シックデイ対処法と糖尿病とインスリン

シックデイ対処法と糖尿病

シックデイ対処法の要点(医療従事者向け)
🧭

まず定義とリスクを共有

感染症・嘔吐下痢・食欲不振などで血糖が乱れ、重症高血糖やケトアシドーシス、逆に低血糖も起こり得る状態を「シックデイ」と整理します。

🥤

水分・炭水化物・測定をセットで

安静・保温、水分確保、絶食回避(消化のよい炭水化物)と、可能なら血糖自己測定の頻回化を同時に指導します。

💊

薬剤は「中止しない」と「休薬」を分ける

1型ではインスリンを自己判断で完全中断しない。一方で脱水が疑われる場面ではメトホルミンやSGLT2阻害薬は休薬を検討します。

シックデイ対処法のシックデイと血糖の定義

糖尿病患者で、感染症などに伴う発熱、下痢、嘔吐、食欲不振により食事が十分に取れない状態を「シックデイ(体調の悪い日)」と捉えます。

普段は血糖コントロールが良好でも、炎症やストレスで著しい高血糖に振れ、重症化する可能性がある点を最初に強調します。

一方で「食事が取れないのに、いつも通り薬を使う」ことで低血糖に振れるルートも同時に起き得るため、患者の理解は“高血糖だけの話ではない”に寄せると事故が減ります。

【医療従事者が押さえる説明の型】

  • 「シックデイ=食べられない日」ではなく、「食べられない/脱水/感染ストレスで血糖が乱れる日」と言い換える。

    参考)シックデイ

  • 体調不良の原因は風邪・胃腸炎・インフルエンザ様症状など幅広く、症状ベースで判断する。​
  • “血糖が上がる/下がるの両方がある”と先に伝え、測定と連絡のハードルを下げる。

    参考)☆ シックデイの対応に関する情報提供サイト

シックデイ対処法のシックデイルールと水分と炭水化物

家庭対応の基本(シックデイルール)は、安静と保温、スープ等での十分な水分摂取、お粥・うどん等で炭水化物を確保し、可能なら血糖自己測定を行う、という形で整理できます。

「糖質を避けた方がよい」と自己流で絶食や糖質制限に寄ると、ケトン体が増えやすくなり、むしろ危険側に倒れることがあるため、少量でも炭水化物を“継続”する説明が重要です。

SGLT2阻害薬の文脈では、極端な糖質制限や摂取不良が正常血糖ケトアシドーシス(euDKA)の誘因になり得るため、「食べない+SGLT2」は危ない組み合わせとして現場で言語化しておくと安全です。

【患者に渡せる具体例(箇条書き)】

  • 🥤水分:水・お茶・スープなどをこまめに(嘔吐/下痢/発熱では脱水になりやすい前提で)。​
  • 🍚炭水化物:お粥、うどん、ゼリー飲料など“少量頻回”で絶食を避ける。​
  • 🧾メモ:いつから、どんな症状、食事はどのくらい、血糖値の推移を記録して受診時に提示する。​

シックデイ対処法のインスリンと中断と低血糖

インスリン使用中の患者では、シックデイに「自己判断でインスリンを中断しない」が最重要の安全メッセージになります。

特に1型糖尿病では、食事が取れなくてもインスリン注射を完全に中断してはいけない、と日本糖尿病学会の注意喚起でも明確に述べられています。

一方で、食事摂取が落ちているのに普段通りの用量を続けると低血糖が起こり得るため、“中断しない”と“調整が必要”を同時に伝え、個別指示(事前のルール化)に接続させます。

【現場での言い回し例】

  • 「基礎インスリンは止めない。止めるとケトンが増えて重症化しやすい。」(ただし具体の増減は主治医指示へ誘導)​
  • 「食べられない日は低血糖も起こるので、測定回数を増やして連絡してほしい。」​

【意外に起きる落とし穴(医療側の視点)】

シックデイ対処法の飲み薬とメトホルミンとSGLT2阻害薬

2型糖尿病では、食事量が半分以下なら投薬を減量し、特に発熱や下痢などで脱水が疑われる場合はメトホルミンやSGLT2阻害薬は休薬する、という整理が日本糖尿病学会の一般向け注意喚起に示されています。

SGLT2阻害薬は、摂取不良・感染・脱水・シックデイ状況で代謝異常(正常血糖ケトアシドーシス等)を生じうるため、状況下では休薬・中止を考慮する、という記載が日本腎臓学会の資料にもあります。

さらに症例報告レベルでも「感冒を契機に」「経口摂取量減少時に」SGLT2阻害薬内服下でeuDKAが起こり得る点が示されており、患者説明では“脱水+食べられない+SGLT2”を赤信号として伝えるのが実務的です。

【薬剤調整の伝え方(患者向けに噛み砕く)】

  • 💊「食べられない日は薬を減らす/止めるものがある。種類で違うので、決めたルール表を家に置く。」​
  • 🚱「脱水が疑わしいときに危ない薬がある(メトホルミンSGLT2阻害薬など)。その日はまず連絡して指示を受ける。」​
  • 🧪「血糖だけでなく、吐き気・腹痛・強いだるさ・呼吸が荒い等があれば、血糖が高くなくても急いで相談。」​

【関連論文(症例報告)】

・SGLT2阻害薬内服中の摂取量減少で正常血糖ケトアシドーシスを来し得ることを解説:SGLT2阻害薬内服中に感冒を契機に正常血糖ケトアシドーシスを来した報告(J-STAGE PDF)

シックデイ対処法の受診と連絡と350mg/dL

緊急性の判断として、嘔吐・下痢が止まらない、38度以上の高熱が続く、24時間まったく(または極端に)食事が取れない、血糖値350mg/dL以上が続く、意識状態の変化がある場合は、すぐ医療機関に連絡または受診、という目安が提示されています。

「電話相談の質」を上げるには、いつからの症状か、症状の種類、食事摂取量、血糖値などをセットで伝えるよう事前に指導しておくのが有効です。

上位記事が“受診目安の箇条書き”で終わりがちな一方、現場では「いつも通り内服してしまった」「インスリンを止めた」「水分も取れていない」という行動情報が最重要なので、行動を時系列で聞くチェックリスト運用が事故予防になります。

【電話トリアージ用チェック(入れ子なし)】

  • ⏱️発症時刻:何時から悪いか。​
  • 🤒症状:発熱、嘔吐、下痢、咽頭痛など。​
  • 🍵水分:直近6時間で取れた量、尿量。​
  • 🍚食事:普段の何割か(半分以下か)。​
  • 📈血糖:推移、最高値、350mg/dL以上が続くか。​
  • 💉薬:インスリン中断の有無、飲み薬の種類(特にメトホルミン/SGLT2阻害薬)。​

【権威性のある日本語参考リンク(定義・受診目安)】

・シックデイの定義、シックデイルール、受診が必要な状態(350mg/dLや24時間摂取不能など)がまとまっています:糖尿病情報センター「シックデイ」

【権威性のある日本語参考リンク(薬剤:メトホルミン/SGLT2)】

・食事量半分以下や脱水時のメトホルミン/SGLT2阻害薬休薬、1型でインスリン中断不可の注意点が整理されています:日本糖尿病学会「糖尿病患者の皆様へ:今一度シックデイ対策を」

【権威性のある日本語参考リンク(SGLT2とシックデイ)】

・シックデイ等でSGLT2阻害薬の休薬・中止を考慮する記載を含み、患者教育の重要性にも触れています:日本腎臓学会 CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用(PDF)

参考)https://jsn.or.jp/medic/data/SGLT2_recommendation20221129.pdf