新生血管黄斑症治療と抗VEGF薬硝子体内注射管理

新生血管黄斑症治療

新生血管黄斑症治療:臨床で押さえる全体像
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まずは「MNV」と活動性

新生血管型AMDでは黄斑新生血管(MNV)の存在確認と、OCTでのIRF/SRF/sub-RPE fluidなど滲出性変化=活動性評価が治療設計の出発点になります。

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第一選択は抗VEGF薬

本邦のガイドラインでは抗VEGF薬硝子体内注射が第一選択で、導入期・維持期(treat-and-extend、固定、PRN)を症例と負担に合わせて運用します。

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難治例は「切り替え/併用」

効果不十分例では抗VEGF薬の切り替え、または抗VEGF薬+PDT併用が選択肢となり、PCVなど病型や萎縮リスクも踏まえて適応を絞ります。


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新生血管黄斑症治療の診断と活動性評価:OCT・OCTA・FA/ICGAの使い分け

新生血管型AMD(臨床では「新生血管黄斑症治療」と検索されやすい領域)の確定には、黄斑部に生じた黄斑新生血管(MNV)の存在確認が重要で、OCT/OCTA/FA/ICGAなど複数モダリティを組み合わせます。日本眼科学会のガイドラインでは、診断と活動性評価に視力・眼底所見・眼底写真に加え、FA、ICGA、OCT、OCTA、FAFを用いると整理されています。

活動性は「MNVから滲出性変化が出ているか」で判断し、近年は非侵襲的にOCTで判定する運用が増えています。滲出性変化として、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、RPE下液(sub-RPE fluid)、出血、フィブリン、硬性白斑などが挙げられ、fluid検出にはOCTが有用と明記されています。

意外と見落としやすいポイントは、OCTAが「構造(血管の形)」の把握に強い一方、滲出(漏出)そのものはOCTや造影検査の情報が決定打になりやすいことです。ガイドライン上も、MNVが明らかな場合はFA/ICGAを省略して診断してよい一方、FA/ICGAにはアナフィラキシーなどのリスクがあるため適応を考える、という安全面の示唆があります。

また、1型MNVのOCT所見としてdouble layer signが有用であること、OCTAでRPE下の血流シグナル確認が鑑別に役立つことなど、画像で“ある/ない”の判断を詰める道具立ても整理されています。特に初期の1型MNVはFA/ICGAやOCTで判別困難な場合があり、OCTAの検出力が高いことがある、という記載は、現場の迷いどころに直結します。

新生血管黄斑症治療の第一選択:抗VEGF薬硝子体内注射(薬剤と注意点)

ガイドラインでは、新生血管型AMDに対する治療の第一選択は抗VEGF薬硝子体内注射とされ、視力転帰を大きく改善してきた治療として位置づけられています。

本邦で使用できる抗VEGF薬として、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ(VEGFとAng-2の二重標的)が挙げられ、代表的臨床試験で視力改善が示された旨がまとめられています。

薬剤安全性で医療従事者が特に押さえるべきは、眼内炎症が全薬剤で起こり得ること、そしてブロルシズマブでは網膜血管炎・網膜血管閉塞を含む眼内炎症が多いという報告があり、使用時は早期発見と対応が求められる点です。患者説明では「注射=感染(眼内炎)」に意識が向きがちですが、炎症と血管イベントまで含めた説明とフォロー設計が安全文化として重要になります。

病型面では、日本人に多いPCVを対象とした臨床試験も言及され、アフリベルセプトやブロルシズマブで良好な治療成績が報告されている旨が示されています。PCVは出血を来しやすく、大量の網膜下出血や出血性PEDで病変評価が難しくなることがあり、初診・再燃時の画像の取り方(スキャン範囲含む)を“広く取る”運用が安全です。

新生血管黄斑症治療の投与方法:導入期・維持期とtreat-and-extend/PRN

抗VEGF治療は、導入期として通常1か月ごとに連続3回(薬剤により4回)投与し、維持期で視力・解剖学的安定を図る、という枠組みで整理されています。

維持期の方法として、固定投与、必要時投与(PRN)、treat-and-extend(T&E)が挙げられ、ガイドラインではPRNは長期で視力維持が崩れやすいこと、T&Eは毎月投与と同程度の視力改善・維持が得られる報告があることが紹介されています。実臨床では通院負担・医療資源の制約が強いため、「来られないからPRN」ではなく、「再燃を見逃しにくい運用としてT&Eをどう成立させるか」をチームで設計する発想が重要です。

T&Eの調整幅(例:2週ごと調整/4週ごと調整)でも良好な成績が示された試験が引用されており、“間隔を延ばすこと自体”が目的化すると再燃リスクが上がる点に注意が必要です。ガイドラインには「いつまでT&Eを継続するか一定の見解はない」とも示され、患者背景(僚眼、社会状況)を含めて臨機応変に選択することが望ましいとされています。

ここでの実務的チェック項目を、医療者向けに短く整理します。

  • OCTは中心窩だけでなく病変全体をスキャンし、IRF/SRF/SHRMを取りこぼさない。
  • 「囊胞様黄斑変性」の囊胞腔は活動性評価に用いない(治療で消退しないことが多く、視力回復も難しい)。
  • 治療間隔を延長するほど、再燃時の出血・瘢痕化が致命的になり得るため、再燃の“早期検出”を優先する。

新生血管黄斑症治療の治療抵抗例:抗VEGF薬切り替えと抗VEGF薬/PDT併用

抗VEGF薬治療中に効果が乏しい(治療抵抗)あるいは効果が減弱した(耐性獲得)場合、他剤への切り替えが有効なことがある、とガイドラインで整理されています。さらに治療負担を考慮して切り替えを検討する、という現実的な観点も明記されています。

PDTは単独よりも抗VEGF併用が推奨され、現在もPCVに対する治療選択肢の一つ、とされています。抗VEGF抵抗例ではPDT併用を考慮してよい一方、長期的に黄斑萎縮を増悪させる可能性があるため、脈絡膜が薄い例や既に黄斑萎縮がある例は避けるのが望ましい、という“守りの条件”も示されています。

この「PDTを使うなら、何を避けるか」という視点は、検索上位記事では“治療がある”で止まりがちですが、医療従事者向けには重要です。

  • PDTは網膜外層/RPEを不可逆的に障害し得るため、中心窩近傍病変には不向き(レーザー光凝固と同様、不可逆性の説明が鍵)。
  • 3型MNVに対するPDTは現在では推奨されない。
  • PDT実施には眼科PDT認定医が必要で、施設要件を含めた治療導線の整備が前提。

新生血管黄斑症治療の独自視点:合併症(黄斑下血腫・RPE裂孔)と“持続可能な長期管理”設計

新生血管型AMDは完治が不可能で、適切な治療と長期管理がなければ不可逆的な視力低下を起こし得る、とガイドラインで明確に述べられています。さらに、一時的に活動性が落ち着いていても再発すること、滲出を繰り返すことで萎縮や線維性瘢痕を合併して高度視力低下に至ること、僚眼にも高率にMNVが生じることを念頭に管理する必要がある、とされています。

ここでの“独自視点”として強調したいのは、治療薬の選択よりも「患者が途中離脱しない設計」が、最終視力を左右しやすい点です。ガイドラインでも、病状や患者負担を考慮し、患者と共に持続可能な管理方法を選択することが求められる、と書かれています。医療者側の都合で投与レジメンを決めるのではなく、通院頻度・介護力・仕事・僚眼の状態を含む“運用設計”が治療そのものになります。

合併症対応としては、例えば黄斑下出血(黄斑下血腫)で急激な視力低下を来すことがあり、発症早期なら血腫移動で視力改善が得られる可能性があること、硝子体内気体注入術や硝子体切除術が行われることが記載されています。抗VEGFやtPA併用(tPAは適応外使用)に触れつつも、適応は議論が必要とされており、“できる処置”と“してよい適応”が別である点は、医療安全・説明責任の観点で重要な示唆です。

また、RPE裂孔が自然経過または治療後に生じ得ること、FAFで欠損部位が低蛍光となり検出容易になることなど、合併症の拾い上げにも具体が示されています。視力だけでなく、画像で「不可逆変化が進んだサイン」を共有できると、患者の理解が進み、通院継続の納得感につながることが多いです。

参考:診断・投与法・PDT併用・長期管理(ガイドライン本文)

日本眼科学会:新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン(PDF)