serratia marcescens 抗菌薬
serratia marcescens 抗菌薬 感受性の基本(まず押さえること)
Serratia marcescens(以下S. marcescens)は院内感染で遭遇しやすい腸内細菌目細菌で、血液・尿などから分離されることが多い一方、重症化すると致命率も高く「軽く見てはいけない」起因菌です。
医療従事者が最初に押さえるべきは、S. marcescensが「感受性結果に従うだけ」では事故り得る菌だという点です。理由は、AmpC(染色体性βラクタマーゼ)を含む複数の耐性機序により、治療中にβラクタム系へ耐性化して失敗する“シナリオ”が存在するためです。
とはいえ、すべての症例で最初からカルバペネムに寄せると、AMR・腸内細菌目細菌全体の耐性圧を上げるリスクが現実になります。そこで重要なのが、①感染巣(ソース)を特定できるか、②菌量が多そうか、③ドレナージやデバイス抜去ができるか、④患者の予備能(免疫不全・ショックなど)を同時に評価し、抗菌薬の“太さ”を決めることです。
【現場で使えるミニチェック✅】
- 血液培養陽性(菌血症)か?(Yesなら基本は強めに開始)
- デバイス(中心静脈カテーテル、尿道カテーテル、人工物)が関与しそうか?
- 画像で膿瘍・閉塞・壊死が疑えるか?(抗菌薬だけで治りにくい)
- 感受性の「S」でもMICが高め側ではないか?(境界域は実臨床で転びやすい)
serratia marcescens 抗菌薬 耐性(AmpCと“治療中に外れる”を回避)
S. marcescensは、染色体性AmpCをコードし得る菌種群(AmpC産生腸内細菌目細菌)として整理され、治療中の耐性化が問題になります。
ただし、同じAmpCでも菌種によって“危険度の勾配”があり、Enterobacter cloacae、Klebsiella aerogenes、Citrobacter freundiiは耐性化リスクが相対的に高い一方、S. marcescensは「相対的に低いか、程度がよく分かっていない群」として扱われ、条件が整えば感受性に従った選択が可能とされています。
この“条件が整えば”が臨床の肝です。たとえば、菌量が多い・感染巣のコントロールが困難(ドレナージ不能、デバイス抜去困難、深部感染)では、感受性があっても第3世代セファロスポリンの使用は慎重に、と明確に注意喚起されています。
一方で第4世代セファロスポリンのセフェピムは、AmpC過剰産生株に対しても活性が安定し、観察研究でカルバペネムと同等の治療成績が報告されている、という位置づけで語られます(ただしMICやESBL混在の可能性に注意)。
【“外れる治療”を減らすコツ🛠️】
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- 「SだからOK」ではなく、感染巣の制御可否を同時に確認
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- 深部感染や高菌量が疑わしければ、AmpCに安定な選択肢(セフェピム、カルバペネム等)を優先
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- 初期治療後に、再培養の陰性化・解熱・炎症反応のトレンドで早期に再評価
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- 可能ならAST(抗菌薬適正使用支援チーム)へ早期相談(特に菌血症・ショック・人工物あり)
serratia marcescens 抗菌薬 菌血症・カテーテル関連(重症度で変える)
菌血症やカテーテル関連血流感染(CRBSI)が疑われる状況は、抗菌薬単独での解決が難しいケースがあるため、デバイス抜去を含むソースコントロールが極めて重要になります。
国内の「抗微生物薬適正使用の手引き(別冊)」では、入院患者で問題となる腸内細菌目細菌の治療は、原則として感受性に応じつつ、各施設のアンチバイオグラムも参照して選択することが示されています。
S. marcescensはAmpC群に含まれるため、菌血症で「第3世代セファロスポリン単剤」のような細い攻め方をする場合は、患者が低リスクであること(血行動態安定、免疫不全なし、感染巣制御良好、菌量が高くない見込み)を説明可能にしておくのが安全です。逆にショックや深部感染があるなら、セフェピムやカルバペネムなどAmpCを意識した選択に寄せるのが合理的です。
【臨床メモ📌(判断の目線合わせ)】
- 血液培養陽性+中心静脈カテーテルあり:抜去の可否を最優先で検討
- フォーカス不明の菌血症:画像・尿培養・呼吸器検体などで入口を探す
- 反応が鈍い:薬剤が外れているより、ソースコントロール不十分が原因のことが多い(特にデバイス/膿瘍)
serratia marcescens 抗菌薬 尿路感染・感受性試験(経口への切替まで)
S. marcescensは尿から分離される頻度も高く、尿道カテーテルが感染の入口として重要になり得る点が指摘されています。
尿路感染では、まず「治療すべき感染」か「定着/無症候性細菌尿」かを切り分けるのが抗菌薬適正使用の出発点です(特にカテ留置中の尿培養は“陽性で当たり前”になりやすい)。この段階で不要な治療を減らすことが、結果的にSerratiaを含む耐性菌の選択圧を下げます。
治療が必要な尿路感染で、全身状態が安定し、感受性が確認でき、かつ感染巣の制御(カテ交換・閉塞解除など)ができているなら、静注から経口への切替も現実的になります。手引き別冊でも、非βラクタム系(ST合剤やフルオロキノロン)はAmpCの影響を受けないため、感受性が確認できれば治療選択肢になり、経口吸収率の高さから早期の経口抗菌薬への切替に利用できると記載されています。
一方、フルオロキノロンは“治療中の耐性化”が語られやすく、重症感染では慎重論が出やすい領域です。実際、系統的レビューではS. marcescensの侵襲性感染症でシプロフロキサシン使用が多い一方、重症感染での耐性化懸念にも触れられています。
【経口切替の目安💊】
- バイタル安定、摂取可能、嘔吐なし
- 感受性が確認されている(“想定”ではなく結果ベース)
- カテ交換・閉塞解除など、尿路のソースが整理されている
- 48–72時間で臨床的改善がある(解熱、疼痛、炎症の低下)
serratia marcescens 抗菌薬 独自視点:検査室データの“読み違い”を減らす運用
検索上位の一般的な解説では「感受性試験に従う」が強調されますが、医療現場の事故は“試験結果の読み違い”や“運用のズレ”から起きがちです。ここでは、あえて検査室データの運用に寄せた独自視点で、S. marcescensでよくある落とし穴を整理します。
落とし穴1:菌種名だけで「AmpCだからセフェピム/カルバペネム一択」と固定化する。手引き別冊では、菌種によりAmpC耐性化リスクに差があること、S. marcescensは相対的に低リスク群として扱われ得ることが述べられており、状況によっては狭域化の余地があります。
落とし穴2:「S(感性)」を“絶対的な安全”と誤認する。深部感染や菌量が多い場面では、感受性があっても第3世代セファロスポリンの使用を慎重に、という注意があるため、感染巣の条件が悪い時はSでも失敗し得ます。
落とし穴3:再培養(陰性化確認)を省略し、治療期間やデブリの判断が曖昧になる。特に菌血症では、治療が当たっているかどうかを「症状」だけで判断すると、鎮痛や解熱剤、ステロイドなどで誤差が増えます。Serratiaはバイオフィルムやデバイス関連の文脈で語られることも多く、陰性化確認とソース整理を“セット”で運用するのが堅実です。
【明日から使える運用テンプレ🧩】
- 依頼側(主治医/当直)が記載:感染臓器の推定、デバイスの有無、重症度、抗菌薬開始日時
- 検査室/ICTが返す:菌種確定、推奨される注意点(AmpC群であること、深部感染では慎重、など)
- 48–72時間で“レビュー”:培養の追加提出、画像再評価、薬剤のde-escalation可否
(権威性のある日本語参考:AmpC産生腸内細菌目細菌の位置づけ、セフェピムの考え方、感受性結果の解釈と注意点がまとまっています)
抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 別冊(AmpC産生腸内細菌目細菌の項)

Serratia marcescens Um procarioto: Isolamento e Identificação