処方箋保管期間5年はいつから
処方箋保管期間5年 いつからの起算点(調剤済み)
現場で一番多い混乱が「5年をいつから数えるか」です。電子処方箋管理サービスの資料では、保存開始日以降に保管登録された調剤済み処方箋が「調剤年月日から5年間保存」と説明されており、起算点は“調剤が完了した日(調剤年月日)”として運用設計されていることが読み取れます。
また、厚労省が公開している「法令上作成保存が求められている書類」の一覧では、薬局が保存する「調剤済み処方せん」は「3年間」、保存義務者は「薬局開設者」、根拠は薬剤師法第27条と整理されています。
つまり「いつから?」への基本回答は、少なくとも“処方箋の保管は調剤完了(調剤済み)を基点に数える”という考え方で統一しておくのが実務上安全です。
一方で、医療機関側の感覚(カルテ=5年)と薬局側の感覚(処方箋=3年)を同じ「5年」と混ぜると誤解が起きます。厚労省の同一覧では、医師の診療録は医師法第24条で「5年間」と明確に示され、保存義務者も管理者等に定義されています。
このズレが、近年の医療DX・情報連携の文脈で「処方箋等も5年へ」という議論につながりやすい背景です(“今すぐ全てが法的に5年へ完全移行した”と早合点しないことが重要です)。
参考)処方箋保存期間を検討~現行の3年から5年へ 厚生労働省
実務の置き換えルール(例)を決めるなら、次のように「日付フィールドを固定」すると監査対応が楽になります。
- 紙処方箋:薬局内の保管箱・スキャンデータともに「調剤年月日」をキーに廃棄予定日を管理する。
- 電子処方箋:電子処方箋管理サービスの保存仕様に合わせ「調剤年月日ベース」で照会できる状態を作る。
- 調剤録:最終記入日が基点になる条文整理があるため、追記運用のある施設は“最終記入日”も別管理する。
処方箋保管期間5年 いつからと調剤録保存の違い
処方箋と調剤録は、どちらも調剤の証拠資料ですが「性格」が違います。厚労省の一覧では、調剤録は薬剤師法第28条を根拠に「3年間」、保存義務者は薬局開設者とされています。
同じ一覧の中でも「調剤済み処方せん(薬剤師法第27条)」と「調剤録(薬剤師法第28条)」が分けて掲載されているため、監査・指導の場面では別書類として見られる前提で準備すべきです。
したがって「5年はいつから?」を議論するときも、“処方箋の保存年限の話なのか、調剤録の保存年限(あるいは推奨)の話なのか”を必ず分離して説明すると、院内・薬局内の合意形成が早くなります。
現場の落とし穴として、次がよく起こります。
- 処方箋を電子化(スキャン)したが、調剤録への追記が発生し、最終記入日が更新される運用になっているのに、廃棄基準を「調剤年月日」に固定したままになっている。
- 「診療録5年」を知っているスタッフが、処方箋も当然5年と誤認し、保存スペース・電子ストレージ計画が過大になる(または逆に3年で廃棄してよい資料まで5年残して検索性が落ちる)。
さらに、紙と電子が混在すると「原本性」の議論が出ます。電子処方箋管理サービスの説明では、保存した調剤結果データは“原本として扱うことができ、監査等の際に取り出すことも可能”とされています。
参考)厚生労働省、処方箋の保存5年に延長へ 電子化促す – 日本経…
この表現は、監査対応の設計に直結します。すなわち「何を原本として提示するのか(紙か、サービスからの取得データか)」を施設内手順書に落とし込み、スタッフが迷わないようにしておくと事故が減ります。
処方箋保管期間5年 いつからと電子処方箋管理サービス
電子処方箋の普及で、保存の“作業”は軽くなりましたが、“設計”はむしろ重要になりました。厚労省資料では、薬局が電子処方箋で調剤を行うと調剤結果を作成し電子署名し、電子処方箋管理サービスへ登録、タイムスタンプが付与されたデータを返却して保管する流れが示されています。
また、同資料には「電子処方箋だけでなく紙処方箋の調剤結果データも5年間保存できる、希望制の有償サービス(年2,500円)」と明記されています。
つまり「5年保存」の文脈は、少なくとも“電子的に5年保存できるインフラが公式に用意されている”という点で、実務の選択肢として現実味が高い状態です。
ここでの実務ポイントは「いつから5年保存になるか」より先に、「いつからそのサービスに載せたデータが5年保存対象になるか」です。資料には“保存開始日以降に保管登録があった調剤済み処方箋が、調剤年月日から5年間保存される”と説明されています。
したがって、導入初期にやるべきことは「保存開始日」「対象範囲(電子処方箋のみ/紙も含めた調剤結果)」「過去分の取り込み可否」をチェックして、現場のオペレーション(誰がいつ登録するか)を決めることです。
なお、資料には“既に調剤した処方箋も、調剤結果登録日から100日以内であれば保管可能”という制約も書かれているため、過去分の移行を考える施設はスケジュールを先に引く必要があります。
運用設計のチェックリスト(例)です。
- 監査用の取り出し手順:サービスから取得するのか、薬局内保管データを提示するのか。
- 紙処方箋の扱い:紙そのものを何年保管し、調剤結果データは何年保管するのか(両方残すのか)。
- 災害対策:クラウド保管で紛失リスクが低い旨が説明されているため、BCPの根拠にできるか。
参考:電子処方箋の調剤結果を5年間保存する仕組み(タイムスタンプ、保存開始日、100日ルール、年2,500円)が載っています(電子処方箋管理サービスの運用設計の根拠に有用)。
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001231540.pdf
処方箋保管期間5年 いつからを監査・訴訟リスクで考える
「法令で何年か」だけでなく、「後から説明できるか」で保存年限を決めると現場の納得感が上がります。厚労省の一覧では、診療録は医師法第24条で5年保存が明確で、医療機関側は“5年を前提に記録が残る”世界観で動いています。
一方、薬局側は処方箋・調剤録が3年という整理が提示されており、医療機関—薬局間で“記録が残っている期間”にギャップが生まれ得ます。
このギャップは、疑義照会の経緯照合、薬歴・調剤録の追跡、監査時のサンプリング、あるいは患者説明が時間差で求められるケースで「片側にしか記録がない」状況を作りやすい点が実務上の痛点です。
医療安全の観点では、保存年限が長いほど常に良いわけではなく、「検索できない長期保管」はむしろ有害になることがあります。電子処方箋管理サービスは“いつでも取得できる”と説明されているので、保存と取り出し(検索性)がセットで担保される設計に寄せやすいのが利点です。
反対に、紙で5年を徹底すると、保管スペース、棚卸し、廃棄証跡、個人情報管理の負担が増え、現場が“保管のための作業”に引っ張られがちです。
そのため、施設としては「紙は法定年限+監査・地域連携で必要な範囲」「電子は5年保存を軸に検索性を担保」など、媒体別に役割を分ける方針が現実的です。
処方箋保管期間5年 いつからの独自視点(廃棄の証跡)
検索上位記事は「何年保存?」に集中しがちですが、実地指導・内部監査で効いてくるのは“廃棄の説明責任”です。厚労省の一覧のように、書類ごとに保存義務者(薬局開設者等)が定義されている以上、「いつ、誰が、どの基準で廃棄したか」を説明できないと、年限を守っていても運用の弱さとして指摘される余地があります。
特に、電子処方箋管理サービスのように“保存開始日”という概念があると、開始日前後で保存場所や保存年限が分岐し、説明が複雑になります。
ここは“法令知識”より“運用設計”の領域なので、意外と盲点になりやすいポイントです。
廃棄の証跡を残す方法(例)を、現場で回せる粒度に落とすと次のようになります。
- 廃棄台帳を作る:廃棄日、対象期間(調剤年月日)、件数、廃棄責任者、廃棄方法(溶解/裁断/業者委託)を1行で記録する。
- 例外フラグを作る:訴訟・監査・照会中・事故調査中など、廃棄停止の理由をチェックボックスで持つ(理由がある限り残す)。
- 媒体ごとの整合:紙を廃棄しても電子側に原本相当が残るのか、逆に電子は外部サービスで紙が原本扱いなのかを手順書に明記する。
参考:処方箋・調剤録が「3年間」、診療録が「5年間」など、書類別に根拠と保存期間が一覧化されています(院内の規程・教育資料づくりの根拠に有用)。