シャント吻合用器具と吻合
シャント吻合用器具とクランプの選択
シャント吻合用器具の中でも、実臨床で差が出やすいのがクランプ(鉗子)です。人工血管(ePTFEグラフト)を扱う場面では、クランピングが必要な場合「非損傷性あるいは無鉤の鉗子のみを使用」し、「同一箇所を繰り返しまたは過度にクランピングしない」ことが明確に注意喚起されています。これは把持圧や歯の形状がグラフト壁の損傷につながり得るためで、器具選択がそのまま安全性に直結します。
臨床的には「遮断できているか」だけでなく、「解除後に吻合予定部が荒れていないか」を確認できる設計・操作性が重要です。特に小口径の血管・脆い血管では、クランプの先端の当たり方で内膜損傷→血栓→早期閉塞の連鎖が起こり得るため、施設として標準クランプを固定し、術者間で把持の癖を減らす運用が現実的です。
また、人工血管アクセスでは「穿刺部位をローテーションさせることが重要」とされ、破損や血腫、偽性動脈瘤などの予防に関わると記載されています。吻合用器具そのものではありませんが、器具・手技・術後運用が一体である点は、アクセスチーム全体で共有すべき要点です。
シャント吻合用器具と丸針と縫合
吻合の安定性に直結するのが針の選び方で、ePTFEグラフトの注意事項として「吻合の際は、丸針を使用すること」と明記されています。さらに縫合孔からの出血を避けるため「小径で先細の丸針」を推奨し、角針はグラフト損傷の可能性があるため使用しないよう示されています。
ここでのポイントは、針の選択が単なる好みではなく「材料特性に合わせたルール」だという点です。グラフト側の針穴が荒れると、縫合孔からの出血だけでなく、縫合ラインの機械的弱点になり得ます(結果として血腫や偽性動脈瘤の温床になる)。器具セットを組む際は、術式名ではなく「自己血管か人工血管か」で針・持針器・鑷子まで一括で最適化するのが実務的です。
加えて、縫合は「適切でない場合、グラフト、宿主血管、および縫合ラインが破損する可能性」があるとされ、縫合操作の品質管理が強調されています。新人教育では“手技動画の視聴”だけで終わらせず、針の進入角・把持圧・糸締めのテンションを、器具とセットで反復できる環境を作るほど、合併症の再発防止につながります。
シャント吻合用器具と人工血管とトンネル
人工血管を用いたブラッドアクセスでは、吻合そのものだけでなく「トンネル形成」と「グラフトの取り扱い」が成績を左右します。添付文書では、トンネラーを用いて「グラフト直径にできるだけ近い組織トンネル」を作ること、外部サポート付では内径を内径より1〜2mm程度大きくすることなど、具体的な指示があります。
意外に見落とされやすいのが、トンネルが大きすぎる場合に「癒着が遅れたり不十分となる」「グラフト周囲のセローマ形成が起こりやすくなる」といった記載です。つまり“通しやすさ”だけを優先すると、術後の合併症(滲出・腫脹・局所トラブル)を招く余地があるため、器具(トンネラー径)と設計(ルート)のセットで最適化が必要になります。
さらに「グラフトがねじれないよう充分に注意」と明記されており、これは吻合部の角度やキンクだけでなく、流体力学的に乱流・停滞を生み血栓リスクを高め得ます。術中の“見た目”に加え、術後超音波での評価を前提に、ねじれや屈曲を作らない器具の扱いを標準化することが大切です。
シャント吻合用器具とフラッシュとセローマ(意外な盲点)
検索上位の一般解説では語られにくい一方で、現場の再発トラブルに直結し得るのが「フラッシュ」と「過剰操作」の問題です。ePTFEグラフトでは、血管内の微細構造に空気層がある旨に触れた上で、過剰操作、血中での屈曲、血管壁を透過するような圧力での生理食塩水フラッシュなどを避けるよう注意喚起されています。
さらに禁忌・禁止として「術中に吻合部を調べる際、グラフト内腔に圧力をかけて溶液を流さない」ことが示され、疎水性が損なわれセローマ形成につながる可能性があるとされています。つまり「漏れがないか見たい」「通りを確認したい」という善意の操作が、材料学的には逆効果になり得る、という点が盲点です。
この“意外な落とし穴”は、器具の問題にも波及します。例えば、先端が硬いシリンジや不適切なアダプタで内腔を押し付ける、同一部位を繰り返しクランプする、といった一連の操作が重なると、グラフトの損傷や滲出のリスクが積み上がります。シャント吻合用器具の教育は、吻合手技だけでなく「触り方・確認の仕方」を含めて設計し直す価値があります。
参考:人工血管(ePTFEグラフト)のクランプ・丸針・トンネル形成・フラッシュ禁止(セローマ関連)など、ブラッドアクセス手技の注意点が具体的にまとまっています。
https://lemaitre-japan.co.jp/pdf/LVG-001-B.pdf

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