SGLT2阻害薬の種類と特徴
SGLT2阻害薬(Sodium-Glucose Cotransporter-2阻害薬)は、インスリン作用に依存せずに血糖値を下げることができる経口糖尿病治療薬です。2014年に日本で初めて承認されて以来、その効果と安全性から糖尿病治療の重要な選択肢となっています。
SGLT2阻害薬は腎臓の近位尿細管に存在するSGLT2を阻害することで、本来体内に再吸収されるはずのブドウ糖を尿中に排出させる働きがあります。これにより血糖値を低下させるだけでなく、カロリー排出による体重減少効果も期待できます。
SGLT2阻害薬の国内で使用可能な種類一覧
現在、日本国内では6種類のSGLT2阻害薬が承認されています。それぞれの一般名と商品名は以下の通りです:
一般名 | 商品名 | 発売年 |
---|---|---|
イプラグリフロジン | スーグラ | 2014年 |
ダパグリフロジン | フォシーガ | 2014年 |
ルセオグリフロジン | ルセフィ | 2014年 |
トホグリフロジン | デベルザ/アプルウェイ | 2014年 |
カナグリフロジン | カナグル | 2014年 |
エンパグリフロジン | ジャディアンス | 2015年 |
これらの薬剤はすべて1日1回の服用で、基本的な作用機序は同じですが、それぞれに特徴があり、患者さんの状態に合わせて選択することが重要です。
SGLT2阻害薬の海外で承認されている種類と日本との違い
日本と海外(主に米国・欧州)では、使用可能なSGLT2阻害薬に若干の違いがあります。海外では以下の薬剤も承認されています:
- エルツグリフロジン(商品名:Steglatro)
- ベキサグリフロジン(商品名:Brenzavvy)
- ソタグリフロジン(商品名:Inpefa)※SGLT1も阻害する特徴がある
特にソタグリフロジンは、SGLT2だけでなくSGLT1も阻害する特徴があり、小腸からの糖吸収も抑制するため、作用機序が若干異なります。主に心不全の悪化リスクや心臓関連死のリスク低減を目的として使用されています。
日本ではこれらの薬剤はまだ承認されておらず、使用できないため、海外の臨床研究結果をそのまま日本人患者に適用する際には注意が必要です。
SGLT2阻害薬の種類別特徴と使い分けのポイント
各SGLT2阻害薬には、それぞれ特徴があり、患者さんの状態や併存疾患に応じた使い分けが重要です。主な特徴を以下にまとめます:
- イプラグリフロジン(スーグラ)
- インスリン治療と併用可能
- 通常量の半量規格があり、減量調整がしやすい
- 服用時間が朝食時に限定されている制約あり
- ダパグリフロジン(フォシーガ)
- インスリン治療と併用可能
- 心血管疾患・腎疾患に対する適応あり
- エビデンスが豊富
- 服用時間が朝食時に限定されていない柔軟性
- ルセオグリフロジン(ルセフィ)
- フィルム製剤があり、持ち運びに便利
- 服用時間が朝食時に限定されている
- トホグリフロジン(デベルザ)
- 半減期が短く、夜間頻尿などの副作用が抑えられる可能性
- 錠剤に割線があり、減量調整がしやすい
- SGLT2選択性が高い
- 服用時間が朝食時に限定されている
- カナグリフロジン(カナグル)
- 腎疾患への適応あり
- 100mg錠のみで用量調節がしにくい
- 服用時間が朝食時に限定されている
- エンパグリフロジン(ジャディアンス)
- 心血管疾患への適応あり
- エビデンスが豊富
- SGLT2選択性が極めて高い
- 半減期が比較的長い(約10時間)
- 服用時間が朝食時に限定されている
これらの特徴を踏まえ、例えば心血管疾患リスクの高い患者にはダパグリフロジンやエンパグリフロジン、腎機能低下患者にはダパグリフロジンやカナグリフロジンが選択肢となる場合があります。
SGLT2阻害薬の種類と配合剤の選択肢
SGLT2阻害薬には単剤だけでなく、他の糖尿病治療薬と組み合わせた配合剤も開発されています。これらの配合剤は服薬錠数を減らし、患者さんのアドヒアランス向上に役立ちます。
SGLT2阻害薬とメトホルミンの配合剤:
- ダパグリフロジン+メトホルミン(商品名:Xigduo)
- カナグリフロジン+メトホルミン(商品名:Vokanamet)
- エンパグリフロジン+メトホルミン(商品名:Synjardy)
SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の配合剤:
- エンパグリフロジン+リナグリプチン(商品名:Glyxambi)
- ダパグリフロジン+サキサグリプチン(商品名:Qtern)
これらの配合剤は、複数の作用機序を持つ薬剤を1錠で服用できるため、服薬管理が簡便になるメリットがあります。ただし、個々の薬剤の用量調整が難しくなるデメリットもあるため、患者さんの状態が安定してから配合剤への切り替えを検討するのが一般的です。
SGLT2阻害薬の種類と腎保護作用の違い
近年、SGLT2阻害薬は血糖降下作用だけでなく、腎保護作用も注目されています。特に慢性腎臓病(CKD)を合併する2型糖尿病患者において、腎機能低下の進行を抑制する効果が複数の大規模臨床試験で示されています。
日本では現在、ダパグリフロジン(フォシーガ)とエンパグリフロジン(ジャディアンス)が慢性腎臓病に対する効能・効果の承認を受けています。カナグリフロジン(カナグル)も腎疾患への適応がありますが、他の薬剤については腎保護作用に関するエビデンスの蓄積が進行中です。
腎保護作用のメカニズムとしては、以下のような機序が考えられています:
- 尿細管糸球体フィードバック機構の正常化
- 腎内レニン・アンジオテンシン系の抑制
- 腎臓内の低酸素状態の改善
- 炎症・線維化の抑制
- 尿酸値の低下
これらの作用により、アルブミン尿の減少や腎機能低下の進行抑制が期待できます。特に糖尿病性腎症の早期から中期(eGFR 30 mL/min/1.73m²以上)の患者さんでは、積極的な使用が推奨されています。
ただし、重度の腎機能障害(eGFR 30 mL/min/1.73m²未満)の患者さんでは血糖降下作用が減弱するため、使用する際には注意が必要です。また、薬剤によって使用可能な腎機能の基準が異なるため、処方前に添付文書を確認することが重要です。
SGLT2阻害薬の腎保護作用に関する詳細情報(National Kidney Foundation)
腎保護作用の強さについては薬剤間で直接比較した研究が少ないため、どの薬剤が最も効果的かについては明確な結論は出ていません。しかし、大規模臨床試験でエビデンスが示されているダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジンが腎保護作用の面では選択肢として考慮されることが多いでしょう。
以上、SGLT2阻害薬の種類と特徴について解説しました。患者さんの状態、併存疾患、ライフスタイルなどを総合的に考慮し、最適な薬剤を選択することが重要です。また、これらの薬剤は比較的新しいため、今後も新たなエビデンスが蓄積されていくことが期待されます。医療従事者は最新の情報を常にアップデートし、エビデンスに基づいた処方を心がけましょう。
SGLT2阻害薬は糖尿病治療の選択肢を広げただけでなく、心血管イベントの抑制や腎保護作用など、多面的な効果をもたらす薬剤です。その特性を理解し、適切に使用することで、患者さんの予後改善に貢献できるでしょう。