障害者手帳と医療費無料の仕組み

障害者手帳と医療費無料

📋 障害者手帳による医療費助成の概要
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重度心身障害者医療費助成制度

身体障害者手帳1~3級などの所持者が医療費の自己負担額の一部または全額の助成を受けられる制度です

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自立支援医療制度

精神疾患の通院医療費の自己負担を原則1割に軽減し、所得に応じてさらに上限額が設定されます

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自治体による制度の違い

都道府県や市区町村によって対象範囲や所得制限、自己負担額が大きく異なります


障害者手帳を持つ方が医療機関を受診する際、保険診療における自己負担額の一部または全額を助成する制度があります。この制度は「重度心身障害者医療費助成制度」と呼ばれ、都道府県と市区町村が共同で実施しています。所得制限を満たし助成対象となった場合、あらゆる病気の治療について医療費が無料または低額になります。

参考)身体障がい者手帳 / 重度心身障害者医療費助成制度 | 日本…


助成を受けるには、住所地の福祉事務所や福祉課などで事前に受給資格の登録が必要です。身体障害者手帳の交付時に同時に申請するとスムーズに手続きができます。都道府県ごとに助成基準が異なるため、対象年齢や扶養義務者の所得制限などの詳細は、お住まいの自治体窓口で確認することが重要です。

参考)心身障害者医療費助成

障害者手帳の医療費助成対象範囲

重度心身障害者医療費助成制度の対象となるのは、主に身体障害者手帳1級・2級・3級の所持者です。ただし、3級が助成対象となるかどうかは地域によって異なります。療育手帳の所持者や精神障害者保健福祉手帳の所持者も対象に含まれる自治体が多く見られます。

参考)重度障害者医療費助成制度 市町村別一覧(2025年4月1日現…


神奈川県では、身体障害者手帳1級・2級に加えて、IQが35以下の方、身体障害者手帳3級かつIQ50以下の方、精神障害者保健福祉手帳1級の方が対象となっています。精神障害者保健福祉手帳1級の場合は通院のみが対象となる点に注意が必要です。各自治体によって独自の上乗せ基準を設けているケースがあるため、詳細な対象範囲は市区町村の窓口で確認することをおすすめします。​

障害者手帳の医療費窓口負担額

医療機関の窓口で支払う金額は自治体によって大きく異なります。長野県では、18歳以上の対象者は医療費の1割から3割を窓口で支払い、後日自己負担額(0円~500円)を超えた分が給付される仕組みです。神奈川県では通院1回200円、入院1日100円の自己負担が設定されています。

参考)福祉医療費給付事業について/長野県


富士河口湖町のように受給要件を満たす方の医療費を全額助成する自治体も存在します。一方で、鳥取県では市町村民税課税世帯の場合、総医療費の1割負担で月額上限が外来2,000円・入院10,000円と設定されています。このように、完全無料化を実現している地域もあれば、一部負担が残る地域もあるため、お住まいの自治体の制度内容を正確に把握することが大切です。

参考)重度心身障害者医療費助成金


<参考>重度心身障害者医療費助成制度の詳細については、厚生労働省の障害者手帳に関するページで基本情報を確認できます
厚生労働省:障害者手帳について

障害者手帳の医療費助成申請に必要な書類

医療費助成を受けるための申請には、複数の書類が必要です。基本的な必要書類として、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかが必須となります。さらに印鑑、個人番号カードまたは通知カード、市外からの転入者の場合は所得証明も求められます。

参考)障害者医療費助成金支給申請書/金沢市公式ホームページ いいね…


金沢市の例では、実際に医療費の助成金を受け取る際に、障害者医療費証明書または領収書(原本)、障害者医療費受給者証、各種障害者手帳が必要とされています。代理人が申請する場合は印鑑も持参する必要があります。申請書類は住所地の福祉事務所や福祉課に提出しますが、自治体によって様式や添付書類が異なるため、事前に問い合わせておくと安心です。​

障害者手帳と自立支援医療制度の併用

精神疾患の治療を受ける方は、自立支援医療(精神通院医療)制度を利用することで、通院医療費の自己負担を軽減できます。この制度は、精神疾患(てんかんを含む)で通院による精神医療を続ける必要がある方を対象としており、医療費の自己負担が原則として1割に軽減されます。

参考)自立支援医療(精神通院医療)/精神保健福祉センター


自立支援医療では、1か月当たりの負担上限額が世帯の所得に応じて設定されています。生活保護世帯や市民税非課税世帯では上限額が0円から5,000円、市民税課税世帯では「重度かつ継続」に該当する場合に5,000円から20,000円の範囲で上限が決められます。重度心身障害者医療費助成制度と自立支援医療制度は併用可能な場合があり、両制度を活用することでさらに医療費負担を抑えられる可能性があります。

参考)こころの病気への助成


<参考>自立支援医療制度の詳細な自己負担額の仕組みについては、厚生労働省の公式資料で確認できます
厚生労働省:自立支援医療(精神通院医療)について

障害者手帳の医療費助成の所得制限

重度心身障害者医療費助成制度には所得制限が設けられており、受給者本人、配偶者、または扶養義務者の前年の所得が基準となります。扶養親族等がいない場合の目安として、受給者本人の所得額が3,604,000円、配偶者や扶養義務者の所得額が6,287,000円とされています。​
所得制限の具体的な基準は扶養親族等の人数や社会保険料の控除額によって変動します。長野県の例では、精神障害者保健福祉手帳1級・2級の所持者で本人及び同一世帯の方の所得が制限以内の場合に通院医療費のみが助成対象となります。18歳以下の場合は所得制限の適用が異なる自治体もあるため、詳しくは住所地の福祉事務所や福祉課に問い合わせることをおすすめします。

参考)福祉医療費給付金 – 長野市公式ホームページ

障害者手帳利用時の高額療養費制度との関係

障害者手帳を持つ方が医療費助成を受ける場合でも、高額療養費制度を併用することでさらに負担を軽減できます。高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った額が暦月で一定額を超えた場合、その超えた金額が支給される仕組みです。自立支援医療制度および心身障害者医療費助成で自己負担額が一定額を超えた場合、高額療養費制度が適用されて超過分が助成されます。

参考)https://chukyo.jcho.go.jp/wp-content/uploads/2015/03/re_sw001.pdf


入院する場合、加入する医療保険から事前に所得区分の認定証を発行してもらうことで、医療機関の窓口での支払を負担の上限額までにとどめることができます。例えば100万円の医療費で窓口負担(3割)が30万円かかる場合でも、認定証があれば約9万円の支払で済み、残りの約21万円は高額療養費として医療保険から直接医療機関に支払われます。複数の医療機関での自己負担額を合算して上限額を超える場合も、高額療養費制度を利用できます。

参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf


<参考>高額療養費制度と障害者医療費助成の併用方法については、各医療機関の医療ソーシャルワーカーに相談すると詳しい案内を受けられます
厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ

障害者総合支援法と障害者手帳の医療費負担

障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを利用する場合、所得に応じて4区分の負担上限月額が設定されています。生活保護受給世帯と市町村民税非課税世帯は負担上限月額が0円、市町村民税課税世帯で所得割16万円未満の場合は9,300円、それ以上の所得がある場合は37,200円が上限となります。

参考)障害者の利用者負担|厚生労働省


基本的には障害者手帳を持っている方が支援の対象となりますが、障害者認定区分に当てはまる場合は手帳を持っていない方でも障害者総合支援法のサービスを受けられるケースがあります。障害福祉サービスの自己負担は負担能力に応じた仕組みとなっており、負担上限月額に至るまではサービス利用費用の1割を負担する形です。18歳以上の障害者の場合、所得を判断する世帯の範囲は障害のある方とその配偶者となります。

参考)障害者総合支援法の負担上限月額の軽減の仕組みについて教えてく…

障害者手帳による医療費無料化を実現している自治体の特徴

全国には医療費の完全無料化や大幅な助成を実施している先進的な自治体が存在します。富士河口湖町では、受給要件を満たす重度心身障害者の医療費を全額助成しており、窓口での支払がほぼ不要となっています。このような自治体では、障害者の経済的負担を大きく軽減し、安心して医療を受けられる環境が整備されています。​
一方で、多くの自治体では一部自己負担が設定されており、その金額や計算方法は地域ごとに多様です。島根県では1割負担で1医療機関ごとに月額上限が設けられ、20歳以上の場合は入院20,000円・外来6,000円、市町村民税非課税世帯では入院2,000円・外来1,000円となっています。医療費無料化の程度は自治体の財政状況や施策の優先度によって変わるため、転居を検討する際には移転先の医療費助成制度を事前に調査することが重要です。

参考)https://scdmsa.tokyo/data/media/posts/230210/20160714-123036-9706.pdf


<参考>全国の障害者医療費助成制度の比較については、日本ALS協会が公開している都道府県基準の一覧資料が参考になります
日本ALS協会:47都道府県の障害者医療費助成制度