ソホスブビル リバビリン併用療法
リバビリン併用では貧血発現率が22%に達します
ソホスブビルとリバビリンの作用機序と併用の意義
ソホスブビルは、C型肝炎ウイルス(HCV)の複製に必須の酵素であるNS5Bポリメラーゼを直接阻害する核酸型ポリメラーゼ阻害剤です。肝細胞内で活性代謝物であるウリジン三リン酸型に変換され、ヌクレオチドの代わりにNS5Bポリメラーゼの活性部位に直接取り込まれることで、RNA鎖の伸長を停止させる「チェーンターミネーター」として機能します。この作用機序により、ウイルスの増殖を根本から阻止するのが特徴です。
ソホスブビルの最大の利点は、ジェノタイプ1~6のすべてのHCVに対して抗ウイルス作用を示し、かつ耐性変異が起きにくい点にあります。NS5B領域の高い保存性により、他の直接作用型抗ウイルス薬(DAA)に比べて耐性が発現しにくいのです。
リバビリンは、イノシン一リン酸脱水素酵素(IMDH)を阻害することでウイルスのRNA合成を抑制する薬剤です。単独では効果が限定的ですが、ソホスブビルと併用することで相乗効果を発揮します。つまり、作用機序が異なる2つの薬剤を組み合わせることで治療効果を高めているということですね。
国内第3相試験では、セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎または代償性肝硬変患者153例を対象に、ソホスブビル400mgとリバビリンの12週間併用療法を実施しました。その結果、SVR12率は96.4%(140例中135例)に達し、従来のペグインターフェロン・リバビリン併用療法を大きく上回る治療成績を示しています。
この併用療法の画期的な点は、インターフェロン製剤を使用しないことです。インターフェロン治療では週3回または週1回の注射が必要で、インフルエンザ様症状、うつ症状、甲状腺機能異常など多彩な副作用が問題でした。それに対してソホスブビル・リバビリン併用療法は経口薬のみで完結し、副作用の発現頻度も重症度も大幅に軽減されました。
治療期間も12週間と比較的短期間で済むため、患者の負担が少ないのもメリットです。ただし腎機能に応じた注意が必要で、重度の腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m²)または透析を必要とする腎不全患者には禁忌となっています。ソホスブビルとその代謝物は主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下していると血中濃度が上昇し、重篤な副作用のリスクが高まるからです。
厚生労働省の第14回肝炎治療戦略会議資料では、ソホスブビル・リバビリン併用療法の臨床試験成績が詳しく報告されています
ソホスブビル リバビリン併用療法の適応と投与方法
ソホスブビル・リバビリン併用療法は、セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変における第一選択治療として位置づけられていました。通常、成人にはソホスブビル400mgを1日1回、リバビリンを体重に応じた用量で12週間経口投与します。
リバビリンの投与量は患者の体重によって異なります。体重60kg未満では600mg/日、60kg以上80kg未満では800mg/日、80kg以上では1000mg/日を目安に投与され、朝夕の2回に分けて服用するのが基本です。体重あたり1日13mg/kgを超える量を投与した場合、貧血の発現頻度が増加することが国内臨床試験で確認されているため、用量設定には注意が必要ですね。
適応患者の選定では、腎機能の評価が最重要となります。eGFRが30mL/分/1.73m²未満の重度腎機能障害患者、または透析を必要とする腎不全患者では、ソホスブビルの血中濃度が有意に上昇するため投与できません。中等度腎機能障害(eGFR 30~50mL/分/1.73m²)の患者でも慎重投与が必要で、定期的な腎機能モニタリングが求められます。
また、リバビリンの催奇形性も重要な禁忌事項です。妊婦または妊娠している可能性のある女性には絶対に投与してはいけません。さらに治療期間中および治療終了後6カ月間は、男女ともに避妊が必須となります。これは動物実験で胎児に対する催奇形性や精子の異常が報告されているためです。
前治療歴のある患者や、肝硬変を合併している患者では、治療期間を24週間に延長することがあります。ただし個々の患者の状態、ウイルス量、線維化の程度などを総合的に評価して治療計画を立てる必要がありますね。
薬物相互作用にも注意が必要です。カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシンはソホスブビルの血中濃度を低下させるため併用禁忌となっています。また、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品も同様の理由で摂取を避けなければなりません。
2015年5月に保険適用となって以降、本併用療法は多くのジェノタイプ2型患者の治療に用いられてきました。しかし2024年8月にリバビリン(レベトールカプセル)の製造中止が決定され、2026年3月末をもって供給が停止されることになりました。このため現在では、ハーボニー配合錠(レジパスビル・ソホスブビル)やエプクルーサ配合錠(ソホスブビル・ベルパタスビル)などのリバビリンフリーのレジメンへの移行が進んでいます。
肝炎情報センターの添付文書情報には、ソバルディ錠の詳しい用法用量と使用上の注意が記載されています
ソホスブビル リバビリン併用療法の副作用と対策
ソホスブビル・リバビリン併用療法で最も頻度が高く、かつ重要な副作用は貧血です。国内臨床試験では11.4~22.2%の患者に貧血が認められており、これは主にリバビリンによる溶血性貧血が原因となっています。リバビリンは赤血球膜に取り込まれ、酸化ストレスを引き起こすことで赤血球の寿命を短縮させるのです。
貧血の発現時期は通常、投与開始後2~4週間頃から始まり、治療継続中は持続します。ヘモグロビン値が10g/dL未満に低下した場合や、投与前値から2g/dL以上低下した場合には、リバビリンの減量または中止を検討する必要があります。重度の貧血では倦怠感、動悸、息切れ、めまいなどの自覚症状が出現し、日常生活に支障をきたすこともありますね。
このため治療中は2週間ごとのヘモグロビン値測定が推奨されています。貧血が進行した場合の対策として、まずリバビリンの用量調整を行います。具体的には、1日量を200mg減量し、それでも改善しない場合はさらに200mg減量します。それでもヘモグロビン値が8.5g/dL未満に低下した場合は、リバビリンの投与を中止しなければなりません。
注意すべき点として、重篤ではないものの見過ごせない副作用に「注意力障害」があります。実際にソホスブビル・リバビリン併用療法を受けていた患者が、服薬を5日間間違えてソバルディ錠のみを服用し、薬が足りなくなったという事例が報告されています。これは副作用として起こり得る注意力低下や集中力低下が、服薬管理能力に影響を与えた可能性が示唆されています。
このような認知機能への影響を考慮すると、特に高齢患者や独居患者では、家族や介護者による服薬管理のサポート、お薬カレンダーの活用、服薬アプリの利用などの対策が有効です。薬剤師による服薬指導では、この注意力障害のリスクを説明し、具体的な服薬管理方法を提案することが重要ですね。
その他の副作用としては、倦怠感(5.0%)、頭痛、咽頭炎、発熱、吐き気、下痢などが報告されています。これらはインターフェロン治療と比較すると発現頻度も重症度も低いですが、患者のQOLに影響することがあります。
重大な副作用として、まれに高血圧や脳血管障害が報告されています。ソホスブビルとリバビリンの併用療法、およびレジパスビル・ソホスブビル投与による重度の高血圧があらわれた国内症例が集積したことから、添付文書に重大な副作用として追記されました。治療中は定期的な血圧測定を行い、血圧上昇が認められた場合は速やかに対応する必要があります。
副作用モニタリングのポイントとしては、治療開始前にベースラインの血液検査(血算、肝機能、腎機能)を実施し、治療中は2週間ごとに血算、4週間ごとに肝機能と腎機能をチェックするのが基本です。異常値が認められた場合は、速やかに減量や休薬を検討します。
薬剤師向けヒヤリハット事例集には、ソホスブビル・リバビリン併用療法での注意力障害による誤薬事例が詳しく報告されています
ソホスブビル リバビリン併用療法の費用と医療費助成
ソホスブビル・リバビリン併用療法の薬剤費は非常に高額です。ソバルディ錠400mgの薬価は1錠61,799円で、12週間(84日間)の治療では約519万円となります。これにリバビリンの費用が加わるため、総薬剤費は体重によって異なりますが、約520万~550万円程度になります。
例えば体重70kgの患者の場合、リバビリン800mg/日を12週間投与すると、レベトールカプセル200mg(薬価257.5円/カプセル)を1日4カプセル、84日間で合計336カプセル必要となり、約8.7万円の費用がかかります。つまり、ソバルディとの合計で約528万円という計算になりますね。
3割負担でも約158万円となり、一般の患者にとって大きな経済的負担です。このため、B型・C型ウイルス肝炎治療医療費助成制度が設けられています。この制度を利用すると、所得に応じて自己負担限度月額が設定され、大幅に負担が軽減されます。
具体的には、世帯の市町村民税課税年額に応じて以下のように自己負担限度月額が決まります。235万円以上の世帯では月額2万円、235万円未満の世帯では月額1万円が上限となります。12週間の治療では3カ月分となるため、最も所得の高い区分でも自己負担は6万円で済むということです。
この医療費助成を受けるためには、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院または専門医療機関で診断を受け、肝炎治療受給者証の交付申請を行う必要があります。申請には診断書(様式第1号)、住民票、課税証明書などの書類が必要で、審査を経て受給者証が交付されます。
ただし、リバビリン(レベトールカプセル)の製造中止により、2026年3月末以降は本併用療法の継続が困難になります。現在治療中の患者は、速やかに代替療法への切り替えを検討する必要があります。代替療法としては、ハーボニー配合錠(ジェノタイプ1・2型対応)やエプクルーサ配合錠(全ジェノタイプ対応)などのリバビリンフリーレジメンが選択肢となりますね。
これらの新しい配合錠も同様に高額ですが、同じ医療費助成制度の対象となっています。ハーボニー配合錠の薬価は1錠80,171円、エプクルーサ配合錠は1錠80,171円で、12週間の治療で約672万円となりますが、助成制度利用で実質負担は月額1~2万円に抑えられます。
費用対効果の観点では、これらの直接作用型抗ウイルス薬によってC型肝炎が治癒すれば、将来の肝硬変や肝がんの発症を予防でき、長期的な医療費削減につながると評価されています。実際、日本ではDAA導入後、C型肝炎による新規肝がん発症が減少傾向にあることが報告されています。
東京都保健医療局のB型・C型ウイルス肝炎治療医療費助成制度のページには、申請方法や対象療法の詳細が掲載されています
ソホスブビル製剤の今後と代替治療選択肢
ソホスブビル単剤(ソバルディ錠)は、2022年4月をもって販売が中止されています。これはリバビリンとの併用が前提の製剤だったため、より使いやすい配合錠の登場により需要が減少したことが理由です。一方、ソホスブビルを含む配合錠は現在も広く使用されています。
現在主流となっているのは、ハーボニー配合錠(レジパスビル・ソホスブビル)とエプクルーサ配合錠(ソホスブビル・ベルパタスビル)です。ハーボニーはジェノタイプ1型と2型に対応し、1日1回1錠を12週間投与することで、ほぼ100%に近いSVR率を達成しています。リバビリンを併用しないため、貧血のリスクが大幅に低減されるのが大きなメリットですね。
エプクルーサはさらに適応範囲が広く、ジェノタイプ1~6型すべてに有効です。このため、ジェノタイプ判定が不明確な場合や、複数のジェノタイプが混在する可能性がある場合でも使用できます。前治療歴のある患者や、DAA治療不成功例に対しては、エプクルーサにリバビリンを併用することで治療成功率を高めることができます。
実際、DAA治療失敗後のC型肝炎患者に対するエプクルーサ・リバビリン併用の再治療では、73%の患者でSVR12を達成したという報告があります。ただしリバビリンの製造中止により、今後はこの選択肢も制限されることになります。
リバビリン製造中止後の対応として、日本肝臓学会は「C型肝炎治療ガイドライン」を2024年に改訂しました。ジェノタイプ2型の再治療の方針では、前治療においてリバビリンを用いない場合の推奨が追記されています。具体的には、ソホスブビル・リバビリン併用療法で治療失敗した患者には、ハーボニー配合錠またはエプクルーサ配合錠を選択することが推奨されています。
また、腎機能障害患者への対応も重要な課題です。ソホスブビル含有製剤は重度腎機能障害患者には禁忌ですが、グレカプレビル・ピブレンタスビル配合錠(マヴィレット配合錠)は腎機能による用量調整が不要で、透析患者にも使用できます。このため、腎機能低下例では第一選択となることが多いですね。
今後のC型肝炎治療は、よりシンプルで副作用の少ない治療へと進化していくと予想されます。すでに8週間の短期治療が可能なレジメンも承認されており、患者負担のさらなる軽減が期待されています。ただし、DAA耐性変異を持つウイルスへの対応や、治療後の長期フォローアップによる肝がんサーベイランスの重要性は変わりません。
医療従事者としては、各薬剤の特性、適応、禁忌を正確に理解し、個々の患者に最適な治療法を選択できる知識が求められます。特に2026年3月以降はリバビリンが使用できなくなるため、現在ソホスブビル・リバビリン併用療法を受けている患者の治療計画見直しが急務となっています。
日経メディカルの記事では、リバビリン製造中止を受けたC型肝炎治療ガイドライン改訂の詳細が解説されています
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