ソルラクト輸液どんな時に使う効果的な投与方法と適応症

ソルラクト輸液どんな時に使う

ソルラクト輸液の主な使用場面
🩸

循環血液量減少時

出血や手術時の血液量維持に効果的

⚖️

代謝性アシドーシス補正

体内の酸塩基平衡を正常化

💧

細胞外液補給

脱水症状や電解質異常の改善

ソルラクト輸液の基本的な効能効果と適応症

ソルラクト輸液は、乳酸リンゲル液として分類される輸液製剤で、医療現場において幅広く使用されています。その主な効能効果は以下の通りです。

  • 循環血液量減少時の細胞外液補給:出血や脱水により血液量が減少した際の補充
  • 組織間液減少時の細胞外液補正:体液バランスの異常を正常化
  • 代謝性アシドーシスの補正:体内の酸塩基平衡を調整

ソルラクト輸液の組成は、ナトリウム131mEq/L、カリウム4mEq/L、カルシウム3mEq/L、クロール110mEq/L、乳酸28mEq/Lとなっており、生理食塩液に対する浸透圧比は約0.9で、人体の細胞外液に近い組成を持っています。

この輸液の特徴的な成分である乳酸ナトリウムは、体内で代謝されて重炭酸イオン(HCO3-)となり、アシドーシスの補正効果を発揮します。これにより、単なる水分補給だけでなく、酸塩基平衡の維持にも重要な役割を果たしています。

ソルラクト輸液の手術時と出血時の使用方法

手術時におけるソルラクト輸液の使用は、医療現場で非常に重要な位置を占めています。手術中は出血や術中操作により循環血液量が減少するため、細胞外液補充液として機能するソルラクト輸液が選択されます。

手術時の使用理由:

  • 出血による循環血液量の減少を補う
  • 術中の血圧維持と循環動態の安定化
  • 細胞外液の成分が血管内に留まりやすい特性

術前の点滴をソルラクトに変更する理由として、乳酸リンゲル液は等張液であり、成分の大部分が細胞外である血管に残る特性があります。これにより、手術中の循環血液量を効果的に維持できるのです。

投与方法と注意点:

  • 通常成人:1回500~1000mLを点滴静注
  • 投与速度:1時間当たり300~500mL
  • 年齢、症状、体重により適宜増減

手術時の輸液管理では、患者の循環動態を慎重に監視しながら投与量と速度を調整することが重要です。特に心不全の既往がある患者では、循環血液量の増加により症状が悪化する可能性があるため、より慎重な管理が必要となります。

ソルラクト輸液の下痢時における効果的な使用法

下痢時におけるソルラクト輸液の使用は、消化器症状に対する輸液療法の基本的な考え方に基づいています7。下痢により腸液が大量に失われると、体内の重炭酸イオン(HCO3-)が減少し、代謝性アシドーシスを引き起こす可能性があります。

下痢時にソルラクトが選択される理由:

  • 腸液の成分であるHCO3-の代用となる乳酸イオンを含有
  • 失われた電解質の補充が可能
  • アシドーシスの補正効果

下痢による体液喪失では、主に腸液中の重炭酸イオンが失われるため、体は酸性に傾きます7。ソルラクト輸液に含まれる乳酸ナトリウムは、肝臓で代謝されて重炭酸イオンに変換され、アルカリ性の成分として機能します。

臨床での使用指針:

  • 軽度から中等度の脱水症状に対して有効
  • 電解質バランスの維持
  • 循環血液量の維持と血圧安定化

興味深いことに、嘔吐時には生理食塩液が選択されることが多いのに対し、下痢時にはソルラクト輸液が推奨されます。これは、嘔吐では胃液中の塩酸が失われてアルカローシスになりやすく、下痢では腸液中の重炭酸が失われてアシドーシスになりやすいという、それぞれの病態生理の違いに基づいています。

ソルラクト輸液の代謝性アシドーシス補正メカニズム

ソルラクト輸液による代謝性アシドーシスの補正メカニズムは、含有される乳酸ナトリウムの代謝過程に基づいています。この作用機序を理解することは、適切な輸液選択において極めて重要です。

乳酸ナトリウムの代謝過程:

  1. 乳酸ナトリウム(C3H5NaO3)が血中に投与される
  2. 主に肝臓で乳酸デヒドロゲナーゼにより代謝される
  3. 最終的に重炭酸イオン(HCO3-)とナトリウムイオンに変換
  4. 重炭酸イオンが体内の酸を中和してアシドーシスを補正

この代謝過程により、1分子の乳酸ナトリウムから1分子の重炭酸イオンが生成されます。ソルラクト輸液1Lには乳酸が28mEq含まれているため、理論的には28mEqの重炭酸イオンが生成され、同量の酸を中和できることになります。

アシドーシス補正の適応症:

  • 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の補助療法
  • 乳酸アシドーシスの改善
  • 下痢による代謝性アシドーシス
  • 腎不全による酸塩基平衡異常

ただし、重篤な肝機能障害がある患者では、乳酸の代謝が障害されるため、高乳酸血症が悪化する可能性があります。このような場合は、乳酸を含まない他の輸液製剤の選択を検討する必要があります。

また、乳酸の代謝には酸素が必要であるため、重篤な循環不全や呼吸不全の状態では、乳酸の代謝が十分に行われない可能性もあります。このような病態では、直接的にアルカリ化作用を持つ重炭酸ナトリウムの使用も考慮されます。

ソルラクト輸液の投与時における副作用と注意点

ソルラクト輸液の投与に際しては、様々な副作用や注意点を理解しておく必要があります。適切な投与管理により、これらのリスクを最小限に抑えることができます。

主な副作用:

  • 過敏症反応:紅斑、蕁麻疹、そう痒感
  • 大量・急速投与による障害:肺水腫、脳浮腫、末梢の浮腫
  • 電解質異常:ナトリウム過剰、カリウム異常

大量投与や急速投与による合併症は特に注意が必要です。循環血液量の急激な増加により、心不全患者では症状の悪化、健常者でも肺水腫や脳浮腫を引き起こす可能性があります。

特別な注意を要する患者群:

  • 心不全患者:循環血液量増加により症状悪化のリスク
  • 高張性脱水症患者:電解質含有により症状悪化の可能性
  • 閉塞性尿路疾患患者:水分・電解質排泄障害により症状悪化
  • 腎機能障害患者:水分・電解質の過剰投与リスク
  • 重篤な肝機能障害患者:乳酸代謝障害による高乳酸血症リスク

高齢者への投与注意点:

高齢者では生理機能が低下しているため、投与速度を緩徐にし、減量するなど特別な注意が必要です。腎機能や心機能の低下により、若年者と同様の投与では合併症のリスクが高くなります。

調製時の注意事項:

  • カルシウムを含有するため、クエン酸加血液との混合は凝血の原因となる
  • リン酸イオンや炭酸イオンと沈殿を生じるため、これらを含む製剤との配合は避ける
  • 薬剤添加後は速やかに使用し、貯蔵は避ける

これらの注意点を十分に理解し、患者の状態に応じた適切な投与管理を行うことで、ソルラクト輸液の治療効果を最大限に発揮させることができます。