神経膠腫の症状
神経膠腫による頭蓋内圧亢進症状の特徴
神経膠腫が大きくなると、腫瘍の周りに血流の変化や炎症により脳浮腫という脳のむくみが生じます。脳は頭蓋骨に囲まれた閉鎖空間にあるため、腫瘍ができると頭蓋内の圧力が高まり、頭痛や吐き気、意識障害などの頭蓋内圧亢進症状が現れます。
参考)神経膠腫(グリオーマ)について:[国立がん研究センター がん…
特に注目すべき症状として、朝起きたときや昼寝のあとに症状が強く出る「早朝頭痛」があります。人間の頭蓋内圧は睡眠中にやや高くなることから、起床時に頭痛が強く、日中の活動で改善する傾向があります。
参考)神経膠腫:症状は?ステージとは?検査は?治療は?完治できるの…
悪性神経膠腫では腫瘍が大きな塊をつくるケースが多く、脳のむくみにより頭蓋内圧亢進症状を発症しやすくなります。頭痛は慢性的・持続的に起こり、次第に終日感じるようになります。
参考)脳腫瘍 │ がんの標準治療 │ 徳島大学病院 がん診療連携セ…
頭蓋内圧亢進症状について詳細な解説があります。
神経膠腫の局所症状と発生部位の関係
脳の機能は部位ごとに担当が決まっており、神経膠腫がどの部位に発生したかによって現れる症状が異なります。これらは腫瘍ができた場所の脳機能が障害されて起こる局所症状(巣症状)と呼ばれます。
参考)神経膠腫(グリオーマ) 全ページ:[国立がん研究センター が…
発生部位 | 主な症状 |
---|---|
前頭葉 | 手足の力が入らない、言葉が出にくい、性格の変化、記憶力低下、てんかん発作 |
側頭葉 | 言葉の理解困難、視野が狭くなる、てんかん発作(胸やけ、変な臭い) |
頭頂葉 | 手足の感覚異常、計算困難、読み書き困難、片方の物にぶつかりやすい |
後頭葉 | 視野が狭くなる |
小脳 | 細かい動き困難、ふらつき、めまい、歩行障害 |
脳幹 | 物が二重に見える、むせやすい、ふらつき、めまい、手足の麻痺・しびれ |
特徴的な症状はあまりなく、手足の麻痺、言葉が出ない、認知機能の低下など、腫瘍ができた場所によって症状はさまざまです。左前頭葉の腫瘍では、しばしば口数が少なくなり、うつ症状に似ていることもあります。
神経膠腫におけるてんかん発作の出現
てんかん発作は神経膠腫の頻度の高い症状の一つで、特に低悪性度神経膠腫では主な症状となります。低悪性度グリオーマでは6割以上、膠芽腫では5割程度の患者がてんかん発作を生じるといわれています。
低悪性の神経膠腫では、腫瘍の塊がなく脳のなかに染み込むように腫瘍が広がることがあり、これが原因となり異常な電気が脳に発生してしてんかんを起こします。特に乏突起膠腫はてんかん発作のリスクが高い神経膠腫です。
参考)脳腫瘍とてんかん
神経膠腫によるてんかん発作には、右腕だけのけいれんや左下肢だけの痺れなどの単純部分発作、意識が数秒飛ぶ複雑部分発作、意識がなくなり全身がガクガクする強直間代発作などがあります。てんかん発作のように突然起こる症状も一部にありますが、多くは徐々に症状がひどくなる傾向にあります。
神経膠腫初期症状の早期発見ポイント
神経膠腫を含む脳腫瘍自体はまれな病気ですが、感じたことのない違和感や症状に気付いたときには、速やかに受診することが重要です。脳自体には痛覚がないため、通常の生活を送る中で脳腫瘍を早期発見することは難しいことが少なくありません。
参考)脳腫瘍に初期症状はあるの? 頭痛、嘔吐、意識障害などには注意…
初期症状のチェックポイントとして、以下の症状があります:
参考)脳腫瘍に前兆はある? 初期症状やかんたんなチェック方法も解説…
✅ 頭痛(特に朝起きたときに強い)
✅ 吐き気、嘔吐
✅ 意識がぼんやりする
✅ 片側の手足のしびれや脱力、麻痺
✅ 言葉が出にくい
✅ 物が二重に見える
✅ てんかん発作
✅ 性格が変わる
✅ 記憶力が低下する、集中力が続かない
神経膠腫はゆっくりと進行することが多いため、初期症状を早期に発見することが重要です。「今まで頭痛はなかったのに急に起こるようになった」「今までと違う頭痛が起こるようになった」といった場合は、早めに脳神経外科や脳神経内科を受診しましょう。
症状は突然発症するのではなく、徐々にひどくなる傾向にあります。Grade2のものはゆっくり増大するため、頭蓋内圧亢進による頭痛は少なく、けいれんが多い傾向です。
神経膠腫悪性度と症状進行の関係性
神経膠腫の症状は悪性度(グレード)によって異なります。神経膠腫には他臓器の腫瘍のようなステージ分類がなく、悪性度をグレード1(軽度)からグレード4(高度)で分類します。
参考)神経膠腫(グリオーマ)
低悪性度神経膠腫(グレード2)では、てんかん発作が主な症状になることが多く、腫瘍の増大がゆっくりであるため頭蓋内圧亢進による頭痛は少ない傾向があります。痙攣で発症することが多く、大脳半球の前頭葉に発生しやすい乏突起神経膠腫は悪性度グレード2の神経膠腫です。
参考)神経膠腫(グリオーマ)|東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍…
一方、悪性神経膠腫(グレード3以上)の場合、大きな腫瘍の塊をつくるケースが多く、頭蓋内圧亢進症状として頭痛や吐き気、意識障害などが現れます。脳卒中では症状が急激に起こりますが、神経膠腫では症状の進行はゆっくりで、本人は軽い頭痛だけで気が付かないこともあります。
参考)【脳腫瘍】神経膠腫(グリオーマ)|脳の病気|福岡脳神経外科病…
グレード4と最も悪性な腫瘍は膠芽腫(グリオブラストーマ)です。しばしば低悪性度の腫瘍が経過中に高悪性度に転化することが知られています。
参考)脳腫瘍
神経膠腫の症状について、部位別の詳細な解説と早期受診の重要性について書かれています。