色素レーザーの種類と治療効果の違い

色素レーザーの種類

色素レーザーの主な種類
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Vビーム(ダイレーザー)

595nmの波長で血管病変に特化した色素レーザー治療機器です

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ロングパルスYAGレーザー

1064nmの波長で皮膚深部まで到達する色素レーザーです

Qスイッチレーザー

ナノ秒単位のパルス幅でメラニン色素を破壊する色素レーザーです

色素レーザーVビームの基本的特徴

Vビームは595nmの波長を持つ色素レーザー(ダイレーザー)で、血液中のヘモグロビンに選択的に反応する医療機器です。血管中のヘモグロビンがレーザーの光エネルギーを吸収して熱変換し、異常に増殖した血管を破壊することで治療効果を発揮します。

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従来の色素レーザーと比較して、Vビームはパルス幅を0.45、1.5、3、6、10、20、30、40msecと8段階で調節できる点が大きな特徴です。パルス幅の調整により、細い血管から太い血管まで、血管径に合わせた最適な治療が可能になりました。またレーザー照射直前に冷却ガスを噴射するシステム(DCD)により、周囲組織のダメージを抑えながら強いエネルギー照射ができます。

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Vビームは単純性血管腫、乳児血管腫(いちご状血管腫)、毛細血管拡張症の治療に保険適用が認められており、赤ら顔やニキビ跡の赤みなど美容目的の治療は自費診療となります。治療間隔は保険適用の場合3ヶ月に1回、自費診療では1ヶ月ごとが一般的です。

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色素レーザーロングパルスYAGレーザーの深達性

ロングパルスYAGレーザーは1064nmという医療レーザーの中で最も長い波長を持つ色素レーザーで、皮膚の深部まで到達する点が最大の特徴です。Vビームの波長595nmと比較すると、より深い層にある血管病変や太い血管にも反応し、Vビームで効果が見られなかった症状に対する第2選択として用いられます。

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ロングパルスYAGレーザーはヘモグロビン色素とメラニン色素の両方に反応するため、血管病変だけでなくシミや小じわの改善、脱毛など幅広い用途に対応できます。設定を変更することで美容目的の施術にも使用され、コラーゲン増生効果により肌質改善も期待できる多機能な色素レーザーです。​
保険適用の対象となるのはQスイッチNd:YAGレーザーによる太田母斑、異所性蒙古斑(青あざ)、外傷性色素沈着症の治療に限られます。ロングパルスYAGレーザーは深達性が高い反面、Vビームと比較して痛みが強い傾向があり、傷あとを生じる可能性もあるため慎重な照射が必要です。

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色素レーザーQスイッチレーザーのメラニン色素への効果

Qスイッチレーザーは1発の照射時間がナノ秒(10億分の1秒)という非常に短いパルス幅で高エネルギーの光を照射する色素レーザーです。照射したレーザーの光がメラニン色素に吸収される際に発する熱エネルギーによって、色素を微細に破壊する仕組みとなります。

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Qスイッチレーザーには光の波長が異なる複数のタイプがあり、主なものとして以下が挙げられます。

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📌 Qスイッチ・ヤグ(YAG)レーザー:532nmと1064nmの波長を持つ

📌 Qスイッチ・ルビーレーザー:694nmの波長を持つ

📌 Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー:755nmの波長を持つ

照射するターゲットの色に応じて異なる波長帯を使い分けることで、シミ、ほくろ、そばかす、茶色・青色・黒色のあざ、赤みのあるニキビ跡など幅広い色素病変にアプローチできます。Qスイッチレーザーは色素破壊に特化した色素レーザーとして、従来のレーザーでは困難だった刺青(タトゥー)除去にも効果を発揮します。​

色素レーザーピコ秒レーザーの最新技術

ピコ秒レーザーはQスイッチレーザーよりもさらに短いパルス幅(ピコ秒単位、1兆分の1秒)で色素を微細化する最新の色素レーザー技術です。従来のナノ秒レーザーと比較して、より細かく色素を破壊できるため、色素除去効果が高く、周囲組織へのダメージを最小限に抑えられます。​
ピコ秒レーザーの代表的な機器としてピコシュアやピコウェイがあり、シミ、くすみ、タトゥー除去、毛穴改善など多岐にわたる治療に使用されています。短いパルス幅により熱作用が少ないため、炎症後色素沈着のリスクが低減され、ダウンタイムも短縮されるという利点があります。​
色素レーザーの進化により、ピコ秒レーザーは従来のレーザーでは取りきれなかった薄いシミや肝斑にも対応可能となり、より安全で効果的な治療選択肢として注目されています。ただし、治療効果や適応症状は個人差があるため、医師による適切な診断と機器選択が重要です。​

色素レーザー治療における独自の選択基準

色素レーザー治療を選択する際には、単に症状の種類だけでなく、患者の年齢や肌質、生活環境も考慮した総合的な判断が必要です。特に小児の血管腫治療では、皮膚の薄い早期に色素レーザー治療を開始することで高い治療効果が期待できます。

参考)https://osaka-aza.com/telangiectasia-insurance/


治療の優先順位として、まずVビームなどの標準的な色素レーザーで治療を開始し、効果が不十分な場合にロングパルスYAGレーザーなど深達性の高い機器へ移行する段階的アプローチが推奨されています。保険適用の可否も重要な選択基準であり、単純性血管腫、乳児血管腫、毛細血管拡張症は保険適用、酒さによる赤ら顔やニキビ跡の赤みは自費診療となります。

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また、色素レーザー治療のダウンタイムは照射部位の赤みや内出血が2日から2〜3週間程度続くため、社会生活や仕事への影響も考慮する必要があります。治療効果を最大化するには、日焼け対策の徹底や適切な照射間隔の遵守が不可欠で、3〜5回の繰り返し治療が一般的です。

参考)https://osaka-aza.com/vbeam-downtime/


<参考リンク>

色素レーザーの臨床応用について詳しく知りたい方は、日本レーザー医学会の公式サイトが参考になります。

可変式ロングパルスダイレーザー(Vビーム®)の臨床的有用性

色素レーザーの治療原理とメカニズムについては、こちらの論文が詳細な情報を提供しています。

レーザー治療のメカニズム – 選択的光熱融解理論