成人発症スチル病 治療
成人発症スチル病の治療設計:最短で安全に寛解へ
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治療の全体像
急性炎症の鎮静(ステロイド中心)→再燃予防と減量(免疫抑制薬)→難治例はサイトカイン標的(IL-1/IL-6阻害薬)という流れで考える。
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重症度の見極め
高熱・肝障害・著明高フェリチン・凝固異常などはMAS/重症臓器障害を疑い、初期から強力治療とモニタリングを組み込む。
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薬剤選択の勘所
ステロイド長期化を避けるため、早期からIL-1/IL-6阻害薬の活用を検討し、感染症・悪性腫瘍の除外と並行して治療を前に進める。
成人発症スチル病 治療の基本方針と治療目標(寛解・CID)

成人発症スチル病(AOSD)は、発熱・皮疹・関節痛/関節炎と高度炎症を特徴とし、重症化すると生命を脅かす合併症(MASなど)に進展し得るため、「早期に炎症を止め、ステロイド依存を作らずに寛解へ導く」設計が重要です。
欧州のEULAR/PReS提言では、治療目標(ターゲット)として臨床的非活動(CID:症状がなく、ESRまたはCRPが正常)を定義し、さらにCIDが少なくとも6か月維持された状態を「寛解」としています。

EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease, comprising systemic juvenile idiopathic arthritis and adult-onset Still’s disease - PMC
Systemic juvenile idiopathic arthritis (sJIA) and adult-onset Still’s disease (AOSD) are considered the same disease, bu...
同提言はTreat-to-Target(T2T)を強調し、発症早期から活動性を定期評価して治療を調整すること、最終ゴールは薬剤中止も視野に入れた寛解であることを掲げています。

EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease, comprising systemic juvenile idiopathic arthritis and adult-onset Still’s disease - PMC
Systemic juvenile idiopathic arthritis (sJIA) and adult-onset Still’s disease (AOSD) are considered the same disease, bu...
臨床では「関節炎がそろってから」ではなく、「典型的なスパイク熱(≥39℃が少なくとも7日)、一過性皮疹、筋骨格症状、好中球優位の白血球増多、CRP高値、フェリチン高値」などの組み合わせで早期に疑い、同時に除外診断を進めつつ治療開始のタイミングを逃さないことが現実的です。

EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease, comprising systemic juvenile idiopathic arthritis and adult-onset Still’s disease - PMC
Systemic juvenile idiopathic arthritis (sJIA) and adult-onset Still’s disease (AOSD) are considered the same disease, bu...
特に「炎症が強いほど、治療が遅れるほど、ステロイドが長期化しやすい」という構図になりやすいため、初期治療の段階で“減量を見据えた併用”を組み立てます(後述)。
成人発症スチル病 治療におけるステロイドとパルス療法の使い分け
難病情報センターの解説では、炎症を抑える治療が基本で、通常はグルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)で寛解を目指し、初期内服量としてプレドニゾロン換算で30~60mg程度(病勢や体重で調整)が目安として提示されています。

成人発症スチル病(指定難病54) – 難病情報センター
同ページでは、効果不十分・再燃・減量困難の場合に、ステロイド大量点滴(いわゆるパルス)や、生物学的製剤、免疫抑制薬の併用が選択肢となることが説明されています。

成人発症スチル病(指定難病54) – 難病情報センター
ステロイドの“使い分け”は、臓器障害や合併症の疑い(MAS、心筋炎、重度肝障害、DIC様など)で一段階ギアを上げる発想が鍵になります。
一方でステロイドは効きやすい反面、長期化すると感染症、骨粗鬆症、糖代謝悪化、精神症状など医療安全上の負担も増えるため、最初から「いつ減らすか」「減らせないとき何を足すか」をチームで共有しておくと迷いが減ります。
現場で有用なチェック項目(例)を挙げます。
・🩸炎症:CRP、白血球(好中球優位)、フェリチンの推移
・🧪肝胆:AST/ALT、LDH、ビリルビン
・🧯凝固:Dダイマー、フィブリノゲン、血小板
・🫁🫀臓器:胸水/心嚢液、呼吸状態、胸部画像、心筋逸脱酵素
これらはMASや重症臓器障害の“早いサイン”を拾うためでもあり、治療強度の判断材料にもなります(MASは後述)。

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成人発症スチル病 治療での免疫抑制薬(メトトレキサート・シクロスポリン)位置づけ
ステロイド単剤で沈静化しても、減量過程で再燃しやすい症例が一定数あり、「ステロイドを減らすための支え」として免疫抑制薬を組み込みます。
難病情報センターでも、ステロイドで効果不十分または減量困難な場合に、トシリズマブ(抗IL-6受容体抗体)などの生物学的製剤に加えて、以前から使用されている免疫抑制薬(メトトレキサート、シクロスポリン)などを使用する旨が記載されています。
成人発症スチル病(指定難病54) – 難病情報セ…
免疫抑制薬は「関節優位」「全身炎症優位」「MASリスク」など、病型・病勢で狙いが微妙に変わります。
・メトトレキサート:慢性関節炎のコントロールやステロイド減量の軸として使われやすい(関節優位の要素が強いときに特に意義が出やすい)。
・シクロスポリン:病勢が強く、ステロイド+MTXで不十分、あるいはMASが疑わしい局面で検討されやすい(T細胞・マクロファージ活性の鎮静を意識する)。
注意点として、免疫抑制薬を足す前後は「感染症の除外・再評価」が必須です。AOSDは高熱・炎症反応・臓器障害を示し得るため、敗血症、悪性リンパ腫などの鑑別を誤ると治療が逆効果になり得ます。

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Systemic juvenile idiopathic arthritis (sJIA) and adult-onset Still’s disease (AOSD) are considered the same disease, bu...
成人発症スチル病 治療抵抗性での生物学的製剤(IL-6阻害薬・IL-1阻害薬)
近年の大きな潮流は、「ステロイドを長く使わないために、IL-1阻害薬またはIL-6阻害薬を優先する」という考え方です。EULAR/PReS提言では、全身性グルココルチコイドを長期使用して目標達成・維持することを避ける目的で、IL-1/IL-6阻害薬を優先すべきとし、診断が確立したら可能な限り早期に開始することを推奨しています。

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日本の実臨床では、IL-6阻害薬としてトシリズマブが「成人発症スチル病」に適応を持つ治療選択肢として位置づけられています(保険適用の有無は施設の運用や最新情報の確認が必要)。
成人発症スチル病(指定難病54) – 難病情報セ…
症例報告ベースでも、ステロイドパルス後に漸減で再燃し、シクロスポリン併用でも再燃したステロイド抵抗性AOSDに対し、トシリズマブ導入で速やかな改善とステロイド減量が得られた例が報告されています。
https://nsmc.hosp.go.jp/Journal/2021-11/SMCJ2021-11-2_casereport02.pdf
一方で、生物学的製剤の開始後に見え方が変わる検査もあります。
・IL-6阻害(例:トシリズマブ)では、CRPが薬理学的に抑えられやすく、感染症の見逃しが起き得るため、発熱、呼吸器症状、局所所見、白血球やプロカルシトニン等を組み合わせた監視が安全です(施設プロトコール推奨)。
・IL-1/IL-6阻害薬は“炎症を消す力”が強い分、開始前スクリーニング(結核、B型肝炎、真菌など)とワクチン計画が重要になります。
さらに“意外に重要”な点として、提言では血清IL-18やS100蛋白(例:カルプロテクチン)の著明高値がStill病の診断支持所見となり得るため、利用できる施設では測定を推奨しています。

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IL-18はMASの文脈でも注目されており、単に「フェリチンが高い」より一歩踏み込んだ層別化のヒントになる可能性があります(ただし保険や測定系の制約があるため、現場実装には施設差が出ます)。

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成人発症スチル病 治療で見逃せないMASと高フェリチンの読み方(独自視点)
AOSD診療で最も怖い合併症の一つがマクロファージ活性化症候群(MAS)で、臨床像が「感染症悪化」や「治療抵抗性の原病増悪」と紛らわしいため、治療の分岐点になりやすい病態です。EULAR/PReS提言では、MASは経過中のどの時点でも起こり得る重篤合併症であり、迅速な検出と治療が必要と強調しています。

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同提言では、持続する発熱、脾腫、フェリチンの上昇/再上昇、不釣り合いな血球減少、肝機能異常、凝固活性化、中性脂肪上昇などをMASのサインとして挙げています。

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ここで独自視点として強調したいのは、「フェリチンの絶対値」だけでなく、「フェリチンの動き方(トレンド)と他項目の組み合わせ」で危険度が変わる点です。
AOSDではフェリチンが非常に高値になり得ますが、MASでは“上がり続ける/いったん下がったのに再上昇する”という動きが臨床的に危険サインになりやすく、同時に血小板低下やフィブリノゲン低下など「炎症の割に血球が落ちる」「炎症の割に凝固因子が減る」といった“逆転現象”が出てきます。

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MASが疑われた場合の治療について、提言では高用量グルココルチコイドを必須とし、加えてIL-1阻害薬、シクロスポリン、IFNγ阻害などを初期治療の一部として検討すべきとしています。

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つまり「ステロイドが効かないAOSD」ではなく「MASに移行して治療戦略を変えるべき局面」を見抜くことが、成人発症スチル病の治療成績を左右します。
診療の現場で役立つ“MASを疑うトリガー”を、運用しやすい形に落とします。
・🚨発熱:解熱しない、または一時解熱後に再燃
・🚨フェリチン:高値が持続、または再上昇
・🚨血球:白血球が高いはずの病態で、血小板や好中球が落ちてくる
・🚨凝固:Dダイマー↑に加え、フィブリノゲンが不釣り合いに低下
・🚨肝:AST/ALT上昇が加速、LDH上昇
これらが揃うほど“抗菌薬を足す”だけでは不十分になりやすく、免疫学的暴走を止める治療へ早期に切り替える必要性が高まります。

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(参考:日本語で治療CQが体系的に並ぶ)
成人スチル病のCQ(ステロイド、パルス、メトトレキサート、シクロスポリン、IL-6阻害薬、IL-1阻害薬など)の所在確認に有用:https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00841/

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