疾患修飾性抗リウマチ薬一覧と分類
JAK阻害薬は帯状疱疹リスクが既存薬の8倍になります。
疾患修飾性抗リウマチ薬(Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs:DMARDs)は、関節リウマチの免疫異常に直接作用して病態を修飾し、炎症を抑制する薬剤群の総称です。単なる鎮痛剤とは異なり、関節破壊の進行を抑制する効果を持つことが最大の特徴となっています。
DMARDsの分類方法には複数の体系が存在していますが、2013年に欧州リウマチ学会が提案した分類が現在広く採用されています。この分類では、まず製造法によって合成型(sDMARD)と生物学的製剤(bDMARD)に大別し、さらに合成型を従来型(csDMARD)と分子標的型(tsDMARD)に、生物学的製剤をオリジナル(boDMARD)とバイオシミラー(bsDMARD)に細分化しています。
この分類は現在の関節リウマチ治療戦略に合致したものです。日本リウマチ学会の診療ガイドラインでもこの分類法を採用しており、治療薬選択の指針として機能しています。治療開始時には、特に制限がなく関節破壊リスクが高くない患者ではcsDMARDを軸に治療戦略を構築するのが基本となります。
疾患修飾性抗リウマチ薬の従来型合成DMARD(csDMARDs)一覧
従来型合成DMARD(conventional synthetic DMARDs:csDMARDs)は、1980年代頃から使用されている化学合成された抗リウマチ薬の総称です。炎症性サイトカイン産生やT/B細胞活性化、核酸合成の抑制など、様々な作用機序を通じて関節リウマチの病態を改善します。
つまり従来型が基本です。
メトトレキサート(MTX、商品名:リウマトレックス、メトレート)は、csDMARDsの中で最も重要な位置を占めるアンカードラッグです。世界的に関節リウマチ治療の第一選択薬として使用されており、単剤でも高い有効性が期待できます。通常1週間単位で4~8mgから開始し、効果と副作用を見ながら最大16mgまで増量可能です。週に1回、12時間間隔で3回に分けて服用する独特の投与法を取ります。
サラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジンEN)は、免疫抑制作用を持たないため感染症リスクが比較的低い薬剤です。250mgから開始し、1,000mgまで漸増します。肝障害や間質性肺炎の報告が少なく、妊娠中も必要であれば継続可能な特徴があります。メトトレキサートとの併用でそれぞれ単剤使用よりも効果が高まることが報告されています。
レフルノミド(商品名:アラバ)は、メトトレキサート同様に効果の高い免疫抑制薬で、欧米では広く使用されています。初期投与の100mg×3日間は日本では省略されることが多く、通常は10~20mg/日で維持療法を行います。腎機能低下時でも使用できる利点がありますが、肝障害、血球減少、間質性肺炎に注意が必要です。
タクロリムス(商品名:プログラフ)は、臓器移植やRA以外の自己免疫疾患の治療にも使用される免疫抑制薬です。メトトレキサートと同等の効果を持ちながら、肝障害や間質性肺炎の報告が少なく、妊娠中も必要であれば継続可能です。1~3mg/日で使用しますが、腎障害に注意が必要で、定期的な血清クレアチニン測定と血中濃度モニタリングが推奨されます。
イグラチモド(商品名:コルベット、ケアラム)は、サラゾスルファピリジンと同等の効果を持つ国産の抗リウマチ薬です。リウマトイド因子が高値の場合により効果が期待できると報告されています。1日1回25mgから開始し、4週間後の安全性確認後に1日2回50mgへ増量するのが一般的です。粘膜障害や間質性肺炎に注意が必要で、メトトレキサートとの併用で効果が増強されます。
ブシラミン(商品名:リマチル)は、免疫抑制薬ではないため感染症リスクが比較的少ない薬剤です。100mg×2~3回/日で使用し、タンパク尿に特に注意が必要です。ミゾリビン(商品名:ブレディニン)は、50mg×3回/日で開始する免疫抑制薬ですが、重篤な感染症の報告が比較的少ない特徴があります。他の抗リウマチ薬で効果不十分な場合の追加併用薬として選択されることがあります。
日本リウマチ学会が公開するメトトレキサート使用と診療の手引き2023年版では、MTXの詳細な投与方法と副作用管理について解説されています
疾患修飾性抗リウマチ薬の生物学的製剤(bDMARDs)種類
生物学的製剤(biological DMARDs:bDMARDs)は、遺伝子組換え技術や細胞培養技術を用いて製造される高分子タンパク質製剤です。特定の炎症性サイトカインや免疫細胞を標的として作用するため、従来型DMARDsよりも高い効果が期待できます。
これは画期的な治療です。
TNF阻害薬は、bDMARDsの中で最も早く開発された薬剤群です。インフリキシマブ(商品名:レミケード、バイオシミラーあり)は点滴静注製剤で、初回投与後2週、6週、以降8週間隔で投与します。メトトレキサートとの併用が必須とされ、中和抗体の産生を抑制します。投与量は体重に応じて3~10mg/kgで調整されます。
エタネルセプト(商品名:エンブレル、バイオシミラーあり)は週1~2回の皮下注射製剤で、自己注射が可能です。メトトレキサート併用は必須ではありませんが、併用により効果と継続率が向上します。アダリムマブ(商品名:ヒュミラ、バイオシミラーあり)は2週間に1回の皮下注射で、自己注射デバイスが充実しており利便性が高い特徴があります。
ゴリムマブ(商品名:シンポニー)は4週間に1回の皮下注射、セルトリズマブペゴル(商品名:シムジア)は初回投与後2週、4週の後、以降2週または4週間隔の皮下注射で使用します。これらも自己注射が可能で、患者のライフスタイルに応じた選択が可能です。
IL-6阻害薬は、炎症性サイトカインであるインターロイキン6の作用を阻害します。トシリズマブ(商品名:アクテムラ)は点滴静注製剤(4週間隔8mg/kg)と皮下注射製剤(週1回162mg)があり、メトトレキサート併用なしでも高い効果を示します。
CRP値が速やかに低下する特徴があります。
サリルマブ(商品名:ケブザラ)は2週間に1回の皮下注射で、トシリズマブと同様の作用機序を持ちます。
T細胞共刺激阻害薬であるアバタセプト(商品名:オレンシア)は、点滴静注製剤(4週間隔、体重別投与量)と皮下注射製剤(週1回125mg)があります。T細胞の活性化を抑制する独自の作用機序を持ち、他のbDMARDsで効果不十分な場合の選択肢となります。
生物学的製剤の3割自己負担額は月額30,000~40,000円と高額です。年間では36万~48万円の自己負担となり、経済的負担が治療継続の障壁となることがあります。高額療養費制度の活用により、実際の負担額は所得に応じて軽減されますが、それでも継続的な経済負担は無視できません。
湯川リウマチ内科クリニックの生物学的製剤一覧ページでは、各製剤の特徴と使い分けについて詳しく解説されています
疾患修飾性抗リウマチ薬のJAK阻害薬(tsDMARDs)特徴
分子標的合成DMARD(targeted synthetic DMARDs:tsDMARDs)の代表であるJAK阻害薬は、2016年から日本で使用可能になった最新の経口薬剤群です。細胞内シグナル伝達に関与するヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害することで、複数のサイトカインの作用を同時に抑制します。
経口薬である点が大きな利点です。
トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)は、日本で最初に承認されたJAK阻害薬です。通常5mg×2回/日で使用し、メトトレキサートとの併用または単剤で投与されます。JAK1とJAK3を選択的に阻害し、高い有効性を示しますが、帯状疱疹の発現頻度がアジア人で8.1/100人・年と高いことが報告されています。
バリシチニブ(商品名:オルミエント)は、JAK1とJAK2を選択的に阻害する薬剤です。通常4mg×1回/日で開始し、効果不十分時は2mgへ減量が可能です。日本人での帯状疱疹発現頻度は6.5/100人・年とやや高めですが、トファシチニブよりは低い傾向があります。
腎機能に応じた用量調整が必要です。
ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)は、日本で開発されたJAK阻害薬で、100mg×1回/日または150mg×1回/日で使用します。帯状疱疹発現頻度は比較的低いとされますが、他のJAK阻害薬同様に注意が必要です。ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)は、JAK1選択性が高く、15mg×1回/日で開始します。高い有効性が期待できる一方、帯状疱疹リスクには注意が必要です。
フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)は、最もJAK1選択性が高い薬剤とされ、200mg×1回/日で使用します。帯状疱疹リスクが他のJAK阻害薬と比べて低いという報告がありますが、長期データの蓄積が待たれます。
JAK阻害薬の最大の懸念は帯状疱疹の高頻度発症です。従来の抗リウマチ薬の2~4倍、場合によっては数倍から数十倍にリスクが上昇します。JAK阻害薬投与中の帯状疱疹は、人種差があり欧米人より日本人を含むアジア人で発症頻度が高いことが明らかになっています。播種性帯状疱疹を含む重篤例も報告されているため、投与前の帯状疱疹ワクチン接種が強く推奨されます。
JAK阻害薬の3割自己負担額は月額42,000~45,000円と、生物学的製剤よりもさらに高額です。年間では50万円以上の自己負担となる計算になります。経口薬の利便性と高い効果は魅力的ですが、医療経済的な観点からは慎重な選択が求められます。
日本リウマチ学会のJAK阻害薬使用の手引きでは、帯状疱疹リスクと対策について詳細に記載されています
疾患修飾性抗リウマチ薬のバイオシミラー費用効果
バイオシミラー(biosimilar:BS)は、先行バイオ医薬品の特許期間満了後に開発される「バイオ後続品」です。化学合成医薬品のジェネリック医薬品とは異なり、生物学的製剤は高分子で構造が複雑なため、完全に同一の製品を製造することは不可能です。
医療費削減の切り札として注目されています。
バイオシミラーは、先行品と品質、安全性、有効性において同等性・同質性を示すことが承認の条件となります。化学合成医薬品のジェネリック医薬品が先発品の0.5掛けで薬価算定されるのに対し、バイオシミラーは基本的に0.7掛けで算定されます。開発・製造コストが高いことを反映した設定です。
インフリキシマブのバイオシミラー(商品名:インフリキシマブBS)は、先行品レミケードの約70%の薬価で設定されており、点滴1回あたりの薬剤費が約3割削減されます。年間使用する場合、患者1人あたり数十万円単位での医療費削減効果が見込まれます。エタネルセプトのバイオシミラー(商品名:エタネルセプトBS)も同様に、先行品エンブレルと比較して約30%の薬剤費削減が可能です。
アダリムマブのバイオシミラー(商品名:アダリムマブBS)は、複数の製薬会社から発売されており、競争により更なる価格低減が期待されています。先行品ヒュミラの3割負担で月額約36,000円に対し、バイオシミラーでは月額約24,000円程度となり、年間約14万円の自己負担軽減となります。
2024年度のバイオシミラー置き換えによる医療費削減効果は、薬価ベースで1,103億円に達したと報告されています。厚生労働省は2029年度末までに、バイオシミラーに80%以上置き換わった成分数を全体の60%以上にするという目標を掲げています。医療経済的観点から、バイオシミラーへの切り替えは今後さらに推進されると予想されます。
臨床現場では、先行品からバイオシミラーへの切り替え(スイッチング)に対する患者の不安が課題となっています。しかし、切り替えによる有効性や安全性の問題は報告されておらず、日本リウマチ学会も適切な説明のもとでの切り替えを推奨しています。医師と薬剤師が連携し、患者に十分な情報提供を行うことが、バイオシミラー普及の鍵となります。
どういうことでしょうか?
バイオシミラーは製造プロセスが複雑であるため、ジェネリック医薬品のように多数のメーカーが参入することは困難です。そのため、競争による価格低減効果には限界があります。それでも現状の医療財政を考えると、バイオシミラーの積極的活用は避けて通れない課題です。
疾患修飾性抗リウマチ薬の治療戦略における併用療法
関節リウマチ治療では、単剤療法よりも複数のDMARDsを組み合わせた併用療法が高い効果を示すことが多数報告されています。特にメトトレキサートをアンカードラッグとして、他の薬剤を組み合わせる戦略が主流となっています。
併用が治療成功の鍵です。
メトトレキサートと従来型合成DMARDsの併用療法では、メトトレキサート単剤で効果不十分な場合に、サラゾスルファピリジン、イグラチモド、ブシラミンなどを追加します。メトトレキサート+サラゾスルファピリジンの併用は、それぞれの単剤使用と比較して有意に高い寛解率が報告されています。トリプルセラピー(メトトレキサート+サラゾスルファピリジン+ヒドロキシクロロキン)は、欧米で広く実施されている併用療法です。
メトトレキサートと生物学的製剤の併用療法は、現在の関節リウマチ治療において最も効果的な戦略の一つです。インフリキシマブはメトトレキサート併用が必須とされますが、これは中和抗体産生を抑制し、薬剤の効果を持続させるためです。エタネルセプト、アダリムマブなどのTNF阻害薬も、メトトレキサート併用により単剤使用よりも関節破壊抑制効果が高まることが証明されています。
IL-6阻害薬のトシリズマブは、メトトレキサート併用なしでも高い効果を示す特徴があります。メトトレキサート使用困難例や、副作用により中止した患者での選択肢として有用です。しかし、メトトレキサートとの併用によりさらなる効果増強が期待できるため、可能であれば併用が推奨されます。
メトトレキサートとJAK阻害薬の併用療法も、高い有効性が報告されています。トファシチニブ、バリシチニブなどは、メトトレキサート併用または単剤のいずれでも承認されていますが、併用により効果と継続率が向上します。ただし、免疫抑制の程度が強まるため、感染症リスクの増加に注意が必要です。
併用療法を実施する際の注意点として、副作用のモニタリング頻度を上げる必要があります。肝機能障害、血球減少、間質性肺炎などの重篤な副作用は、併用により発現リスクが高まる可能性があります。定期的な血液検査、胸部X線検査、患者への症状確認を怠らないことが重要です。
治療目標である寛解または低疾患活動性が達成され、一定期間維持できた場合、薬剤減量や中止を検討します。減量する順序は一般的に、グルココルチコイド→生物学的製剤またはJAK阻害薬→メトトレキサートの順が推奨されます。ただし、減量・中止により再燃するリスクがあるため、慎重なモニタリングが必要です。
併用療法は医療費の増加も招きます。生物学的製剤にメトトレキサートを併用した場合、年間の薬剤費は50万円を超えることも珍しくありません。高額療養費制度を活用しても、継続的な経済負担は大きく、患者のアドヒアランスに影響します。医療経済的観点も含めた治療計画の立案が、医療従事者に求められます。
公益財団法人日本リウマチ財団のウェブサイトでは、関節リウマチの治療戦略全体について患者向けに分かりやすく解説されています