深層角膜炎の症状と診断と治療と予防

深層角膜炎と症状と診断と治療

深層角膜炎の臨床で押さえる要点
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症状は「痛みの質」と「視力低下」の組合せで整理

充血・流涙・眼脂・視力低下は共通所見ですが、進行速度や痛みの強さ、角膜混濁の深さで鑑別の優先順位が変わります。

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診断は塗抹検鏡+培養が基本、深層は追加検査が効く

感染性角膜炎では病原体推定と同定が治療の精度を左右します。深層病変では前眼部OCTや共焦点顕微鏡、PCRなどの使い分けが重要です。

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治療は原因別に「抗微生物薬+支持療法+外科的介入」

重症例ほど頻回点眼・併用療法・病巣搔爬や治療的角膜移植の検討が必要になります。ステロイドは原因未確定の段階で慎重に扱います。

深層角膜炎の症状と充血と視力低下

深層角膜炎(実質~内皮側の炎症を主座とする病態を含む臨床概念)は、表層障害だけの角膜炎よりも「視力低下」と「角膜実質混濁」が前面に出やすく、治癒後も不正乱視や瘢痕で視機能が落ちやすい点が臨床上の重みになります。

感染性角膜炎全体としては、疼痛・流涙・充血・眼脂・視力障害などが日常生活に支障を来し、重症例では治癒に長期間を要することがあると整理されています。

痛みは鑑別の手掛かりになり、例えば進行が緩徐で痛みが比較的軽いと真菌性を疑う、進行が速いと緑膿菌やレンサ球菌を疑う、など「経過と自覚症状の程度」をセットで評価するのが実践的です。

深層病変では、角膜後面沈着物(KP)や前房内炎症(細胞、フィブリン、前房蓄膿)が伴うと「感染性の可能性」が上がる一方、所見が乏しいケースもあり、問診(CL、外傷、ステロイド点眼歴、眼手術歴、眼表面疾患)を丁寧に拾うことが診断の近道になります。

特にコンタクトレンズ関連は本邦でも主要な発症誘因として扱われ、重症CL関連角膜炎ではレンズケア不良による汚染が重要リスク因子になり得るとされています。

また、感染性角膜炎は「初期診断や治療を誤れば重篤な視力障害を起こし得る」ため、深層病変を疑った時点で“軽症扱いしない”姿勢が安全です。

参考:角膜感染症の概要(原因微生物の種類、典型症状、治療の概略)

角膜感染症|日本眼科学会による病気の解説

深層角膜炎の原因と真菌とヘルペスウイルス

感染性角膜炎は細菌・真菌・原虫(アカントアメーバ)・ウイルス(HSV、VZV、CMVなど)が原因となり得て、臨床所見が多彩で治療薬も限られるため、原因推定を誤ると悪化しやすい疾患群として位置づけられています。

深層角膜炎の実臨床で特に問題になりやすいのは、①真菌(糸状菌・酵母様真菌)②ヘルペス関連(実質型、内皮型)③CL関連の重症細菌性(緑膿菌など)④アカントアメーバ、といった「深部へ進展しやすい/治療が長引きやすい」タイプです。

真菌性角膜炎は、糸状菌では外傷(特に植物による外傷)が重要で、酵母様真菌では眼表面疾患や眼科手術既往、ステロイド点眼がリスクとして整理されています。

糸状菌では羽毛状潰瘍(hyphate ulcer)や角膜後面プラーク(endothelial plaque)が特徴所見になり得て、深層化・前房反応・前房蓄膿を伴うと角膜穿孔リスクも上がります。

ヘルペスでは、上皮型だけでなく実質型は免疫・炎症反応が病態の中心となり、内皮型(角膜内皮炎)ではKPを伴う局所的な角膜浮腫など、深層所見で疑う場面が増えます。

さらに“意外に見落とされる”論点として、国内でも以前は海外でしか見られなかった病原体(microsporidia、Pythiumなど)による角膜炎が報告されており、定型例に当てはまらない難治例では視野を広く持つ必要があります。

このタイプは一般外来レベルの経験だけでは拾いにくいため、深層角膜炎で反応不良なら「再度の検体採取・専門施設への紹介・追加検査」を早めに組み込むのが現実的です。

参考:感染性角膜炎の診断・治療の基本と推奨(第3版PDF)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/infectious_keratitis_3rd.pdf

深層角膜炎の診断と検査と培養

深層角膜炎を疑うときも、感染性が疑われるなら「角膜病巣部擦過物」を用いた微生物学的検査が診断の要であり、塗抹検鏡と培養検査の併用が基本として強く推奨されています。

培養は同定と薬剤感受性の評価ができる一方、常在菌の混入や起炎菌断定の難しさがあるため、検鏡結果・臨床所見・治療反応性との整合性で総合判断する、という姿勢がガイドライン上も明確です。

深層病変では「病変の深さ」を客観化することが治療方針(頻回点眼の強度、外科的介入、紹介タイミング)に効くため、前眼部OCTで深さ・菲薄化・前房内炎症所見を追える点が実務上の利点になります(保険適用の制約は別途注意)。

生体内共焦点顕微鏡(IVCM)は、真菌やアカントアメーバ(栄養体・シスト)の観察が可能で、深層角膜炎で「培養待ちの時間を短縮したい」場面で威力を発揮しますが、実施と解釈に熟練が必要とされています。

PCRは角膜ヘルペスやウイルス性ぶどう膜炎の診断に用いられ、感染性角膜炎への応用報告もありますが、「DNAの存在=生菌/活動性の証明ではない」点が落とし穴になり得ます。

現場の運用としては、次のように“深層角膜炎らしさ”があるほど検査を厚くします。

  • 角膜実質の浸潤・膿瘍・潰瘍が深い/角膜後面プラークやKPが目立つ → 早期に塗抹+培養、可能ならIVCMや前眼部OCTを追加。
  • CL関連で強い疼痛、所見の割に痛みが強い、偽樹枝状や放射状角膜神経炎を疑う → アカントアメーバを強く意識し、培養やIVCM、必要に応じてPCRも検討。
  • ステロイド点眼歴があり所見が非典型 → 典型像に寄せず、検体採取の優先度を上げる(所見が“静か”でも油断しない)。

深層角膜炎の治療と抗菌薬とステロイド

治療は原因微生物により大きく異なり、感染性角膜炎では抗微生物薬の局所投与が基本で、重症例では頻回点眼や併用療法、必要に応じて全身投与や外科的治療を組み合わせます。

細菌性角膜炎では、起炎菌同定が理想ですが結果を待てないことも多いため、患者背景・誘因・角膜所見から起炎菌を推測して初期治療を開始し、軽症は1剤、重症は作用機序の異なる2剤併用(例:フルオロキノロン系+アミノグリコシド系等)という考え方が示されています。

深層角膜炎で特に重要なのは「治療抵抗性の早期認識」で、反応が乏しければ起炎菌推定の見直し(真菌・混合感染・ヘルペス併発など)を行い、同時にアドヒアランス不良も必ず確認する、という整理が実務に直結します。

ステロイドは、少なくとも細菌性角膜炎の文脈では「併用しないことを提案」とされており、原因未確定の深層角膜炎で漫然と開始するのは危険側に倒れます。

一方で、実質型角膜ヘルペスではステロイド点眼に抗ヘルペス薬併用が必要で、ステロイド単独は再燃・上皮型発症のリスクになると具体的に述べられています。

真菌性角膜炎では、国内で眼局所用の医療用医薬品として存在するのはピマリシン(ナタマイシン)で、Fusarium属に対して第一選択薬とされています。

アカントアメーバ角膜炎は特効薬がなく治療が困難で、早期診断・早期治療が重要であり、治療前のステロイド点眼は視力予後不良因子になり得る報告があるため推奨されない、という点は深層角膜炎診療の“地雷”として共有しておく価値があります。

深層角膜炎の予防とコンタクトレンズと独自視点

深層角膜炎の予防は、結局のところ「角膜上皮バリアを壊さない」「微生物を持ち込まない」「初期兆候で受診・検査につなぐ」の3点に集約され、角膜上皮に傷ができると微生物が付着・繁殖しやすくなるという基本構造が土台になります。

CL関連は本邦でも主要な誘因として強調されており、特にレンズケアを要するタイプで汚染がリスク因子になり得るため、医療従事者側が“使い方の聴取”を問診で具体化することが予防介入そのものになります。

ここからは検索上位に出にくい「現場の独自視点」として、深層角膜炎を増やさないための“運用設計”を提案します。

  • 救急外来・当直帯の申し送りテンプレに「CL有無、外傷(特に植物)、ステロイド点眼歴、角膜移植/屈折手術歴」を固定項目化すると、深層化リスクの取りこぼしが減ります。
  • 点眼の頻回指示はアドヒアランスが崩れると一気に治療失敗へ寄るため、重症例ほど「点眼間隔の具体値」「夜間の運用」「家族支援の可否」を最初に確認するのが合理的です。
  • 前眼部OCTやIVCMがすぐ使えない施設では、深層所見(KP、前房細胞、前房蓄膿、角膜後面プラーク)を根拠に「紹介の閾値」を明文化しておくと、治療遅延のばらつきを減らせます。

患者指導の要点(啓発は過不足なく、しかし具体的に)。

  • CL装用者で痛み・充血・視力低下が出たら、自己判断で市販点眼や装用継続をせず早期受診(深層化すると治療が長期化し得る)。
  • 外傷、とくに植物・土埃が絡む外傷は真菌も鑑別に上がるため、軽症に見えても受診を促す。
  • ステロイド点眼の自己中断・自己再開は危険(感染性の見逃しや所見修飾につながる)ため、処方医の指示に従うよう強調する。