心電図モニタとアラーム設定
心電図モニタアラームの種類と分類
心電図モニターのアラームは、大きく「生体アラーム」と「テクニカルアラーム」の2つに分類される。生体アラームは心拍数異常、頻脈、徐脈、不整脈など患者の生理学的変化を示す重要な警告信号で、迅速な対応が必要である。一方、テクニカルアラームは電極の脱落、電池切れ、電波切れなど機器の不具合による警告であり、機器の調整によって解決可能である。
参考)モニターアラームは生体アラームとテクニカルアラームが有る
アラームの緊急度は3段階に分けられており、「緊急」は心静止や心室細動などの致死的不整脈、「警告」は頻脈や徐脈などの重要な生体情報変化、「注意報」は電極確認や非致命的不整脈の検出に使用される。医療従事者は患者の病態に応じて適切な閾値設定を行い、不要なアラームを減らすことで真に必要な警告を見落とさないよう配慮する必要がある。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/65/4/65_872/_pdf
心電図モニタアラーム設定の基本原則
心電図モニタのアラーム設定において最も重要なのは、患者の基礎心拍数を把握して個別に上限・下限値を設定することである。標準的な設定値として心拍数の上限は100回/分、下限は60回/分、SpO2は94%以下でアラームが作動するよう設定するが、患者の状態に応じて調整が必要である。不整脈検出機能は既定でオンになっているため、心室頻拍や心室細動などの致死的不整脈の早期発見が可能である。
参考)https://nurse.bunnabi.jp/t_sp_bedside03.php
適切なアラーム設定には呼吸数の監視も含まれ、通常15-20回/分の範囲でアラーム設定を行う。しかし、単純な数値設定だけでなく、不適切なアラームの原因となる「無呼吸」や「RUN」などの機能についても見直しが必要である。実際に循環器病棟での調査では、無呼吸アラームをオフにし、RUNアラームを4拍30拍/分から6拍40拍/分に変更することで、1日平均551回のアラーム解除が79回まで大幅に減少した事例が報告されている。
参考)https://new.jhrs.or.jp/pdf/article_in_press/article005.pdf
心電図モニタアラーム対応の実践手順
心電図モニターのアラームが作動した際の対応手順は極めて体系的である。まず、アラーム音が鳴った場合、致死的不整脈(心静止、無脈性電気活動、心室細動)かどうかを即座に確認することが最重要である。患者の状態確認では胸痛や呼吸困難などの症状の有無、バイタルサイン(血圧・SpO2)の測定、頸動脈や手首での脈拍触知を行う。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/2617/
心電図波形が「真っ平ら(心静止)」または「ぐちゃぐちゃ(心室細動・心室粗動)」を呈している場合は1秒を争う状況であり、直ちに人を呼んで心肺蘇生(CPR)を開始する必要がある。一方、アラーム音がしていない場合は正常状態である可能性が高いため、チラ見程度の確認で十分である。この段階的アプローチにより、医療従事者は限られた時間内で効率的かつ適切な判断を下すことができる。
心電図モニタのテクニカルアラーム対策
テクニカルアラームの最も頻発する原因は電極の脱落や接触不良であり、全アラームの約16%を占めている。対策として電極を1日1回定期的に貼り替え、汗で汚れている場合は清拭してから装着することが重要である。高齢者の乾燥肌では電極が剥がれやすいため、アルコール綿で表皮を軽く除去してから電極を貼付すると安定した接触が得られる。
参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679889757312
体動による誤認識を防ぐため、体動の多い患者では影響の少ない胸部位置への電極配置、リード線が引っ張られないようテープでの適切な固定が必要である。また、1mV以上のQRS波が得られる位置への電極配置により、波形認識精度が向上しアーチファクトによる誤作動を減少させることができる。未使用時の送信機にコードを強く巻き付ける保管方法は断線の原因となるため、ルーズに保管することが推奨される。
心電図モニタアラーム管理における独自視点
近年、心電図モニターには「疑似ペーシング表示機能」という革新的な機能が搭載されている。この機能は、ペースメーカー装着患者の心電図上に白色の縦棒を表示し、ペーシングパルスの作動状況を視覚的に確認できるものである。通常、ペーシングパルスは1msec未満の極短時間信号で、ECGデータのサンプリング間隔(2-4msec)よりも短いため捕捉困難であるが、ペーシングモードをオンにすることで検出可能となる。
参考)心電図モニター表示の多様化。Spike On T!? | 国…
この機能により、ペースメーカー作動不全の早期発見が可能となり、従来見落とされがちな微細な異常も把握できるようになった。さらに、アラーム疲労対策として「アラームグループ」機能の活用も注目されており、複数のモニターを連携させることで、真に重要なアラームのみを医療従事者に通知するシステム構築が可能となっている。これらの先進的機能により、従来の単純なアラーム設定を超えた、より精密で効率的な患者監視体制の構築が実現されている。