下斜筋麻痺 症状
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下斜筋麻痺 症状:複視 斜視 眼球運動 障害の出方
下斜筋麻痺(単独)という言い方は臨床的には便利ですが、実際には「下斜筋の遅動(underaction)を主所見とする状態」を含めて扱う場面が多く、真の単独麻痺は非常に稀だと古くから指摘されています。
日本眼科学会誌PDF:下斜筋不全(遅動)の症状を呈する疾患の研究(稀少性・原因内訳・回旋偏位と斜頸の関係が詳しい)
症状の中心は「眼位ずれ(上下斜視や回旋成分を伴う斜視)による複視」です。麻痺性斜視は突然複視を自覚することが特徴で、麻痺筋が作用する方向を見ると眼位ずれが増え、複視が強くなるため、患者は無意識に頭を回したり傾けたりして見やすい方向を探します。
一方で、先天性や乳幼児では複視を自覚しにくく、複視を避けるための代償が長期化すると、弱視や両眼視機能の未発達につながる点が「成人の複視」とは別の臨床課題になります。
下斜筋が関与する眼球運動の破綻は、「特定方向での上転が弱い(遅い)」として現れますが、現場では“眼球運動が動きにくい”という訴えよりも、生活場面での困りごととして語られることが多いです。
- 📌よくある訴え(問診で拾う)
- 「物が二重に見える(とくに特定の視線方向で)」
- 「首を傾けると見やすい/いつも同じ方向に傾けている」
- 「見づらい方向を避ける癖がある(視線の回避)」
ここで注意したいのは、「複視=常に眼科だけの問題」ではないことです。麻痺性斜視にはさまざまな原因があり、命に関わる疾患が潜むことがあるため、複視に気づいたら早期に眼科へ受診し原因検索を行うべきだとされています。
下斜筋麻痺 症状:回旋偏位 眼性斜頸の見方
下斜筋不全(遅動)を主症状とする100例を解析した報告では、先天性が37.0%、後天性が63.0%と、後天性の頻度が高かったとされています。
さらに、その後天性の原因は重症筋無力症・外傷・原因不明が多く、特に重症筋無力症と外傷が大きな割合を占めたと整理されています。
意外に臨床で効くのが「回旋偏位」と「斜頸(眼性斜頸)」の組み合わせです。報告では、New Cyclo Tests(NCT)で回旋偏位を評価すると、先天性は回旋偏位なしが多い一方、後天性では外回旋偏位(excyclodeviation)が多かったという結果が示されています。
参考)http://doi.med.wanfangdata.com.cn/10.3760/cma.j.issn.1673-4904.2008.03.031
しかも、後天性の下斜筋不全は患側への斜頸を呈しながら外回旋偏位を示す例が多く、見かけ上「下斜筋だけが悪い」ように見えても、実際は他筋の関与が示唆される、と考察されています。
- 🧭診察での観点(医療従事者向けメモ)
- 斜頸があるか(有無)
- 斜頸の向きが患側か健側か(術後例など例外も報告)
- 回旋偏位が内回旋/外回旋/なしのどれか(先天と後天で傾向差)
「斜頸があるのに回旋偏位の方向が予想と合わない」ケースは、見落としやすい“混合病態”のサインになり得ます。報告でも、後天性、とくに重症筋無力症では下斜筋単独の関与ではない可能性が述べられ、診断の補助としてlid twitch sign(Cogan徴候)とNCTが有用とされています。
下斜筋麻痺 症状:先天性 後天性の違い
麻痺性斜視は「突然の複視」が典型ですが、先天性麻痺や乳幼児では複視を自覚しないことがある、という大枠はまず共有しておくべき前提です。
先天性では、複視の代わりに頭位異常が前景に立ち、顔面非対称などの二次的変化が問題になることもある(少なくとも滑車神経麻痺ではそうした説明がなされている)ため、問診では幼少期からの写真や家族の気づきが手掛かりになります。
一方、下斜筋不全(遅動)の原因を先天/後天で分けた研究では、先天性はBrown症候群や原因不明が主体、後天性は重症筋無力症や外傷が主体とされています。
この整理は、現場の「原因検索の順番」を決めるうえで非常に実務的です。たとえば、外傷歴がなければ“まず重症筋無力症を鑑別に置くべき”という提案が明示されています。
なお、麻痺性斜視の総論として、原因により必要な検査(CT/MRIなど)が急がれることがある点は強調されます。複視、眼球運動障害、眼瞼下垂、瞳孔異常などがあれば、原因を早急に調べる必要があるとされています。
下斜筋麻痺 症状:重症筋無力症 外傷の落とし穴
下斜筋不全(遅動)100例の解析では、後天性が63%で、その主因として重症筋無力症・外傷が大きな割合を占めたことが示されています。
ここが「意外なポイント」で、従来、下斜筋の異常は先天性とみなされがちだった背景に対して、実臨床では後天性が想像以上に多い可能性が示唆されています。
重症筋無力症の落とし穴は、「眼球運動の所見が“ある筋の麻痺”に見える」のに、実際は神経筋接合部障害として複数筋が程度差で障害され得る点です。報告でも、後天性、とくに重症筋無力症では下斜筋単独の関与ではないと考えられ、診断にlid twitch signとNCTが有用と述べられています。
さらに、下斜筋不全を主症状とした重症筋無力症では、lid twitch signが高率(90%)にみられた、という具体的データも提示されています。
外傷の落とし穴は、「単独筋麻痺」より「複合的な障害(眼窩壁骨折、滑車神経の両側性障害、術後性変化)」として現れやすいことです。報告でも外傷にはBrown症候群、眼窩吹き抜け骨折などが含まれて分類されています。
- ⚠️紹介判断の赤旗(現場の安全運用)
- 急性発症の複視+頭痛、神経症状の併存(早急な原因検索)
- 眼瞼下垂や症状の日内変動(重症筋無力症を疑い神経内科連携)
- 外傷後の複視(骨折や複合障害の評価が必要)
下斜筋麻痺 症状:独自視点 眼性斜頸と転倒リスク
麻痺性斜視では、複視が強くなる方向を避けるために頭を回したり傾けたりして代償する、と説明されています。
この代償は診断の手掛かりである一方、医療安全の観点では「視線と頭位のクセ」が歩行や階段動作に影響し得る点が見落とされがちです。たとえば滑車神経麻痺では下方視で複視が強く、階段を降りるのが困難になる、という具体的な生活障害が記載されています。
下斜筋麻痺(または下斜筋不全を主所見とする状態)でも、眼性斜頸が固定化すると、視線誘導が不自然になり、段差・階段・狭所でのふらつきや転倒不安につながることがあります。麻痺性斜視一般として「見やすい方向に頭を回す/傾ける」代償が起こる点が明記されているため、生活指導としては十分に射程に入ります。
- 🧑⚕️現場で使える一言(患者説明の骨子)
- 「二重に見えるのは目の位置がずれるためで、見やすくするために首が傾くことがあります」
- 「急に始まった複視は、原因の確認が大切なので早めに受診が必要です」
- 「日によって良い悪いが変わる、まぶたが下がる場合は別の病気も疑うので追加検査が必要です」
【権威性のある参考リンク(麻痺性斜視の総論:原因の多彩さ、症状、早期受診の重要性、動眼/滑車/外転神経麻痺のポイント)】