房圧を加算して算出します。推定肺動脈収縮期圧が35 mmHg以上で肺高血圧を示唆し、手術適応の判断材料の一つとなります。
運動負荷時の肺動脈圧の上昇も予後と関連することが知られており、安静時に軽度の逆流でも運動負荷によって肺動脈圧が60 mmHg以上に上昇する場合には、より積極的な治療介入を検討する必要があります。
僧帽弁閉鎖不全症の原因別評価
僧帽弁閉鎖不全症は原因によって一次性(器質性)と二次性(機能性)に大きく分類されます。一次性僧帽弁閉鎖不全症は弁尖や腱索の構造異常によって生じ、僧帽弁逸脱症、腱索断裂、リウマチ性変化、感染性心内膜炎などが含まれます。
参考)僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流) (そうぼうべんへいさふぜんし…
二次性僧帽弁閉鎖不全症は弁自体には器質的異常がなく、左室の拡大や収縮不全、あるいは左房の拡大によって弁の閉鎖不全が生じるものです。虚血性心疾患や拡張型心筋症に伴う左室機能低下による逆流と、心房細動に伴う左房拡大による逆流(心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症)が含まれます。
原因によって治療方針が大きく異なるため、心エコー検査による詳細な弁形態の評価と、原因疾患の特定が極めて重要なんです。一次性では弁形成術が第一選択となることが多い一方、二次性では原疾患の治療が優先されます。
参考)僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症における腱索断裂の評価
腱索断裂は僧帽弁閉鎖不全症の重要な原因の一つであり、変性による自然断裂と感染性心内膜炎による断裂が代表的です。腱索断裂では弁尖が心房側に逸脱(フレイル)し、重度の逆流を生じることが多いんです。
参考)心臓弁膜症
心エコー検査では、弁尖の過剰な可動性と心房側への突出、カラードプラで偏心性の高速ジェットが観察されます。経食道心エコーは腱索断裂の部位や範囲を詳細に評価でき、外科治療の術式決定に有用な情報を提供します。
腱索断裂の程度が大きい場合や、複数の腱索が断裂している場合には、急性の心不全症状で発症することがあり、緊急手術が必要となることもあります。半年に一度の定期検査で経過観察が可能かどうかは、逆流の重症度や心機能によって慎重に判断する必要があります。
僧帽弁閉鎖不全症のフォローアップ戦略
無症候性僧帽弁閉鎖不全症の患者では、定期的な心エコー検査によるフォローアップが推奨されます。重症度に応じて、軽症では3~5年ごと、中等症では1~2年ごと、重症では6~12ヶ月ごとの心エコー検査が目安とされています。
左室拡大を伴う症例では、より頻回のフォローアップが必要です。また、症状や身体所見になんらかの変化が認められた場合には、予定を前倒しして心エコー検査を実施することが推奨されます。
血液検査ではBNP値が心負荷の指標として有用であり、経時的な変化を追跡することで、症状が出現する前に心機能悪化の兆候を捉えることができます。BNP値の上昇傾向がみられた場合には、より詳細な評価や治療方針の見直しが必要となることがあるんです。
参考:兵庫医科大学病院「僧帽弁閉鎖不全症」では、定期検査の重要性について患者向けの解説があります。
僧帽弁閉鎖不全症における運動負荷試験
安静時の心エコー所見と臨床症状が乖離している場合、運動負荷心エコー検査が有用な評価法となります。重症だが無症状の慢性一次性僧帽弁閉鎖不全症や、症状があるにもかかわらず安静時心エコーでは重症とは診断されない中等症例に対して推奨されます。
参考)http://www.jse.gr.jp/contents/guideline/data/guideline_stressecho2023_ver2.pdf
運動負荷試験では、運動時の症状の有無、収縮期肺動脈圧の変化、左室機能の変化を評価します。運動負荷時に肺動脈圧が60 mmHg以上に上昇する場合には、手術適応を検討する材料となります。
二次性僧帽弁閉鎖不全症はダイナミックに変化するため、病態把握および予後推定のために運動負荷心エコー検査は特に有用です。冠動脈バイパス術を予定している症例では、中等症の逆流への手術介入を決定するために、運動負荷による症状出現や逆流増悪、肺高血圧の程度を術前に評価することが推奨されています。