植物ステロールとはとコレステロールの関係

植物ステロールとはとコレステロール

植物ステロールとはのポイント概要
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構造とコレステロール類似性

植物ステロールとは、コレステロールとよく似たステロール構造をもつ脂質であり、高等植物の細胞膜成分として存在することが特徴です。主成分はβ-シトステロール、カンペステロール、スティグマステロールなどで、40種類以上が同定されています。

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LDLコレステロール低下作用

植物ステロールとは、小腸でのコレステロール吸収を競合的に阻害し、血清LDLコレステロールを約10%低下させることが多数のメタ解析で示されています。スタチンとの併用では、さらに7〜20%の追加低下が報告されています。

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食品・摂取量と安全性

植物ステロールとは、通常の食事から1日300〜400mg程度摂取されており、LDL低下効果を期待する場合は1.5〜2g/日以上の強化食品摂取が推奨されています。一方で植物ステロール過剰は脂溶性ビタミンやカロテノイド吸収低下など、注意すべき点もあります。

植物ステロールとはの基礎とコレステロールとの違い

 

植物ステロールとは、高等植物に含まれるステロールの総称であり、動物におけるコレステロールに相当する細胞膜構成成分です。

その構造はコレステロールときわめて類似していますが、側鎖にメチル基やエチル基を持つことが多く、この微妙な違いが吸収性や機能性の差につながります。

代表的な植物ステロールとして、β-シトステロール、カンペステロール、スティグマステロールなどが挙げられ、植物油や穀類胚芽に多く含まれます。

参考)植物ステロール

これらは脂溶性であり、他の脂質とともにミセルを形成して腸管内を移動しますが、人では吸収率が数%以下と低く、大部分は糞中に排泄されることが知られています。

参考)https://www.jfrl.or.jp/storage/file/news_no57.pdf

コレステロールと比較すると、植物ステロールは小腸上皮細胞に取り込まれにくいだけでなく、ABCG5/G8トランスポーターを介して腸管腔側へ能動的に排出される点が大きな違いです。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/3/8/3_395/_pdf

そのため血中植物ステロール濃度は通常きわめて低く、一部の遺伝性疾患(シトステロール血症)を除き、健常人では蓄積の問題は起こりにくいと考えられています。

参考)https://www.nibn.go.jp/eiken/info/pdf/k231.pdf

植物ステロールとは、栄養素というよりは「第7の栄養素」とも呼ばれるファイトケミカルの一種として位置づけられることもあり、抗酸化作用や細胞膜安定化などの機能も検討されています。

医療従事者としては、脂質代謝だけでなく、炎症や免疫への影響など、多面的な作用が議論されている点を押さえておくと説明の幅が広がります。

基礎的な定義や構造の違いについては、独立行政法人 国立健康・栄養研究所の成分情報資料が整理されています。

国立健康・栄養研究所 植物ステロール成分情報(定義・構造・基礎データの参考)

植物ステロールとはの作用機序とLDLコレステロール低下効果

植物ステロールとは、小腸腔内でコレステロールと競合してミセルに取り込まれ、コレステロールの取り込み量を低下させることで吸収を阻害します。

その結果、小腸から門脈血へのコレステロール流入が減少し、肝臓内コレステロールプールが低下、肝細胞のLDL受容体発現が増加し、血中LDLコレステロールのクリアランスが促進されると考えられています。

複数の臨床試験とメタ解析では、植物ステロール1〜3g/日を4〜6週間摂取した際に、LDLコレステロールが平均で約10%低下することが示されています。

参考)植物ステロールがコレステロールを下げる?その効果と注意点を解…

特に2g/日前後が効果の上限に近い用量とされ、それ以上摂取しても追加効果は限定的であるとの報告が多く、実臨床での指導時には「2g前後」を一つの目安とすることが実務的です。

参考)植物ステロールについて

スタチン治療中の患者に植物ステロールを2〜2.5g/日添加した試験では、スタチン単独に比べてLDLコレステロールがさらに7〜20%低下したと報告されており、薬物療法に上乗せする栄養学的介入として位置づけられています。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/7/10/7_437/_pdf

一方で、HDLコレステロールやトリグリセリドへの影響は軽度〜不変との報告が多く、主たるターゲットはLDLコレステロールと理解すると整理しやすいでしょう。

近年の研究では、植物ステロール強化食品がnon-HDLコレステロールやアポB低下にも寄与しうることが示され、残余リスク低減の観点からも注目されています。

Ⅱ型糖尿病患者を対象とした試験でも、植物ステロール8%含有食を12週間摂取させた結果、LDLコレステロール上昇が有意に抑制され、高脂血症および循環器疾患予防に有用である可能性が報告されています。

作用機序と臨床試験の概要については、日本食品分析センターの解説資料がわかりやすく整理されています。

日本食品分析センター 植物ステロールについて(作用機序・臨床試験の参考)

植物ステロールとはの食品由来摂取量・トクホ・機能性表示の実際

一般的な日本人食では、植物ステロール摂取量は1日あたりおよそ300〜400mgと推定されており、主な供給源は植物油、穀類(特に胚芽部)、豆類、ナッツ類などです。

食品成分表や分析データでは、とうもろこし油、菜種油、こめ油、オリーブ油などの精製植物油に比較的高濃度の植物ステロールが含まれることが示されています。

LDLコレステロール低下を目的とする場合、通常の食事由来300〜400mg/日では不十分であり、1.5〜2g/日以上の摂取が必要とされています。

このため、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品では、マーガリン、ヨーグルト、飲料などに植物ステロールまたはそのエステルが強化され、1日摂取目安量として1.6〜2.4g程度が設定されている製品が多くみられます。

以下は、食品中の植物ステロール含量の一例です(100gあたり概算値)。

参考)https://nanbyo-lipid.com/wp/wp-content/uploads/2022/11/%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%90%AB%E6%9C%89%E9%87%8F%E8%A1%A8%EF%BC%88%E5%90%8D%E7%A7%B0%E9%A0%86%EF%BC%89.pdf

食品 植物ステロール量(mg/100g)
とうもろこし油 約900〜1,000
こめ油 約800〜900
オリーブ油 約300前後
大豆油 約300〜400

医療従事者が栄養指導を行う際には、「通常の食事にトクホ・機能性表示食品を1〜2品追加する」ことで2g前後に到達するイメージを共有すると、患者が具体的な摂取イメージを持ちやすくなります。

一方で、高カロリーなスプレッド製品や菓子類で摂取する場合は、エネルギー・飽和脂肪酸の過剰摂取につながるリスクもあり、脂質全体の質と量を含めた指導が求められます。

トクホ・機能性表示食品としての位置づけは、わかさ生活などの成分解説サイトが整理しています。

わかさの秘密 植物ステロール(食品・健康効果の参考)

植物ステロールとはの安全性・注意点とあまり知られていない論点

植物ステロールとは、一般的な摂取量では安全性が高いと評価されている一方で、強化食品からの高用量摂取に関してはいくつかの注意点が指摘されています。

特に、植物ステロールのミセル占拠によってコレステロールだけでなく脂溶性ビタミンやカロテノイドの吸収も部分的に低下しうる点は、患者指導であまり語られないものの重要なポイントです。

観察研究や介入試験では、植物ステロール強化食品摂取により血中β-カロテンやリコペン濃度が数%〜10数%低下することが報告されており、野菜摂取量が少ない人では相対的な抗酸化能の低下が懸念されます。

そのため、高コレステロール血症患者に植物ステロール食品を勧める場合には、「色の濃い野菜をしっかり摂る」「脂溶性ビタミン不足が疑われる場合はモニタリングする」といった具体的助言が有用です。

また、まれではありますが、シトステロール血症(植物ステロールが異常に吸収・蓄積する遺伝性疾患)では、植物ステロールが動脈硬化のリスクを高める可能性が指摘されています。

家族性高コレステロール血症類似の若年発症冠動脈疾患歴や、血中植物ステロール高値が疑われる症例では、強化食品をむしろ避けるべきケースもあり、画一的な推奨は避ける必要があります。

臨床的に見落とされがちな論点として、植物ステロールは腸管バリアに局所的に作用して免疫細胞(特にNK細胞)を活性化し、感染防御や腫瘍免疫に影響する可能性が報告されています。

こうした免疫調節作用はまだエビデンスが限られているものの、将来的には「脂質管理+免疫調節」という二重の観点から利用が検討されるかもしれません。

安全性や脂溶性ビタミンへの影響については、オレオサイエンス誌などの総説が詳細です。

Oleoscience 植物ステロール総説(安全性・脂溶性ビタミンへの影響の参考)

植物ステロールとはとスタチン治療・管理薬剤師業務での活かし方

植物ステロールとは、スタチン治療中の患者に対する「追加のLDL低下手段」として位置づけられ、特に目標値にあと10〜20%届かない症例で検討されることが多くあります。

スタチンは肝臓でのコレステロール合成を抑制し、植物ステロールは腸管での吸収を抑制するため、作用部位が補完的であり、両者の併用で相加〜相乗的なLDL低下が期待できます。

管理薬剤師や病棟薬剤師の立場では、処方薬だけでなくトクホ・機能性表示食品の利用状況を聴取し、植物ステロール2g/日前後が確保できているかを具体的に確認することが実務上重要です。

参考)植物ステロールの作用機序

例えば、「スタチン内服+植物ステロール強化ヨーグルト1本+スプレッド10g程度」で2g前後に到達しうることを把握しておくと、患者ごとに現実的な提案がしやすくなります。

一方で、胆汁酸吸着薬やエゼチミブなど、同じく腸管でのコレステロール吸収に関わる薬剤との併用では、理論上はさらなるLDL低下が期待されますが、脂溶性ビタミン低下などの副作用リスクにも注意が必要です。

また、高齢者や低栄養リスク患者に対して、カロリー過剰やビタミン不足を助長しないよう、食品選択と用量を丁寧に調整する視点が求められます。

臨床現場では、「植物ステロール=健康によいからたくさん摂るほどよい」と理解している患者も少なくありません。

医療従事者としては、エビデンスに基づいた至適用量(1.5〜2g/日程度)と、適切な摂取タイミング(食事とともに、毎日継続すること)を具体的に伝え、過不足のない利用をサポートすることが重要です。

薬剤との併用や管理薬剤師視点での整理には、管理薬剤師向けサイトの解説が参考になります。

管理薬剤師.com 植物ステロールの作用機序(スタチン併用・実務への応用の参考)

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