サリパラ液と咳嗽の鎮咳・去痰効果

サリパラ液と咳嗽の鎮咳・去痰効果

サリパラ液の臨床的価値
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古来の生薬から現代医療へ

桜皮エキスは民間薬として数百年利用されてきた成分で、1987年に医療用医薬品サリパラ液として承認され、現在も多くの臨床現場で採用されています。

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鎮咳・去痰の二重作用

サリパラ液は単一の作用ではなく、気管支の動きを促進しながら同時に分泌を増やして痰を薄めるという相補的なメカニズムで作用します。

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後発品として安定供給

薬価基準収載から37年経過した現在、複数メーカーから後発品が販売されており、医療経済的にも位置づけが確立しています。

サリパラ液の有効成分と基本的な作用機序

サリパラ液は、バラ科のヤマザクラおよびPrunus属植物の樹皮を乾燥させた「オウヒ(桜皮)」からの抽出物を100mL中に3.3g含有する内用液剤です。医療用医薬品として1987年5月に製造販売承認を取得し、同年10月より丸石製薬により販売が開始されました。その名称「サリパラ」は、症状が緩解される様子を擬態語で表現した「サラリ」「パラリ」に由来しており、非サポニン性の生薬性去痰薬としての特性を反映しています。

サリパラ液は緩和な鎮咳・去痰作用を有する非麻薬性の鎮咳去痰薬で、急性気管支炎肺炎、肺結核に伴う咳嗽および喀痰喀出困難の治療に用いられます。生物学的同等性試験において、モルモットを用いた機械的刺激法(刺激毛)および化学的刺激法(二酸化硫黄ガス)の両方の試験において、標準製剤との間に鎮咳効果の差は認められず、本剤と標準製剤の生物学的同等性が確認されています。

サリパラ液の気管支作用と粘液分泌増加メカニズム

サリパラ液の薬理作用は主として末梢作用に基づいています。動物実験(家兎、マウス)において、サリパラ液は気管支の蠕動運動を促進することが実証されています。蠕動運動とは腸や気管支のような中空器官における、輪状筋と縦走筋の協調的な収縮によって内容物を流動させる生理的運動を指します。この運動促進により、気管支内に停滞した粘性の高い分泌物が効率的に移動し、容易に喀出されるようになります。

同時に、サリパラ液は気道粘膜からの分泌を増加させ、すでに存在する粘り気のある痰を希釈します。これにより、痰の粘度低下と移動性の向上が同時に達成されます。作用機序の詳細はなお不明な部分もありますが、桜皮エキス中の非サポニン性配糖体が局所的に作用し、気道上皮細胞における分泌促進と蠕動機能の賦活をもたらすと考えられています。

サリパラ液の臨床効果と呼吸器疾患別の用途

サリパラ液の効能・効果は、急性気管支炎肺炎、肺結核に伴う咳嗽および喀痰喀出困難に限定されています。この限定的な効能記載の背景には、再評価制度に関する経緯があります。1981年8月7日の再評価結果公表において、喘息、百日咳、咽頭結核に対する効能は「有効と判定する根拠がない」と判定され、これらの疾患についての効能追加は認められませんでした。一方、主要な三つの疾患に対する有効性は維持されています。

急性気管支炎は気道の急性炎症であり、ウイルスまたは細菌感染に伴って生じます。サリパラ液はこのような感染性炎症に伴う過度な分泌と気道狭窄に対して、蠕動運動の促進と分泌の調整による対症療法として機能します。肺炎症例では、炎症部位における分泌物の蓄積が呼吸機能低下や二次感染のリスク要因となりますが、サリパラ液による去痰作用は気道内のクリアランスを改善し、呼吸管理の補助療法となります。肺結核においても、結核菌の増殖に伴う気道分泌の増加と咳嗽が主要な症状であり、制菌治療と並行してサリパラ液投与による咳嗽の軽減と痰喀出の容易化が臨床的に有用です。

サリパラ液の用法・用量と臨床的投与実践

サリパラ液の標準用法は、成人に対して1回2~4mL(オウヒエキスとして66~132mg)を1日3回経口投与するものとされています。年齢および症状により適宜増減が可能であり、小児への投与に関する特別な禁止規定はありませんが、用量設定については慎重な判断が必要です。使用前には必ず容器をよく振盪してから使用する必要があります。これは、製剤中に沈殿を生じる可能性があることを示唆しており、有効成分の均一性を確保するための重要な手順です。

実際の臨床現場では、愛媛大学医学部附属病院など多くの医療機関がサリパラ液を院内採用の非麻薬性鎮咳薬リストに含めており、特に感染性呼吸器疾患における対症療法の第一選択肢として位置づけられています。成人患者における1日最大投与量は12mLであり、この範囲内で患者の症状経過に応じて段階的な調整が行われます。

サリパラ液の相互作用と安全性上の注意

サリパラ液は医療用医薬品として複数の重要な相互作用情報を有しており、特にアルコール含有医薬品との併用に関して厳密な注意が必要です。本剤がエタノール(酒精)を含有しているため、ジスルフィラム(ノックビン)、シアナミド(シアナマイド)、カルモフール(ミフロール)、プロカルバジン塩酸塩を投与中の患者への投与は絶対的禁忌です。これらの薬剤はアルコール反応を引き起こし、顔面潮紅、血圧降下、悪心、頻脈、めまい、呼吸困難、視力低下などの重篤な臨床症状を呈する可能性があります。

同様に、N-メチルテトラゾールチオメチル基を有するセフェム系抗生物質(セフメノキシム塩酸塩、セフォペラゾンナトリウム、セフミノクスナトリウム水和物、セフメタゾールナトリウム、ラタモキセフナトリウム)およびメトロニダゾールとの併用時には、軽微ながらアルコール反応(顔面潮紅、悪心、頻脈、多汗、頭痛など)を生じるおそれがあるため、併用注意として記載されています。

サリパラ液と他の鎮咳去痰薬との製剤的特性の比較

サリパラ液は非麻薬性の末梢性鎮咳去痰薬として分類され、麻薬性の中枢性鎮咳薬フスコデ配合シロップなど)とは薬理学的に異なる位置づけを有しています。麻薬性鎮咳薬が脳幹の咳嗽中枢に作用して咳反射そのものを抑制するのに対し、サリパラ液は気管支の局所における機械的機能を改善することで、結果として咳嗽の頻度と強度を減少させます。

興味深い臨床的知見として、サリパラ液は複数のシロップ剤および散剤との配合試験が実施されており、その結果が記録されています。特定の配合薬剤(例えばメジコン配合シロップ、ポンタールシロップ、フスコデ配合シロップムコソルバン内用液など)との混合により、二層分離や沈殿形成が観察される場合があります。ポンタールシロップとの配合では4日後から白色沈殿の出現が確認されており、調剤時の配合変化を回避する必要があります。

サリパラ液は100mL中にグリセリン、パラオキシ安息香酸プロピル、サッカリンナトリウム水和物エタノール、香料を含有する複合製剤であり、pH 6.0~8.0、比重d20/20:1.005~1.025の物理化学的特性を有しています。長期保存試験(500mL茶色ガラス瓶、室温、3年)において規格適合性が確認されており、室温での安定的な保管が可能です。

患者向け情報「くすりのしおり」サリパラ液詳細ページ – 医療用医薬品情報提供ホームページ
医療用医薬品データベース・KEGG MEDICUS – サリパラ情報

取得した情報に基づいて、医療従事者向けのブログ記事を作成します。