先端巨大症の症状と診断基準

先端巨大症の症状と診断

先端巨大症の主要症状と診断のポイント
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特徴的な外見変化

手足の容積増大、先端巨大症様顔貌(眉弓部膨隆、鼻・口唇肥大、下顎突出)、巨大舌が主症候として診断基準に含まれます

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内分泌学的検査

血中GH値の75g経口ブドウ糖負荷試験での抑制不全、血中IGF-1高値(年齢・性別基準値の2SD以上)が診断に必須です

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多彩な合併症

高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、手根管症候群など全身性の合併症が高頻度で認められ、早期発見が重要です

先端巨大症の主症候と身体所見

先端巨大症では、成長ホルモン(GH)の過剰分泌により特徴的な身体変化が緩徐に進行するため、患者自身が気づきにくい特性があります。厚生労働省の診断基準では、主症候として3つの重要な身体変化が挙げられているんです。

参考)下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(指定難病77) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/3922″ target=”_blank”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/3922amp;#8211…


手足の容積増大は97%の患者に認められ、最も頻度の高い症状になります。具体的には、指輪が入らなくなったり靴のサイズが大きくなるといった変化として現れますよ。先端巨大症様顔貌では、眉弓部の膨隆、鼻・口唇の肥大、下顎の突出などが特徴的で、同様に97%の患者で認められます。巨大舌は75%の患者で観察され、話しづらさやいびきの原因となることがあるんです。

参考)先端巨大症


これらの外見変化は数年から10年以上かけて徐々に進行するため、昔の写真と比較することで診断の手がかりになることが多いですよ。骨のX線検査では、手指末節骨の花キャベツ様肥大変形や足底部軟部組織(heel pad)の増大(22mm以上)が認められます。

参考)先端巨大症:どんな病気?特徴的な外見は?検査や治療は?完治で…


<参考>日本内分泌学会による詳細な診断基準と治療指針は、間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)に記載されています。

先端巨大症に特徴的な全身症状

先端巨大症では、外見変化以外にも多彩な全身症状が出現します。発汗過多は70%の患者に認められ、特に夜間の発汗が顕著になることがあるんです。GHの過剰分泌により皮脂腺や汗腺が拡大し、大量発汗と不快な体臭が生じます。

参考)先端巨大症について – 長野・松本障害年金相談センター


頭痛は下垂体腺腫の増大による圧迫症状として高頻度に認められ、診断の契機となることも多いですよ。腫瘍が視神経を圧迫すると視力・視野障害が出現し、特に両耳側半盲が特徴的なんです。女性患者では月経異常が43%に認められ、プロラクチンの同時分泌により乳汁漏出症を伴うこともあります。

参考)巨人症および先端巨大症 – 12. ホルモンと代謝の病気 -…


関節痛や筋力低下も重要な症状で、骨や軟部組織の肥大に伴って変形性関節症や手根管症候群が発症します。手根管症候群は、手首の軟部組織肥大により正中神経が圧迫されることで、手指のしびれや痛みを引き起こすんですよ。睡眠時無呼吸症候群も高頻度に合併し、舌や咽頭部の軟部組織肥厚により気道が狭窄することが原因です。

参考)先端巨大症

症状カテゴリ 主な症状 頻度
外見変化 手足の容積増大、顔貌変化 97%
皮膚症状 発汗過多、多汗 70%
神経症状 頭痛、視野障害、手根管症候群 高頻度
婦人科症状 月経異常 43%(女性)
呼吸器症状 睡眠時無呼吸症候群 高頻度

先端巨大症の合併症と代謝異常

先端巨大症では、GHとIGF-1の過剰により多彩な代謝異常と合併症が高率に発生します。糖尿病インスリン抵抗性の亢進により発症し、先端巨大症患者の約30〜50%に認められるんです。GHには抗インスリン作用があり、耐糖能異常から顕性糖尿病へと進行することがあります。

参考)http://www.igaku.co.jp/pdf/2005_tonyobyo-03.pdf


高血圧も高頻度に合併し、その機序は多因子性です。GHの過剰分泌により電解質の再吸収が促進され、塩分が血液中に保持されることで血圧が上昇します。収縮期および拡張期血圧のいずれも上昇が認められることが特徴的ですよ。

参考)V.先端巨大症・甲状腺機能異常症における降圧治療の意義


心血管合併症として、60〜90%の患者で左心室右心室の肥大化が認められ、弁膜症心不全のリスクが高まります。無治療の場合、これらの心血管合併症により生命予後が著しく悪化するため、早期診断と適切な治療が極めて重要なんです。心臓の拡大は通常認められ、機能が著しく損なわれて心不全を起こすこともあります。

参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E5%85%88%E7%AB%AF%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E7%97%87


悪性腫瘍の合併リスクも増加し、特に大腸癌と甲状腺癌の発生率が高いことが知られています。このため、先端巨大症患者では定期的な大腸内視鏡検査や甲状腺超音波検査が推奨されますよ。脂質異常症や睡眠時無呼吸症候群も高率に合併し、総合的な管理が必要です。​
<参考>先端巨大症の合併症管理について詳しくは、難病情報センターの下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(指定難病77)のページが参考になります。

先端巨大症の診断基準と検査所見

先端巨大症の確定診断には、厚生労働省研究班による診断基準に基づいた総合的評価が必要です。診断基準では、主症候(手足の容積増大、先端巨大症様顔貌、巨大舌)のうち1項目以上を満たし、かつ検査所見3項目すべてを満たすことが確実例の条件とされています。

参考)先端巨大症 診断の手引き – 小児慢性特定疾病情報センター


内分泌学的検査として、まず血中GH値と血中IGF-1(ソマトメジンC)値の測定を行います。IGF-1はGHの作用により主に肝臓で産生されるホルモンで、GHと異なり日内変動が少なく運動や食事の影響を受けにくいため、スクリーニングに有用なんです。先端巨大症では血中IGF-1が年齢・性別基準値の2SD以上の高値を示します。

参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/nanbyo/dl/56-6(1).pdf


75g経口ブドウ糖負荷試験は診断に必須の検査で、正常では血中GH値が0.4ng/ml未満に抑制されますが、先端巨大症では抑制されないことが特徴です。GHには日内変動があり、睡眠や食事、運動などに影響されるため、30分の安静後に採血したり複数回測定することが推奨されますよ。

参考)臨床検査|診断と検査について|先端巨大症ねっと


画像検査では、MRI(磁気共鳴画像法)が下垂体腺腫の診断に選択すべき検査となります。MRIにより下垂体や周辺組織の状態、腫瘍の大きさや広がりを詳細に評価できるんです。心臓ペースメーカー植込み患者などMRI検査ができない場合はCT検査を行います。頭蓋骨X線検査では、トルコ鞍の拡大や副鼻腔の拡大なども参考所見として有用です。

参考)巨人症と先端巨大症 – 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 – …

検査項目 異常所見 診断的意義
血中IGF-1 年齢・性別基準値の2SD以上 スクリーニングに有用
75gOGTT GH値が0.4ng/ml未満に抑制されない 診断に必須
下垂体MRI 下垂体腺腫の存在 原因診断
視野検査 両耳側半盲 腫瘍の圧迫評価

ブドウ糖負荷でGHが正常域に抑制される場合や臨床症候が軽微な場合でも、IGF-1が高値の症例では画像検査を行い総合的に診断することが重要です。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/95/S.May/95_1/_pdf

先端巨大症診断における臨床的留意点

先端巨大症の診断で見落とされやすいポイントとして、症状の緩徐な進行があります。初期症状は非常にゆっくりと現れるため、患者自身や家族が変化に気づかないことが多く、診断までに平均7〜10年を要するケースも珍しくないんです。このため、一般診療において高血圧や糖尿病で治療中の患者に特徴的な顔貌変化や手足の肥大が認められた場合、先端巨大症を積極的に疑う必要がありますよ。

参考)先端巨大症(下垂体性成長ホルモン分泌亢進症)(Acromeg…


鑑別診断として重要なのは、一般的な治療を行っても症状の改善がみられない高血圧患者や、収縮期および拡張期血圧のいずれにも上昇がみられる症例です。また、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症、手根管症候群などで受診した患者においても、先端巨大症の可能性を念頭に置くべきでしょう。

参考)https://medical.teijin-pharma.co.jp/specialty/sml16.html


診断の手順としては、まず臨床症状の確認を行い、手足の肥大や特徴的な顔貌などの主症候の有無を評価します。次に内分泌学的検査として血中GH値とIGF-1値の測定、75g経口ブドウ糖負荷試験を実施し、最後に画像診断でMRIまたはCTにより下垂体腺腫の存在を確認するという流れになるんです。

参考)アクロメガリー(先端巨大症・成長ホルモン産生下垂体腺腫)|昭…


見逃されやすい症例として、IGF-1が軽度高値にとどまるケースや、下垂体腺腫が小さい微小腺腫の症例があります。こうした症例では、臨床症状と検査所見を総合的に判断し、必要に応じて専門医への紹介を検討することが重要ですよ。無治療の場合やコントロールが不十分な場合、合併症により生命予後が悪化するため、早期発見と適切な治療介入が患者の予後改善に直結します。

参考)先端巨大症には適切な治療を|早期発見の重要性|先端巨大症ねっ…


プライマリケアの現場では、手足のサイズ変化(指輪が入らない、靴のサイズアップ)、いびきの増悪、頭痛、視野異常、多汗などの症状を訴える患者に遭遇した際、先端巨大症の可能性を考慮することが診断の第一歩となるんです。特に複数の代謝異常(糖尿病、高血圧、脂質異常症)を合併している症例では、積極的にスクリーニング検査を行うことが推奨されます。​