処方箋書き方と記載事項と用法用量の基本

処方箋書き方

この記事でわかること
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記載事項の必須ポイント

医師法施行規則に基づく「処方箋に必ず書くべき項目」と、保険診療の様式ルールを整理します。

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用法用量で起きるミスの芽

「医師の指示通り」「用法口授」など曖昧表現を避け、薬局側の解釈ブレを減らす書き方を解説します。

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疑義照会を減らす設計

疑義照会の法的位置づけと、先回りして記載しておくと連携がスムーズになるポイントをまとめます。

処方箋書き方の記載事項と交付年月日

 

処方箋は「薬のメモ」ではなく、医師(歯科医師)が患者へ交付する法的な文書です。厚生労働省の資料でも、医師法施行規則第21条に基づく処方箋の記載事項として、患者の氏名・年齢、薬名、分量、用法・用量、発行年月日、使用期間、医療機関の名称・所在地(または医師住所)、そして記名押印または署名が示されています。

この「発行の年月日(交付年月日)」は、処方箋の有効期間と直結します。保険診療の運用では、処方箋の使用期間は原則「交付の日を含めて4日以内」で、例外として長期旅行など特殊事情があるときに延長・短縮が可能、と整理されています。

現場で意外に起きるのが「休日をまたいで期限切れ」です。処方箋の使用期間には休日・祝日も含まれるため、患者説明で“提出期限”まで言い切ると、後日の再発行・問い合わせ対応が減ります(書式上の注意としてマニュアルでも周知が求められています)。

処方箋書き方の医薬品名と一般名処方と変更不可

医薬品名の書き方は、①一般的名称に剤形と含量を付した「一般名処方」、または②薬価基準に記載された名称での記載が基本で、「略称」や、医療機関と薬局の間で通じる“約束処方(記号等)”は認められない、と明確に整理されています。

また「一般名処方の場合には会社名(屋号)を付加しない」こともルールとして示されています。

後発医薬品(ジェネリック)への変更を不可にする場合は、処方薬ごとに「変更不可(医療上必要)」欄へチェック等を付し、備考欄の署名(または記名押印)とセットで、患者・薬局の双方に“変更不可”が明確に分かる形で示すことが求められます。

逆に、一般名処方は「先発か後発かといった個別銘柄にこだわらない」趣旨であり、一般名処方に対して「変更不可」欄が使われることはあり得ない、という注意も明記されています。

ここが少し意外な盲点ですが、処方側が“意図せず一般名処方と銘柄処方を混在”させると、薬局で「この1剤だけ銘柄固定なのは医療上必要か、患者希望か、単なる選択か」が読めず、疑義照会の引き金になりやすいです。固定したい理由がある薬だけを銘柄名で書き、理由(例:剤形変更不可、含量規格変更不可など)を近傍へ明示する運用は、連携コストを下げます。

処方箋書き方の分量と用法用量と投与日数

処方欄には、投薬すべき医薬品名だけでなく「分量、用法及び用量」を記載し、余白がある場合は斜線等で余白である旨を表示する、という基本ルールが示されています。

分量の書き方は薬剤形態で異なり、内服薬は1日分量、滴剤・注射薬・外用薬は投与総量、屯服薬は1回分量とされています。

用法・用量の要件は思った以上に“情報量が多い”のがポイントで、1回当たりの服用(使用)量、1日当たりの回数、服用(使用)時点(毎食後・就寝前・疼痛時・○時間毎等)、投与日数(回数)、留意事項等を記載することが求められます。

したがって「医師の指示通り」「用法口授」のような曖昧表現は、マニュアル上も不適切例として挙げられ、疑義照会の対象になり得ます。

外用薬はさらに落とし穴が多く、鎮痛・消炎の貼付薬については「1回当たりの使用量」と「1日当たりの使用回数または投与日数」を必ず書くよう求められています。

つまり、“湿布は枚数だけ書けば通る”という感覚は危険で、部位(腰など)や回数、1回の枚数まで書いて初めて、薬局側が説明と監査を完結できます。

処方箋書き方の疑義照会と薬剤師法第24条

疑義照会は「薬局からのクレーム」ではなく、薬剤師に課された法的義務に根拠があります。薬剤師法第24条により、処方箋中に疑わしい点があるときは、処方箋を交付した医師等に問い合わせて疑義を確かめた後でなければ調剤してはならない、と整理されています。

さらに保険診療の枠組みでも、保険医は疑義照会があった場合に適切に対応することが求められる旨が示されています。

疑義照会を減らす実務のコツは、「問い合わせが起きる論点を、処方箋だけで閉じる」ことです。たとえば、①頓服は“いつ・何回まで・間隔”が読み取れるか、②週1回製剤などは曜日指定があるか、③吸入薬は臨時使用の上限が書かれているか、といった“薬局監査で必ず止まるポイント”を、最初から文章化します(曖昧語を避ける)。

なお、疑義照会の結果(回答内容)は処方箋や薬歴等に記録され得ることが、制度資料でも言及されています。照会が多いと、医療機関側も薬局側も「記録コスト」が積み上がるため、処方箋の設計で減らす価値は大きいです。

参考)https://www.fpa.or.jp/library/iryohoken/sinsa201205.pdf

処方箋書き方の独自視点:余白と標準用法用語

検索上位の解説は「何を書くか」に寄りがちですが、現場の事故は「どう読まれるか(解釈の揺れ)」で起きます。マニュアルでは、余白がある場合は斜線等で余白を示すことが明記されており、紙運用では追記・改ざん疑義を生みにくくする“地味に効く安全策”です。

もう一つの意外なポイントは、電子処方箋への移行を見据えると、用法は“標準化”が避けられない点です。マニュアル内でも、用法の曖昧表現を避け、日本語で明確に記載すること、そして電子処方箋での標準用法用語への集約が前提になることが説明されています。

つまり、いま紙で「院内ローカル用法マスタ」に頼り切っている施設ほど、将来の変換・集約でエラーが出やすくなります(例:同じ意味の用法が複数コードで存在、外用部位が曖昧、頓用条件が自由記載で揺れる)。

処方箋の書き方を“法令遵守のため”だけでなく、“データとして崩れない日本語”として整えると、薬局での説明品質が上がり、患者の再質問・飲み間違い・受診やり直しも減りやすくなります。結果として、医師—薬剤師連携の摩擦(疑義照会、トレーシングレポート、問い合わせ)が減り、診療時間を守ることにも繋がります。

有用:処方箋の記載事項(医師法施行規則第21条、使用期間4日、疑義照会など法令根拠の一次資料)

厚生労働省:処方箋の交付等に関連する法令の規定(PDF)

有用:院外処方箋の基本ルール、用法用量の具体要件、曖昧表現が疑義照会になり得る点、余白処理など実務の注意点

神奈川県薬剤師会:院外処方箋の正しい書きかた(改訂11版・PDF)

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