視路疾患の視野欠損とMRI診断

視路疾患と視野欠損

視路疾患:現場で押さえる要点
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視野欠損は局在のヒント

垂直経線を守る半盲や同名性など、パターン認識で「どこがやられているか」を絞り込めます。

🩻

MRIで原因検索へ

視路(視神経〜後頭葉)を意識して撮像部位と鑑別を組み立てると、見落としが減ります。

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緊急疾患を先に外す

腫瘍・動脈瘤・脳卒中など、時間依存性の原因を優先して評価します。


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視路疾患の視野欠損と同名半盲

 

視路疾患の診療では、まず「視野欠損の形」から病変部位を推定し、その後に原因(腫瘍、脳卒中、炎症など)を同定する流れが基本になります。

とくに視交叉より後方(視索・外側膝状体・視放線・後頭葉)では、左右眼で同じ側が欠ける同名性の視野欠損が出やすく、さらに後方の病変ほど欠損が対称的(一致性が高い)になりやすい、という“局在の原則”があります。

MSDマニュアルでも、視交叉より後ろの病変は同名性になり、後頭葉など後方ほど欠損がより一致しやすい傾向が示されています。

医療現場では「半盲=脳」と短絡せず、同名半盲でも片頭痛のように一過性の同名半盲を来しうる原因がある点も併せて押さえておくと、問診の質が上がります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8102486/

一方、患者が訴える「見え方」は“陰性症状(欠損)”だけでなく、“陽性症状(幻視など)”も混ざるため、視野欠損の有無と、症状の性状(常同性・間欠性・閉瞼で変化するか等)を分けて聴取することが、視路疾患の整理に役立ちます。

参考)302 Found

視野検査の結果は、それ単体ではなく、画像検査(MRI等)と組み合わせて視路病変を診断するのが日常診療での定型プロセスである点も確認されています。

視路疾患の視交叉と両耳側半盲

視路疾患で視交叉が障害されると、典型的には両耳側半盲が生じ、原因として下垂体腺腫、髄膜腫、頭蓋咽頭腫、動脈瘤、神経膠腫などが挙げられます。

この“両耳側”という形は、視交叉で交叉する鼻側網膜線維が選択的に巻き込まれる機序と整合し、視交叉近傍(トルコ鞍上部など)の評価が最優先になります。

MSDマニュアルの表でも、両耳側半盲の原因として視交叉部病変(下垂体腺腫など)が一般的と整理されています。

また、垂直経線を守る半盲性視野欠損は、視交叉より後方の中枢性障害を示唆する、という神経眼科学の基本原理が日本眼科学会誌の総説で明確に述べられています。

この「垂直経線を守る」所見は、緑内障などで典型的な“水平線を越えない”パターンとは別の読み方になるため、視路疾患を疑う入口として重要です。

視交叉より後方では同名性が鍵になる一方、外側膝状体より後方では必ずしも“正中線を守るような欠損”に限定されない点も整理されており、ここが誤読の起点になりやすいところです。

視路疾患のMRIと視放線

視路疾患では、視野検査の局在推定を踏まえて、頭部MRI(必要により眼窩部も含む)で原因検索を行うことが、実務上の要になります。

特に視放線や後頭葉の病変(脳卒中や腫瘍など)では、同名半盲を軸に画像評価へ進めることで、患者の“訴え”と“病変”が線で結べるようになります。

日本眼科学会誌の総説でも、視野検査とMRIなどの画像検査を組み合わせて視路病変を診断することは、日常診療の決まり切った過程の一つとして位置づけられています。

意外に見落とされやすい視点として、「形態画像(MRI)で異常が乏しくても、症状が“それっぽい”」ときに、機能画像(SPECT等)が役立つケースがあることが症例ベースで議論されています。

総説内では、MRIで片側病変しか目立たない状況でも、SPECTで対側後頭葉の相対的血流低下が示され、運動知覚障害(失運動視)などの症状理解に結びついた例が紹介されています。

つまり視路疾患の評価は「MRIで白黒つかない=否定」ではなく、症候学が先行して追加検査の合理性を作る、という順番が重要です。

視路疾患の盲点拡大と中心暗点

視路疾患という言葉は広く使われますが、臨床では「視神経〜中枢」のどこが障害されているかを、盲点拡大・中心暗点などの所見と合わせて丁寧に分解する必要があります。

MSDマニュアルでは、盲点拡大の原因として乳頭浮腫や視神経ドルーゼン、薬物、AZOORスペクトラム、MEWDS、AIBSEなどが挙げられ、視路疾患の鑑別が“神経だけ”に閉じない点が示されています。

また中心暗点は、黄斑疾患だけでなく視神経疾患(虚血性、レーベル遺伝性、視神経炎-多発性硬化症など)や圧迫性・中毒/代謝性の視神経萎縮でも起こり得る、と整理されています。

この領域の実務で重要なのは、視野所見を「病変局在の推定」に使うのと同時に、「どの専門(眼科・神経内科・脳外科)へ、どれくらい急いでつなぐか」を決めるトリアージ情報として使うことです。

例えば、視交叉病変を疑う両耳側半盲であれば、腫瘍や動脈瘤などの可能性を念頭に迅速な画像評価が合理的になります。

逆に、視路疾患っぽい訴えでも、検査の整合性が弱い場合は、過剰な侵襲や紹介の連鎖を避けるために“再現性の確認”が臨床上の安全装置になります。

視路疾患の外側膝状体:独自視点の症候

検索上位で頻出しやすいのは「視交叉=両耳側半盲」「後頭葉=同名半盲」ですが、実臨床で“意外にハマる”のが外側膝状体(LGN)の障害です。

日本眼科学会誌の総説では、大量輸液などに伴う電解質補正を背景とした髄鞘融解が外側膝状体に起こりうること、そして外側膝状体の中心が障害されやすい構造的特徴が議論されています。

その症例では、Humphrey視野で両鼻側半盲が目立ち、MRIで両側外側膝状体の高信号が示され、典型的な「視交叉だけでは説明しにくい視野」の理解に外側膝状体が重要になった経緯が紹介されています。

ここが臨床の“落とし穴”で、両鼻側視野欠損はMSDマニュアルでも「一般的ではない」とされつつ、両側後頭葉疾患や両側視神経圧迫などが原因として挙げられています。

しかし実際には、外側膝状体の病態(血流・脱髄・代謝)によって、異名性と同名性が混ざったような視野が出る可能性があり、単純なパターン暗記だけでは取りこぼします。

視路疾患を“視交叉か後頭葉か”の二択で終わらせず、外側膝状体という中間点を頭に置くことが、診断の幅とスピードを両立させるコツになります。

視交叉より後方の局在を示唆する所見(垂直経線を守る半盲性欠損など)を踏まえたうえで、視野所見が典型に合わないときほど、解剖と生理(投射・血管支配・脆弱性)の“組み合わせ”で再解釈するのが神経眼科的な考え方です。

視交叉より後方の中枢性障害(垂直経線を守る半盲性欠損の原則)の参考。

日本眼科学会誌「視覚の臨床神経眼科学」(PDF)

視路(網膜〜後頭葉)と視野欠損パターンの参考。

MSDマニュアル プロフェッショナル版「視路」

眼科 2025年8月号 頭に入れておきたい 非炎症性視神経・視路疾患