視路障害と視野欠損
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視路障害の視路と視交叉と視放線
視路障害を理解する最短ルートは、視路に「網膜→視神経→視交叉→視放線→後頭葉皮質」が含まれる、という一本線の把握です。
この経路のどこが傷害されても視野欠損が生じ、欠損パターンが病変部位同定に役立つことが臨床の強みになります。
特に視交叉より後方(視索〜視放線〜後頭葉)では、両眼で同じ側が欠ける同名性の欠損になり、さらに後方ほど左右差が少ない「一致性」が高くなる傾向があります。
現場では、患者の訴えが「見えにくい」「ぼやける」でも、問診で視野の左右・上下・中心のどれが困るかを具体化すると、視路上のどこに問題があるかを言語化しやすくなります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4173229/
たとえば「ぶつかる」「片側の人に気づかない」は同名半盲のヒントになり得て、本人は視野欠損を自覚しにくいこともあります(気づきにくさ自体が安全面の論点になります)。
視路障害の視野欠損と同名半盲と両耳側半盲
同名半盲は、両眼視野の左半分または右半分が欠ける所見で、視交叉より後方(視索・外側膝状体・側頭葉/頭頂葉/後頭葉など)の病変が原因になります。
原因として脳卒中や腫瘍が代表的で、臨床的には「突然」「神経症状合併」「片側空間無視の併存」などを拾えると緊急度の判断に直結します。
一方、両耳側半盲は視交叉部病変で典型的にみられ、下垂体腺腫・髄膜腫・頭蓋咽頭腫・動脈瘤などが原因として挙げられます。
ここで重要なのは、視野欠損の境界が「水平線」なのか「垂直線」なのかです。
垂直正中(中央の垂直線)を越えない欠損(例:同名半盲、両耳側半盲)は視路障害を強く示唆し、眼科疾患の視野変化(緑内障など)と鑑別の出発点が変わります。
医療従事者向けの説明としては、「視野欠損=目の異常とは限らない」を最初に合意し、次に「欠け方が脳内の配線図に対応する」という順で話すと納得が得られやすいです。
また、同名半盲では患者が欠損側を“見に行く”代償(頭部回旋・視線走査)をしていることがあり、診察室では目立たず、生活場面で転倒や接触につながる点が意外な落とし穴です。
視路障害の中心暗点と視神経炎と虚血性視神経症
中心暗点は、視野中心の視機能が障害される状態で、黄斑疾患だけでなく視神経疾患(虚血性視神経症、レーベル遺伝性視神経症、視神経炎など)でも起こり得ます。
日本眼科学会の解説では、視神経症(視神経炎)で「急激な視力低下」や「中心暗点」、さらに上半分または下半分が見えなくなるタイプの視野障害、眼球運動痛を伴うことがあるとされています。
同じく、虚血性視神経症では突然の視力低下・視野欠損が特徴で、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心疾患・血液疾患などの全身危険因子が背景にあることが多い点が強調されています。
この領域の実務でのポイントは、「中心暗点=黄斑」と短絡しないことです。
視神経炎が疑われる場合、視力・眼底・視野に加えてMRI、血液、髄液検査などが必要に応じて行われる、という枠組みを共有しておくと、紹介・連携がスムーズになります。
さらに、圧迫性視神経症(腫瘍などで視神経が圧迫されて徐々に障害)という“進行性の視路障害”もあり、これは多くが脳外科的治療の対象になり得るため、時間軸(急性か、進行か)の聞き分けが重要です。
参考:視神経炎・虚血性視神経症・圧迫性など視神経症の分類、症状(中心暗点・水平半盲)、必要検査(MRI等)がまとまっている
視路障害の視野検査とゴールドマンとハンフリー
視路障害の評価では、視野欠損のパターンを「再現性ある形」で記録することが重要で、その中心になるのが視野検査です。
静的視野(ハンフリー)は中心30度を詳細に測定し、中心付近の変化を早期から捉えやすい一方、動的視野(ゴールドマン)はより広い範囲で視野全体の形や暗点の有無を把握しやすい、と整理されています。
またゴールドマン型視野計による結果は診断だけでなく、視覚障害の等級判定にも用いられることがあります。
臨床上の落とし穴は、「患者が検査にうまく乗れない」ケースです。
中心固視が難しい、疲労や理解不足がある、反応が不安定などの場合、同じ装置でも信頼性が落ち、見かけ上の欠損が“それっぽく”出てしまうことがあります(見逃しよりも誤認が問題になる場面もあります)。
そのため、視路障害を疑うほど検査法の得意不得意を踏まえ、必要なら別方式で取り直す、という姿勢が安全です。
医療従事者向けに実務的な工夫としては、検査前に「欠損の自覚がなくても結果に出る」「見えた瞬間だけ押す」「迷ったら押さない」などの短い説明を統一することが、再検率を下げるのに有効です。
さらに、同名半盲など中枢性視路障害を疑うときは、視野結果を“病変部位の仮説”として提示し、MRIなど画像診断に接続することで、検査が単発で終わりにくくなります。
参考:視路(網膜〜後頭葉)と視野欠損パターン(同名半盲、両耳側半盲、中心暗点など)の対応表がまとまっている
視路障害のMRI検査と視放線と一致性
視路障害を疑ったとき、視野欠損のパターンは「どこを撮るべきか」の手がかりになり、MRI検査が必要に応じて行われます。
視交叉より後方の病変では同名性欠損になり、後方ほど一致性が高い傾向がある、という原則は、画像で責任病巣を探す際の仮説として役立ちます。
また同名半盲の原因としては脳卒中や腫瘍が挙げられており、視野所見から中枢を疑って画像に接続すること自体が、早期診断の導線になります。
意外に見落とされやすいのは、視機能の訴えが「見えにくい」だけで、眼底や前眼部が目立たない場合です。
このとき視野検査で“垂直正中を守る欠損”が出ると、視神経より後方(視交叉以降)を疑う根拠が一気に強くなり、眼科単独で完結させない判断につながります。
さらに圧迫性視神経症のように徐々に進む病態もあり、時間をかけて視野が変化していたら、緑内障と混同しない視点が重要です。
独自視点として、視路障害の説明では「MRIで原因が見つかる=治療可能」と短絡させないことも大切です。
たとえば視神経症には原因不明が一定割合あることが示されており、画像が正常でも経過観察や追加検査が必要になる可能性を最初から共有しておくと、不要な不信感や受診中断を減らせます。
そのうえで、視路障害の疑いが強い所見(同名半盲、両耳側半盲、急性の中心暗点など)があれば、視野と画像を「同じ言葉」でつなぐ説明が、チーム医療の共通言語になります。