線状角膜炎治療と診断
線状角膜炎治療の鑑別と診断
線状の角膜所見を見たとき、最初にやるべきは「線状=病名」と短絡せず、角膜炎の大枠(感染性/非感染性)を切り分けることです。感染性角膜炎は細菌・真菌・ウイルス・アカントアメーバが原因となり、初期診断や治療を誤ると重篤な視力障害を生じうると整理されています。
診断は、問診(外傷、コンタクトレンズ装用、ステロイド点眼歴、汚水接触など)と臨床所見の読み取り、そして検査を組み合わせた総合判断が基本です。ガイドラインでは、原因微生物を検出する微生物学的検査が「診断の要」であり、角膜病巣部擦過物を用いることが明記されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/63c27fe57a829562af25b50d132bb99642c78506
「線状」という形態で特に臨床的に紛らわしいのが、偽樹枝状病変(帯状ヘルペス角膜炎、アカントアメーバ角膜炎、薬剤毒性などでも生じ得る)です。偽樹枝状病変はterminal bulbや上皮内浸潤が明瞭でない、先端が先細りになりやすい、などの特徴があり、原因の鑑別が重要とされています。
また、アカントアメーバ角膜炎の初期所見として「放射状角膜神経炎(radial keratoneuritis)」が記載されており、角膜輪部から中央へ向かう神経に沿った線状浸潤として観察される点は、線状所見を扱う上で見落としやすいポイントです。初期・完成期とも角膜ヘルペスに類似し鑑別に注意が必要、という注意喚起もされています。
線状角膜炎治療の点眼と薬物療法
感染性が疑われる線状角膜炎では、原因微生物が確定する前から治療開始が必要になることがあり、患者背景・発症誘因・角膜所見に基づいて起炎菌を推測して初期治療を組み立てます。細菌性角膜炎の初期治療薬は、軽症なら1剤、重症なら作用機序の異なる2剤(フルオロキノロン系・セフェム系・アミノグリコシド系の組み合わせ)という考え方が提示されています。
頻回点眼の設計も重要で、重症例や刺激による流涙が顕著な場合には30分〜1時間ごとの点眼を行う、と具体的に述べられています。さらに、PAE(post-antibiotic effect)の概念に触れ、薬剤の特性に応じて点眼回数設計が変わることも示されています。
一方で、線状所見がヘルペス性角膜炎(上皮型)に一致する場合、治療の基本はアシクロビル眼軟膏(5回/日)が原則とされています。混合感染予防として抗菌点眼の併用は「してもよい」とされ、実臨床での使い分け余地が残されています。
ステロイド点眼は「線状角膜炎治療」の文脈で特に事故が起きやすい領域です。たとえばアカントアメーバ角膜炎では、治療前にステロイド点眼薬を投与した場合に視力予後の不良因子となりうる報告があり、ステロイド点眼は推奨されていないと明記されています。
線状角膜炎治療の検査と擦過
線状角膜炎の原因を早期に詰めるには、「見た目」だけでなく、角膜病巣部擦過物による塗抹検鏡と培養検査をセットで進めるのが基本です。ガイドラインのサマリーでも、細菌性角膜炎の診断には塗抹検鏡と培養検査を強く推奨するとされ、治療開始後の軌道修正に直結します。
塗抹検鏡は迅速性が利点で、Giemsa染色やGram染色、真菌・アメーバシスト検出に有用なファンギフローラY染色などが整理されています。たとえばファンギフローラY染色はキチンやセルロースを特異的に染色し、真菌やアメーバシストを鋭敏に検出し得ると記載されています。
アカントアメーバを疑う線状所見では、治療としても「角膜搔爬(病巣搔爬)」の位置づけが大きいのが特徴です。搔爬はアカントアメーバを直接除去する効果に加え、角膜上皮を除去して薬剤の浸透を良くする効果がある、と説明されています。
加えて、非侵襲的に角膜内の真菌やアカントアメーバの栄養体・シストを観察できる検査として、生体内共焦点顕微鏡(IVCM)の記載があります。熟練を要するという但し書きもあり、施設要件や読影力によって運用が変わる点が臨床的な落とし穴になります。
線状角膜炎治療とコンタクトレンズ
線状角膜炎の背景にコンタクトレンズ(CL)があるかは、治療方針を左右します。国内の感染性角膜炎では発症誘因としてCL装用が最多とされ、特にレンズケア不良による汚染が重要なリスク因子と指摘されています。
CL関連角膜炎は起炎菌が緑膿菌などのグラム陰性桿菌になり得るだけでなく、重症CL関連角膜炎の原因微生物としてアカントアメーバが頻度高い、とも述べられています。線状所見(放射状角膜神経炎など)がある場合、CLの種類・使用期間・使用方法まで詳細に問診して「誤使用」がなかったか確認する、という流れが推奨されています。
臨床現場で見落とされやすいのは、患者が「CLはしていない」と言っても、数日前まで装用していた、オルソケラトロジーを含む、あるいはケア用品(保存液・ケース)が汚染源として残っているケースです。ガイドラインでも、レンズおよび保存ケースが環境菌に汚染され眼表面に持ち込まれる機序が示唆されており、物品を含む生活指導が治療の一部になります。
線状角膜炎治療の独自視点:ステロイド中止判断と説明
検索上位の一般向け解説では「点眼」や「受診」が中心になりがちですが、医療従事者向けには“いつ、何を根拠に、ステロイドを止める/再開するか”の説明設計が実務上の核になります。感染性角膜炎ではステロイド点眼で充血が目立たなくなることがあり、所見が修飾されうると記載されているため、「軽く見える=軽症」と誤認しない注意が必要です。
特にアカントアメーバ角膜炎では、ステロイド点眼が視力予後不良因子となりうる報告があり推奨されない、とまで踏み込んで書かれています。ここは患者への説明にも直結し、「炎症を抑える薬をなぜ一旦避けるのか」を納得してもらえないと、自己判断で残薬を再開されるリスクが上がります。
説明のコツは、①感染性が残る段階でのステロイドは病原体の制御を遅らせ得る、②視力予後に直結する、③その代わり痛みや羞明には別の支持療法(遮光、鎮痛、散瞳など症例に応じた介入)を併用しうる、という「代替案」をセットにすることです。前房炎症が強い症例で瞳孔管理として散瞳薬点眼を使う場合がある、というガイドライン記載は、支持療法の根拠として使いやすい情報です。
治療経過中に改善が乏しい場合は、起炎菌推定の見直し、混合感染、アドヒアランス不良などを再評価する、と整理されています。線状所見に引っ張られず、診断と治療を「検査→初期治療→反応評価→再推定」というループで回すのが、結果的に最短で安全な線状角膜炎治療につながります。
検査と治療(日本の標準的考え方の根拠)。
日本眼感染症学会「感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)」:鑑別、塗抹検鏡・培養、薬剤選択、アカントアメーバ治療(搔爬・クロルヘキシジン/PHMB等)の記載

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