出血性網膜色素上皮剥離と加齢黄斑変性と治療

出血性網膜色素上皮剥離と治療

出血性網膜色素上皮剥離の要点
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本態

網膜色素上皮(RPE)下に血液が貯留し、RPEがドーム状に挙上する状態を臨床的に「出血性網膜色素上皮剥離」と扱う。

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診断の軸

眼底+OCTを基本に、病態把握と鑑別のために蛍光眼底造影(FAG)とICGを組み合わせ、原因疾患(滲出型AMDなど)を見極める。

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治療の考え方

背景の脈絡膜新生血管(CNV)制御が中心で、抗VEGF硝子体注射やPDTを病態に応じて選択・併用し、出血量や部位で外科的介入も検討する。


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出血性網膜色素上皮剥離の病態と加齢黄斑変性

出血性網膜色素上皮剥離は、臨床的には「RPE下(網膜色素上皮下)に血液が貯留してRPEが剥離・挙上する」所見を指し、病名というより“病態名”として扱うほうが現場では安全です。

原因の最頻は滲出型の加齢黄斑変性(AMD)で、脈絡膜新生血管(CNV)の破綻により出血し、OCTで出血とRPEの隆起(色素上皮剥離)が同一病変内に並存する形をとり得ます。

AMDの背景としては、加齢に伴う網膜色素上皮下への老廃物蓄積が病態の土台になり、そこから黄斑障害へ進む、という説明が患者向けにも医療者向けにも共通言語として有用です。

一方で、同じ「色素上皮剥離」でも漿液性(滲出主体)・線維血管性・出血性で臨床経過と介入の優先順位が変わるため、「出血がある=活動性が高い/急変し得る」という認識をチーム内で揃えることが重要です。

出血性網膜色素上皮剥離の診断とOCTと眼底造影

診断の出発点は、視力低下・変視・中心暗点などの訴えを前提に、眼底検査とOCTで黄斑の断層構造を確認する流れになります。

OCTでは、RPEのドーム状挙上に加えて、その内部または直上の高反射成分(血液成分)や、周辺の網膜浮腫・網膜下液など“活動性の付随所見”を合わせて読むと、治療必要度の見積りが精密になります。

鑑別と病態把握の決め手として、FAGとICGの併用が推奨され、FAGは網膜色素上皮より上層側の病変把握、ICGは脈絡膜層の病変把握に使い分ける、という整理が実務的です。

特に「どこが出血で、どこが新生血管の活動性なのか」を切り分ける意識がないと、OCTの“形”だけで治療反応性を誤推定しやすく、紹介タイミングが遅れる原因になります。

出血性網膜色素上皮剥離の治療と抗VEGFとPDT

滲出型AMDに対する基本治療は、硝子体内に薬剤を注射して新生血管を弱らせる抗VEGF療法、または点滴とレーザーを組み合わせて新生血管を詰まらせるPDTで、病態により併用も行われます。

抗VEGFは“VEGFの働きを抑制し、新生血管を弱らせ、悪い変化の進行を防ぐ”という説明が核で、外来で実施しやすい一方、追加治療が必要な症例があり、通院設計(再診間隔・画像評価の頻度)まで含めた運用が成否を分けます。

PDTは、光感受性物質(ビスダイン)が付着した血管に光を当てて血栓形成を起こし、選択的に新生血管を閉塞させるという機序で、治療後の光回避など生活制限を伴う点が説明上の要点です。

また、出血そのものが問題になる局面(網膜下出血・硝子体出血)では、出血部位や出血量に応じて硝子体ガス注入術や硝子体手術を検討し、黄斑が血腫で傷む前に“時間軸”で判断する必要があります。

出血性網膜色素上皮剥離の合併症と予後と禁煙

加齢黄斑変性は現状では完治が難しい一方で、早期発見と治療の組み合わせで視力を改善・維持できる可能性があるため、出血性網膜色素上皮剥離を見た時点で「慢性疾患としての長期管理」へ視点を切り替えることが現場に求められます。

予防・再発抑制の指導としては禁煙、強い光を避ける(サングラス等)、サプリメント(AREDSに準拠した考え方)といった生活指導が挙げられ、医師以外の職種でも介入できる余地が大きい領域です。

意外に見落とされやすいのは、抗VEGF治療が“簡便に見える”ことで通院負担・費用負担の説明が薄くなり、結果として通院中断や再燃の見逃しにつながる点で、特に片眼発症例ではもう片眼のリスク管理も同時に設計する必要があります。

臨床上は「真っ暗になるのは稀」でも、読書・運転・書字など生活機能への影響が大きくなり得るため、視機能の目標設定を“視力表”だけに寄せない説明が、医療安全と患者満足の両面で効きます。

出血性網膜色素上皮剥離の独自視点:チーム説明と検査オーダー

出血性網膜色素上皮剥離は、医師の治療選択だけでなく、視能訓練士による検査の質(OCTの撮像条件・再現性、造影検査の目的理解)が診療の正確性を左右する、という“チーム医療の依存度が高い病態”です。

現場で役立つ運用ルールとしては、「初診時点で眼底+OCTは必須」「活動性評価や鑑別が必要ならFAG/ICGを早期に予約」「治療後は同一条件でのOCTフォローを原則化」の3点を明文化すると、担当者が変わっても判断のブレが減ります。

さらに患者説明では、病名を増やすよりも「黄斑の下で異常血管が出血し、網膜色素上皮が持ち上がっている」「出血自体と、原因の血管(CNV)を分けて治療する」という二段階の枠組みにすると理解が進みやすく、同意取得の質が上がります。

“意外な盲点”として、治療が奏功して一時的に見え方が改善しても再発があり得るため、自己判断で通院を止めないこと、片眼例でも定期検査が必要なことを、初回から繰り返し伝える設計が重要です。

加齢黄斑変性の基礎(患者説明にも使える概説):日本眼科学会|加齢黄斑変性
診断(FAG/ICG)と治療(抗VEGF・PDT・ガス注入・硝子体手術、血腫は14日が目安)の実務情報:ツカザキ病院|加齢黄斑変性について