シスプラチン 投与方法と禁忌、副作用の重要ポイントと対策

シスプラチン 投与方法と禁忌、副作用

シスプラチンの基本情報
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抗悪性腫瘍剤

白金製剤に分類される抗がん剤で、様々な固形がんの治療に使用されます

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主な副作用

腎障害、骨髄抑制、消化器症状、聴覚障害など多岐にわたります

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投与方法

複数の投与法(A法〜I法)があり、疾患や症状に応じて選択します

シスプラチンは多くの悪性腫瘍に対して効果を示す抗がん剤です。適切な投与方法の選択と副作用管理が治療成功の鍵となります。本記事では、医療従事者が知っておくべきシスプラチンの投与方法、禁忌事項、副作用とその対策について詳しく解説します。

シスプラチン 投与方法の種類と適応

シスプラチンの投与方法は、疾患や症状によって複数のプロトコルが存在します。主な投与方法は以下のように分類されています:

  • A法:シスプラチンとして15~20mg/m²(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
  • B法:シスプラチンとして50~70mg/m²(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
  • C法:シスプラチンとして25~35mg/m²(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも1週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
  • D法:シスプラチンとして10~20mg/m²(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
  • E法:シスプラチンとして70~90mg/m²(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
  • F法:シスプラチンとして20mg/m²(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
  • G法:シスプラチンとして100mg/m²(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
  • H法:シスプラチンとして75mg/m²(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも20日間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
  • I法:シスプラチンとして25mg/m²(体表面積)を60分かけて点滴静注し、週1回投与を2週連続し、3週目は休薬する。これを1クールとして投与を繰り返す。

また、他の抗がん剤との併用療法も確立されています。例えば、M-VAC療法では、メトトレキサート、ビンブラスチン硫酸塩、ドキソルビシン塩酸塩との併用において、シスプラチンとして70mg/m²を静注します。標準的には、メトトレキサート30mg/m²を1日目に投与した後、2日目にビンブラスチン硫酸塩3mg/m²、ドキソルビシン塩酸塩30mg/m²、シスプラチン70mg/m²を静注します。15日目と22日目にはメトトレキサート30mg/m²とビンブラスチン硫酸塩3mg/m²を静注し、これを1コースとして4週毎に繰り返します。

投与量は患者の状態、疾患、症状により適宜増減することが重要です。

シスプラチン 腎毒性対策と投与時の注意点

シスプラチンの最も重要な副作用の一つが腎毒性です。腎障害を軽減するための対策は投与時に必須となります。以下に主な対策と注意点をまとめます:

腎毒性を軽減するための水分負荷

  1. 従来法(標準的水分負荷)
    • 本剤投与前に1,000~2,000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与
    • 本剤投与時には投与量に応じて500~1,000mLの生理食塩液またはブドウ糖-食塩液に混和し、2時間以上かけて点滴静注
    • 本剤投与後には1,000~2,000mLの輸液を4時間以上かけて投与
  2. Short Hydration法
    • 補液2~2.5L+経口補水1L(day1-3)
    • 外来治療でも実施可能
    • 利尿の確保と電解質バランスの維持が重要

腎機能低下予防のための追加対策

  • マグネシウム製剤の投与(硫酸マグネシウム8mEqなど)
  • マンニトールなどの利尿剤の使用(20%マンニトール300mLなど)
  • 適切な電解質補正(ナトリウム、カリウムなど)

腎機能に応じた投与量調整

腎機能(GFRまたはCcr) 投与量調整
>80mL/min 減量なし
60-80mL/min 減量なし
46-60mL/min 75%に減量
31-45mL/min 50%に減量
<30mL/min 禁忌(必要な場合は50%に減量)
血液透析患者 禁忌(必要な場合は透析後に50%に減量)

シスプラチン投与時には、腎機能の定期的なモニタリングが不可欠です。血清クレアチニン値、クレアチニンクリアランス、BUN値などを治療前および治療中に測定し、腎機能の変化を早期に発見することが重要です。

シスプラチン 投与の禁忌事項と慎重投与

シスプラチンの投与にあたっては、以下の患者には投与を避けるべきです:

絶対的禁忌

  1. 重篤な腎障害のある患者
    • 腎障害を増悪させるリスクがあります
    • 腎からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現する可能性があります
  2. 本剤または他の白金を含む薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
    • アレルギー反応のリスクが高まります
  3. 妊婦または妊娠している可能性のある婦人
    • 動物実験で催奇形作用や胎児致死率の増加が認められています
    • マウス、ラット、ウサギでの実験で胎児への悪影響が報告されています

慎重投与が必要な患者

  1. 腎障害のある患者
    • 腎機能が低下しているため、副作用が強く現れることがあります
  2. 肝障害のある患者
    • 代謝機能等が低下しているため、副作用が強く現れることがあります
  3. 骨髄抑制のある患者
    • 骨髄抑制を増悪させるリスクがあります
  4. 聴器障害のある患者
    • 聴器障害を増悪させるリスクがあります
  5. 感染症を合併している患者
    • 骨髄抑制により、感染症を増悪させるリスクがあります
  6. 水痘患者
    • 致命的全身症状があらわれるおそれがあります
  7. 高齢者
    • 生理機能(骨髄機能、肝機能、腎機能等)が低下しているため、用量および投与間隔に注意が必要です
  8. 小児
    • 外国で聴器障害が高頻度に発現するとの報告があるため、特に注意が必要です

授乳婦に投与する場合には、授乳を中止させる必要があります。シスプラチンは母乳中に移行することが報告されています。

シスプラチン 主要な副作用とその対策

シスプラチンは多様な副作用を引き起こす可能性があります。主な副作用とその対策について解説します。

1. 腎毒性

  • 発現率:投与症例の約1/3で急性腎障害を合併
  • 機序:主に近位尿細管における尿細管間質障害
  • 対策:
    • 十分な水分負荷(前述の通り)
    • 利尿剤の使用
    • 腎機能のモニタリング
    • 電解質(特にマグネシウム)の補正

    2. 消化器症状

    • 悪心・嘔吐:高頻度に発現する副作用の一つ
    • 対策:
      • 制吐剤の予防的投与(デキサメタゾン、5-HT3受容体拮抗薬など)
      • 食事の工夫(少量頻回摂取、冷たい食べ物の選択など)
      • 十分な水分摂取

      3. 骨髄抑制

      • 白血球減少:投与後10~14日目にNadir(最低値)
      • 血小板減少:投与後14~21日目にNadir
      • 貧血:半減期が長く、低値の状態が蔓延化しやすい
      • 対策:
        • 定期的な血液検査
        • G-CSF製剤の適切な使用
        • 感染予防対策
        • 必要に応じた輸血

        4. 聴覚障害

        • 聴力低下・難聴、耳鳴りなど
        • 特に小児では高頻度に発現する可能性
        • 対策:
          • 定期的な聴力検査
          • 症状出現時の投与量調整または中止の検討

          5. 神経毒性

          • うっ血乳頭、球後視神経炎、皮質盲、脳梗塞、一過性脳虚血発作など
          • 対策:
            • 神経学的症状の定期的評価
            • 症状出現時の適切な対応

            6. 心血管系障害

            • 心筋梗塞、狭心症、うっ血性心不全、不整脈など
            • 対策:
              • 心機能のモニタリング
              • 循環器症状の注意深い観察

              7. その他の副作用

              • 溶血性貧血
              • 溶血性尿毒症症候群
              • 味覚障害
              • 口内炎
              • 下痢・便秘

              これらの副作用に対しては、早期発見と適切な対応が重要です。患者への十分な説明と、副作用出現時の対処法についての指導も必要となります。

              シスプラチン 投与における意外な副作用としゃっくり対策

              シスプラチン投与において、あまり知られていない副作用の一つに「しゃっくり」があります。一般的に副作用として注目されることは少ないものの、患者のQOL(生活の質)に大きな影響を与えることがあります。

              しゃっくりの発生機序

              シスプラチン投与後のしゃっくりは、主に以下のメカニズムで発生すると考えられています:

              • 迷走神経への刺激
              • 横隔膜の不随意収縮
              • 中枢神経系への影響

              しゃっくりの特徴

              通常のしゃっくりと異なり、抗がん剤による副作用としてのしゃっくりは以下の特徴があります:

              • 持続時間が長い(数時間から数日続くことも)
              • 通常の対処法(息を止める、冷水を飲むなど)が効きにくい
              • 睡眠や食事に支障をきたすことがある

              対策と治療法

              1. 薬物療法
                • クロルプロマジン(商品名:コントミン・ウィンタミン)
                • メトクロプラミド(商品名:プリンペラン
                • バクロフェン
                • ガバペンチン
              2. 漢方薬・生薬
                • 柿蔕(シテイ):柿のヘタを煎じたもの
                  • 調製法:柿のヘタ100グラムに対し400ミリリットルの水で200ミリリットルになるまで煎じる
                  • 用法:1回あたり20ミリリットルを服用
                  • 特徴:渋みはあるが飲みやすく、副作用もほとんど知られていない
                • 薬物療法
                  • 咽頭刺激(冷水を飲む、氷をなめるなど)
                  • 呼吸法(深呼吸、息止めなど)
                  • 鼻咽頭刺激(綿棒で鼻腔を刺激するなど)

              しゃっくりは一見軽微な症状に思えますが、持続すると患者の食事摂取や睡眠に影響し、全身状態の悪化につながることがあります。早期に適切な対応を行うことが重要です。

              シスプラチン 併用療法と相互作用の注意点

              シスプラチンは多くの場合、他の抗がん剤と併用されます。効果を最大化し副作用を管理するためには、適切な併用療法の選択と相互作用の理解が重要です。

              主な併用療法

              1. 肺がんにおける併用療法
                • シスプラチン+ビノレルビン(CDDP/VNR)
                  • 投与スケジュール:Day1にシスプラチン80mg/m²、Day1,8にビノレルビン25mg/m²
                  • 3〜4週間を1コースとして繰り返す
                • シスプラチン+ペメトレキセド
                • シスプラチン+ゲムシタビン
              2. 膀胱がんにおけるM-VAC療法
                • メトトレキサート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチン
                • 投与スケジュール:
                  • Day1:メトトレキサート30mg/m²
                  • Day2:ビンブラスチン3mg/m²、