腺腫性胃ポリープと内視鏡
腺腫性胃ポリープの原因とピロリ菌と萎縮性胃炎
腺腫性胃ポリープ(胃腺腫)は、胃粘膜の腫瘍性病変であり、臨床的には「前がん病変」として扱うのが基本です。胃腺腫はピロリ菌感染に関連した萎縮性胃炎を背景に出現しやすい、と説明されることが多く、背景粘膜の評価がリスク層別化の起点になります。
ピロリ菌感染が持続すると胃粘膜に慢性炎症が起こり、萎縮が進むことがあり、萎縮性胃炎は胃がんリスクの文脈でも重視されます。そのため、腺腫性胃ポリープが見つかった時点で、病変だけでなく「胃全体の背景」(萎縮の程度、腸上皮化生の広がり、ピロリ菌の既感染/現感染/除菌後)を同時に記載しておくと、上司チェックや多職種連携での齟齬が減ります。
意外に見落とされやすいのが、「腺腫性=必ずしも症状の原因ではない」点です。胃腺腫自体は無症状で検診・健診の内視鏡で偶然見つかることが多く、患者側は“ポリープ=すぐ癌”と受け取ることがあるため、背景粘膜の説明(ピロリ菌・萎縮)とセットで、過度な恐怖を抑えつつ必要な介入に誘導する説明が重要になります。
腺腫性胃ポリープの内視鏡と鑑別と所見
隆起性病変の鑑別では、胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、胃腺腫、腸上皮化生、粘膜下腫瘍などが並び、まず「上皮性か非上皮性か」に着目する、という整理が臨床的に有用です。上皮性病変は基部で境界が明瞭で立ち上がりが急峻、という所見の軸を持つと、初学者でも説明がぶれにくくなります。
胃腺腫は内視鏡的に褪色調の扁平隆起としてみられ、境界が明瞭で比較的均一な粗大顆粒状を呈する、という典型像が整理されています。さらに、胃腺腫のうち「大きさ2cm以上」「発赤調」「陥凹成分」があるものは悪性頻度が高い、という実務に直結するポイントが示されています。
ここでの“意外な落とし穴”は、生検で「腺腫」と返っても、内視鏡医が見ているのは「病変全体」なのに対し、病理は「採れた一部」しか見ていない点です。大きい病変、発赤や陥凹を伴う病変、経過観察で増大傾向がある病変では、病変内に早期胃がんが混在していても不思議ではないため、「所見×病理×経過」の3点セットで再評価し、必要なら切除方針を前向きに検討します。
腺腫性胃ポリープの病理と異型度と生検
腺腫性胃ポリープは病理で「異型度(低異型度/高異型度)」が評価され、異型度が高いほどがん化リスクが高い、あるいはすでにがんが含まれる可能性があるため、治療方針に直結します。異型度は細胞の“顔つき”が正常からどれだけ逸脱しているか、という考え方で、説明時は「顕微鏡で見た細胞の乱れ具合」と言い換えると伝わりやすいです。
臨床では、病理レポートの「組織型」「異型度」「浸潤の有無・深達度」などが、追加治療や紹介先選定の材料になります。ただし腺腫と早期胃がんの境界領域では、そもそも“鑑別が難しい”ことがあり、内視鏡像で危険所見が強い場合は「生検で腺腫でも安心し切らない」運用が必要です。
医療従事者向けに押さえておきたい実務ワードとしては、患者への説明で「良性です」とだけ言うより、「良性寄りだが将来のがん予防のために切除を検討することがある」という“前がん病変”のニュアンスを入れると、過剰不安と過小評価の両方を避けやすくなります。
腺腫性胃ポリープの切除とESDと経過観察
腺腫性胃ポリープは基本的に前がん病変として扱われ、内視鏡所見で早期胃がんとの鑑別が難しいケースもあるため、切除が検討されます。特に大きいものや陥凹を伴うものはがん化(またはがん混在)の可能性が問題になり、切除が望ましいという整理が一般的です。
現場の意思決定で使いやすい目安として、胃腺腫で「2cm以上」「発赤」「陥凹」「増大傾向」などがある場合に積極的な内視鏡治療の適応として扱う、という説明がされています。切除法としては、病変の大きさ・形態・一括切除の必要性などからEMR/ESDが選択され、腫瘍性ポリープの切除にESDが言及されることもあります。
独自視点として強調したいのは、「切除するかどうか」だけでなく、「切除後の病理で初めて全体像が確定する」ことです。生検は点、切除標本は面(+深さ)で評価できるため、危険所見がある腺腫性胃ポリープほど、切除が“治療”であると同時に“最終診断”の意味を持ちます。
生検や抗血栓薬など健診・日常診療で役立つ運用(安全配慮、判定区分、所見記載の要点)がまとまっている
日本人間ドック・予防医療学会:上部消化管内視鏡健診判定マニュアル(PDF)
隆起性病変の鑑別(胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、胃腺腫)と、悪性頻度が上がる所見(2cm以上・発赤・陥凹)の整理に使える