尺骨神経支配筋の覚え方とコツ

尺骨神経支配筋の覚え方

尺骨神経支配筋の主なポイント

小指球筋群

小指外転筋・小指対立筋・短小指屈筋・短掌筋の4つで構成され、小指の動きを制御します

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二重神経支配

深指屈筋・虫様筋・短母指屈筋は正中神経と尺骨神経の両方から支配を受けます

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手内筋の大部分

母指球筋を除く手内筋のほとんどが尺骨神経支配です

尺骨神経支配筋の全体像と分類

尺骨神経が支配する筋肉は前腕と手に分布しており、全部で11個あります。前腕部では尺側手根屈筋と深指屈筋の尺側半分(第4指・第5指に向かう部分)を支配し、手部では小指球筋群4つ、骨間筋群、母指内転筋などを支配しています。これらの筋肉は手指の細かい動きや握力の維持に重要な役割を果たしており、尺骨神経が障害されると鷲手変形と呼ばれる特徴的な変形が生じることがあります。

参考)分類して覚えれば楽勝|正中神経・尺骨神経・橈骨神経が支配する…


尺骨神経支配筋を覚えるポイントは、正中神経との対比で理解することです。手の筋肉のうち母指球筋(短母指外転筋・母指対立筋)は正中神経支配で、それ以外のほとんどが尺骨神経支配という原則を押さえると覚えやすくなります。youtube​

参考)肘部管症候群|新中野整形・リハビリテーションクリニック 整形…

尺骨神経が支配する前腕筋の覚え方

前腕部では尺骨神経は2つの筋肉のみを支配しています。1つ目は尺側手根屈筋で、手首を小指側に曲げる(尺屈)作用を持ちます。2つ目は深指屈筋の尺側半分で、具体的には第4指(薬指)と第5指(小指)に向かう部分です。深指屈筋は示指と中指に向かう橈側半分が正中神経支配、薬指と小指に向かう尺側半分が尺骨神経支配という二重神経支配の筋肉です。

参考)語呂とストーリーで覚えよう神経支配、筋肉③尺骨神経支配


前腕の屈筋群のほとんどは正中神経に支配されているため、尺骨神経支配は例外的な存在として「尺側手根屈筋だけ」と覚えると効率的です。この原則を理解しておくと、国家試験などでも迷わず解答できます。​youtube​

尺骨神経支配の小指球筋の語呂合わせ

小指球筋は4つの筋肉で構成されており、すべて尺骨神経に支配されています。効果的な語呂合わせとして「ショー休止、短所、生涯、ショーしたい、男子しくしく」というものがあります。これは「ショー→小指球筋」「短所→短掌筋」「生涯→小指外転筋」「ショーしたい→小指対立筋」「男子しくしく→短小指屈筋」と対応させる覚え方です。

参考)尺骨神経 – Wikipedia


小指球筋の4つは小指外転筋・小指対立筋・短小指屈筋・短掌筋で、これらは小指の細かな動きを制御しています。短掌筋は手掌の皮膚を緊張させる小さな筋肉で、他の3つが小指の骨に付着して小指を動かすのに対し、やや異なる機能を持ちます。

参考)尺骨神経(しゃっこつしんけい、Ulnar Nerve) – …

尺骨神経が支配する手内筋の覚え方のコツ

手内筋のうち尺骨神経が支配するのは母指内転筋、背側骨間筋(4個)、掌側骨間筋(3個)です。骨間筋は指を広げたり閉じたりする動作に重要で、「パーを作る動作」や「指をそろえる動作」に関与しています。母指内転筋は母指を手のひらに近づける動作を行い、物をつまむ際に重要な筋肉です。

参考)尺骨神経麻痺


手内筋を覚えるコツは「母指球筋以外はほぼ尺骨神経」という原則です。母指球筋の短母指外転筋と母指対立筋は正中神経支配ですが、それ以外の手内筋の大部分が尺骨神経支配となっています。この原則を押さえておけば、個別に暗記する負担が大幅に軽減されます。​

尺骨神経における二重神経支配筋の臨床的意義

二重神経支配とは1つの筋肉が2つの異なる神経から支配を受ける状態で、尺骨神経と正中神経の両方から支配される筋肉が3つあります。具体的には深指屈筋、虫様筋、短母指屈筋です。深指屈筋は示指・中指部分が正中神経、薬指・小指部分が尺骨神経に支配されます。虫様筋は第2・3指が正中神経、第4・5指が尺骨神経に支配されます。

参考)二重神経支配の筋:覚える意味と全リスト(一覧)


短母指屈筋は浅頭が正中神経、深頭が尺骨神経に支配される二重神経支配筋です。この二重神経支配の臨床的意義は大きく、1本の神経が完全に断裂しても別の神経が生きているため、ある程度の筋力が保たれることです。神経損傷の症状を考えるうえで、どの筋肉が二重神経支配を受けているかを知ることは診断と予後予測に非常に重要となります。

参考)https://ameblo.jp/jugolo/entry-12371725618.html


尺骨神経が支配する筋肉の理解は、肘部管症候群やギヨン管症候群などの絞扼性神経障害の診断において必須の知識です。尺骨神経麻痺では手背骨間筋の萎縮や鷲手変形といった特徴的な所見が現れるため、支配筋の知識があれば速やかに診断につながります。臨床現場では筋力テストや感覚検査と合わせて、どの筋肉が麻痺しているかを正確に評価することが治療方針の決定に直結します。

参考)肘部管症候群


日本整形外科学会による尺骨神経麻痺の詳細な解説と診断基準
尺骨神経の解剖学的走行と各枝の詳しい機能解説