性感染症とは何か症状と予防法

性感染症とは

性感染症の基礎知識
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性的接触による感染

ウイルスや細菌が性器、口腔、肛門の粘膜接触により感染する病気です

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無症状でも感染している可能性

症状が軽い、または全くないこともあり、感染に気付かないまま他者へ感染させることがあります

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早期発見と治療が重要

放置すると不妊や合併症のリスクが高まるため、定期的な検査と早期治療が必要です

性感染症とは何か

性感染症(STI: Sexually Transmitted Infections)は、性的接触を介して感染する病気の総称です。性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ梅毒淋菌感染症など、さまざまな種類があります。性行為による膣や陰茎の接触だけでなく、オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などの性的な接触でも感染します。

参考)性感染症 |厚生労働省


性感染症の大きな特徴は、無症状であることが多いという点です。症状が軽かったり全くなかったりするため、感染していることに気付かないまま生活し、知らず知らずのうちにパートナーへ感染を広げてしまうリスクがあります。2023年の研究では、15歳から24歳の若年層で感染率の上昇が特に顕著であることが報告されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10178083/


世界保健機関(WHO)の統計によると、世界中で毎年数百万件の新規感染が報告されており、公衆衛生上の重大な課題となっています。日本国内でも近年、特に梅毒の感染者数が記録的な増加を示しており、2022年には過去最多を記録しました。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11098264/

性感染症の主な種類と症状

性感染症にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる病原体と症状を持ちます。

参考)主な性感染症一覧

主な性感染症

性感染症 主な症状 特徴
性器クラミジア感染症 排尿痛、おりものの増加、尿道の違和感 無症状が多い、日本で最も多い性感染症 💡
淋菌感染症(淋病 膿性分泌物、強い排尿痛 感染力が非常に高い、女性は無症状例が多い 🔴
梅毒 初期は性器のしこり、後期は全身の発疹 進行すると心臓や神経に障害、キスでも感染 ⚠️
性器ヘルペス 性器の水ぶくれ、痛み 再発しやすい、完治は困難
尖圭コンジローマ イボ状の突起物 HPVウイルスが原因、再発率が高い 🦠
HIV感染症 初期はインフルエンザ様症状 免疫機能を破壊、未治療ではエイズに進行

クラミジア感染症は、男性の半数程度、女性のほとんどが無症状であるため、感染に気付きにくい特徴があります。感染を放置すると、女性では骨盤内感染症(PID)を引き起こし、卵管が詰まることで不妊につながる可能性があります。男性でも前立腺炎精巣上体炎などの合併症を引き起こし、場合によっては不妊の原因になることがあります。

参考)性病・性感染症(クラミジアや淋病など)|目黒区の自由が丘わた…


梅毒は特に注意が必要な性感染症です。症状が自然に消えてしまうことがあるため、治ったと勘違いしやすいですが、治療をしない限り病原体は体内に残り続けます。キスや口腔性交でも感染する強い感染力を持ち、数年から数十年後には心臓、血管、神経の異常が現れ、命にかかわることもあります。

参考)https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/sti

性感染症の感染経路

性感染症の主な感染経路は、性的接触による粘膜や皮膚からの感染です。

参考)性感染症について|東京都性感染症ナビ

主な感染経路

性感染症は、ウイルス、細菌、原虫などの病原体が、性器、泌尿器、肛門、口腔などの粘膜に接触することで感染します。通常の挿入を伴う性行為だけでなく、あらゆる性的接触が感染リスクを持つため、幅広い予防対策が必要です。​
唾液や体液、血液などの分泌物から感染するため、性行為の形態に関わらず注意が必要です。特に複数のパートナーとの性的接触や、不特定多数との関係がある場合は感染リスクが高まります。

参考)コンドームで防げる性感染症とその限界|正しい知識で守る性の健…

性感染症が引き起こす合併症とリスク

性感染症を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。​
女性の場合、クラミジアや淋病の感染が進行すると、骨盤内感染症(PID)と呼ばれる骨盤内の炎症を引き起こします。この炎症により卵管が詰まったり損傷したりすると、不妊症や子宮外妊娠のリスクが高まります。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告では、2022年に250万件以上のクラミジア、淋病、梅毒の症例が報告され、未治療の場合には不妊、慢性骨盤痛、異所性妊娠などの有害な転帰につながる可能性が指摘されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11270754/


男性では、前立腺炎や精巣上体炎などの合併症が生じるリスクがあります。前立腺炎は前立腺に細菌が侵入して炎症が起き、尿道の違和感や排尿時の痛み、陰嚢の痛みなどの症状が現れます。精巣上体炎が悪化すると、皮膚が破れて膿が出ることもあり、男性不妊の原因にもなります。

参考)クラミジア感染症とは?症状・治療法・予防法を解説 – 医療法…


妊娠中の性感染症は特に注意が必要です。母子感染により、流産や早産の原因となるだけでなく、新生児に先天性の障害を引き起こす可能性があります。生殖年齢にある女性が性感染症に罹患した場合、放置すると障害が残る可能性もあります。​
もう一つの重要なリスクとして、性感染症に感染すると、粘膜が傷つくことでHIVに感染しやすくなるという問題があります。HIV感染者の長期生存が可能になった現代でも、慢性腎臓病、心血管障害、認知症などの合併症への対策が必要とされています。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a8b458ace53c958dc90e691fc782c5c0f589fd00

性感染症の予防法

性感染症の予防には、正しい知識と具体的な対策が不可欠です。​

コンドームの正しい使用

コンドームは性感染症予防の最も基本的かつ効果的な方法です。HIVに対しては約80〜90%のリスク低減効果があるとされています。2003年に発表された南米の女性セックスワーカーを対象とした研究では、コンドームを毎回着用していた場合、淋病に関しては62%、クラミジアに関しては26%の感染防御効果が見られました。

参考)大阪市:感染予防方法 コンドームを使おう (…href=”https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000352620.html” target=”_blank”>https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000352620.htmlgt;感染症・病気…

コンドーム使用時の重要なポイントは以下の通りです。

  • 挿入前から使用する:射精前でも精子や分泌液は出ているため、最初から装着が必要です​
  • 全ての性行為で使用:膣性交だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスでも使用します

    参考)コンドームをつけたら大丈夫? みんなのお悩み解決コラム|ST…

  • 正しい装着方法を守る:破損や外れを防ぐため、正しい使用方法を守ることが重要です​

ただし、コンドームは完璧な予防法ではありません。正しく毎回使用しても、HIVで約80%、クラミジアで約60%のリスク減少率とされており、100%の予防は困難です。尖圭コンジローマなど、性器の皮膚接触で感染する病気は、コンドームだけでは完全に防げない場合もあります。

参考)コンドームは「完璧」じゃない?妊娠率・性感染症の予防効果と1…

その他の予防対策

  • 定期的な検査:不安に感じたら早めに検査を受けることが大切です​
  • パートナーとの相互検査:お互いに検査を受け、感染状態を確認することが望ましいです
  • 性的パートナーの数を制限:複数のパートナーとの性的接触はリスクを高めます​
  • 症状がある場合の性行為の回避:自分やパートナーに症状がある場合は性行為を控えます

性感染症の検査と治療方法

性感染症の検査方法は、性別、感染部位、感染症の種類によって異なります。​

検査方法

クラミジア感染症や淋病感染症の場合、女性は膣分泌液や粘膜を軽くこすった分泌物を、男性は尿を用いた検査を行います。肛門に感染した場合は肛門周辺の分泌物、喉に感染した場合はうがい液を用いて検査します。カンジダ症では症状がある場合に綿棒で菌を採取し、症状がない場合は女性は膣分泌液、男性は尿を用いて検査します。​
ヘルペスや尖圭コンジローマの場合は、病変部分からウイルスや細菌を採取する方法が取られます。梅毒やHIV感染症では、男性も女性も血液を採取して検査を行い、HIV感染症の場合は2段階目の確認検査も実施されます。​

受診する医療機関

性感染症が疑われる場合、男性は泌尿器科、女性は産婦人科または婦人科への相談が基本です。症状が性器周辺にある場合は、男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診するのが適切です。皮膚の症状がある場合は皮膚科も選択肢となります。

参考)性病検査で陽性になった場合、病院の何科に行くべき?症状や性別…


症状がなくても性感染症の不安がある場合は、性病全般を専門とする「性感染症内科」を受診することをおすすめします。性感染症内科では、HIV、梅毒、クラミジア、淋病をはじめ、マイコプラズマなど、あらゆる性感染症の検査と治療が可能です。

参考)性病は何科を受診する?どこに行けばよい?

治療方法

性感染症は基本的に自然治癒が難しいため、早急な治療が必要です。治療方法は各性感染症によって異なりますが、大きく分けると内服薬、点滴、外用薬などがあります。

参考)性病の治療方法について


梅毒の場合は飲み薬または注射で治療します。淋菌感染症は注射または点滴を使用し、性器クラミジア感染症は飲み薬を1〜7日間服用します。性器ヘルペスは飲み薬を5〜10日間服用する治療が一般的です。

参考)性病の治療について | 性感染症内科クリニック【プライベート…


性感染症は早期発見・早期治療が重要です。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することが大切です。治療により完治する病気がほとんどですが、放置すると深刻な合併症につながる可能性があるため、不安を感じたら検査を受けることが推奨されます。​

厚生労働省の性感染症に関する情報ページでは、性感染症の基礎知識や予防方法について詳しく解説されています。

厚生労働省:性感染症について

日本性感染症学会のウェブサイトでは、性感染症の種類や診断・治療ガイドラインについて専門的な情報が提供されています。

日本性感染症学会:性感染症とは

東京都保健医療局の性感染症ナビでは、感染経路や予防法について分かりやすく説明されています。

東京都性感染症ナビ:感染経路・予防